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短編「チート転生は困るが…」

作者: 四季猫

いくつかの妄想のうちの一つをやっと形にできた短編です。

「どうしてこうなった」


 そう呟いたその人は世界を思うように干渉できる力を持つ。所謂神と呼ばれる存在だ。


「別世界の人怖いな…なんでこう世界の法則をねじ曲げるんだろうな?」


 視線の先にはある人物を映している人物がいた。所謂転生チートと呼ばれる存在だ。

 現在、とある国家に潜む陰謀を力ずくで解決し、その国家の王女と良い感じになっている。


「スタイルの良い美人さんや幼くても強い猫耳獣人ちゃんや意味なく可憐で魔力が凄いエルフっ娘がいるのにまだモテるのか。これがチートなのか?」


 まぁ、美人さんは幼馴染みだからチート君と付き合うのは分かる。獣人ちゃんは虐げられる環境から救ったから惚れるのも分かる。エルフっ娘はチート君の破天荒っぷりに翻弄され気付いたら虜にされた。常識を覆され畏敬の念から心奪われるのも分かる。


「でも王女は打算的な感情も見え隠れするんだけど、それも関係ないんだろうな」


 チート君も王女の考えを気付いているが、それすらも利用しようとしている。チート君、心もチートだ。


「やっぱり、前世の記憶を引き継いで精神的にも強いんだろうな。自重しているようで、実際は遠慮ないな」


 水晶で見ている世界。その世界の神は行く末を見守っていた。陰謀を抱えた国家は混沌の時代を迎えると予想し、この中で時代を切り開く英雄が誕生するのを願っていた。


「チート君がいつまでもいる訳じゃない。世界全体の生物が星を滅ぼさないよう成長しなくては」


 実際にこの世界は1回滅んでいる。前任の神が代行者をたて、世界に干渉し過ぎたせいだ。その代行者が調子に乗って世界を蹂躙(じゅうりん)したおかげで、弱いものが強いものに搾取され死んでいき、徐々に生物の数が減り、そのつど前任の神が新たな生物を産みと繰り返し、とうとう前任の神の力が底をついた。


「力を無限に使うには生産と消費のバランスが必要なのにね。代行者がガンガン生命も奪っては前任の神はホイホイと作っていって…アホだったんだな」


 膨大な力は無限ではない。無限のようにみえるのはプラスとマイナスをちゃんとして0を、無にしているからこそ無限なのだと思う。


「はぁ…チート君がいるおかげで彼に関係する者はその恩恵を受け入れ成長することを願おうか」


 技術発展から便利道具、便利魔法。意識改革から格差社会。教育方針から産業向上、生産性アップとこれまでのチート君の行動を世界中の人々が感謝し、恐怖し、偉業を讃える。


「百年くらいは大丈夫だろう。チート君がくるまで今まで影ながら頑張った私にもたまには休もうか…いっそ別次元の世界に旅行しようかな…よし、神界でグルメツアーでも行こうか!」


 思ったのが吉日。という別次元の言葉を口にして、この世界の神は神界に別次元の神界に旅行してくると告げ、旅立ったのだった。



 およそ二百年後


「なにがあってこうなった」


 戻ってきて水晶で世界を見て出てきた言葉。

 なんか魔王という存在が世界を支配しようとし、他の生物に侵略している。

 原因を調べようとしたら、チート君…彼が神と名乗って攻撃してきた。

 自称神から逃れる為、神界に逃げた。自称神は神界までは追ってこられないようだった。

 神界にいた同胞の神に事情を聞いたら、自称神は不老不死の魔法を完成させ、魔王という存在を産み、魔族という種族を作り、そして生物の中で人間という種族の中から素質が高い者を勇者と呼び、魔族と闘わせ鍛え上げ、魔王と闘わせるという「遊び」をしていると話した。


「え?なんでこうなる前に対処しなかったのだ?」


「いやお前、世界に干渉するのが嫌いだったじゃん?だから俺らも下手に干渉しなかったんだよ。それより、旅行行ってたんだろ?別次元の神界のお土産は?」


「自称神の攻撃のせいで燃えたり、焦げたり、凍り付けや水浸し、土や石で汚れたりへこんだり、風で切られ、闇光(あんこう)で消滅、空間干渉で異空間の果てだよ」


 神と自称するだけあって、力量は凄い。そのうち世界の境界も飛び越える(すべ)を身に付けるかもしれない。そうなる前に対処しなければ。


「これだから転生チートは困る」


 そう嘆くのであった。



 それから私は神界の同胞を引き連れて自称神をボコった。


「くそっ!よってたかって卑怯だろ!」という文句を聞きながら神界の牢屋にぶち込んだ。牢屋は力を封印する効果の術式を組み込んでいるので、神である私達でも牢屋に入ると出られない。


「とりあえずこいつの処分は保留。こんだけ強いと転生しても、力が残留すると思うから、各界に相談して決める」


「死神に回されるだろうな。冥界は常に人手不足…というより仕事量が多いからな」


「だろうな。神って名乗るからにゃ死神でもいいだろ(笑)」


「だな(笑)」


 同胞と共にゲス顔で笑いあった。



 改めて見守っている世界がどうしてこうなってしまったのか調査をする。


 自称神は8人の(つがい)と子孫を増やしていたようだ。その他にも(つがい)以外にも一夜限りの関係もあったようだ。


「幼馴染み、猫耳ちゃん、エルフっ娘、王女様は旅行前に知っていたが、妖狐さん、、犬耳ちゃん、幼女たん、ドラゴン娘っと……一夜限りも見てみると……攻略範囲と守備範囲が広いな自称神」


 幼馴染み、王女、エルフの子孫らはそれぞれ建国し、その他の(つがい)は種族の長として過ごしていた。その頃に自称神は世界に飽きたのだろうか不老不死と異世界転移の研究を始める。

 その過程で魔王が生み出され、不老不死の術が完成し、俗世を捨て、人類対魔王の戦争を起こし観戦しようとしたと予測した。


「なぜ(つがい)と共に過ごそうと思わなかったのだろうか…世界を見守ることができなかったのか…異世界転移を研究していたというところ……更に他の世界を欲したのであろう。欲に溺れるということは、なんとも恐ろしいことか」


 現在の世界は、自称神の子孫である8人の勇者が打倒魔王を目指して冒険をしていた。


「私の不注意で、こんなことになって申し訳なかった…私が干渉すれば魔王など容易(たやす)く葬れるのだか、そうしたら勇者達の目標を奪ってしまう。これまでの努力は無駄ではないが、達成感を失えば努力を(おこた)ってしまうかもしれないな…それなら力を少し貸すだけにして勇者達に倒してもらうか?」


 その方法ならが一番ベストだと思い、勇者達が魔王の所にたどり着く手前で力を授けようと決めた。



 そして勇者達が魔王の脅威から世界を救った。救ったのだが…


「本当にもうなんでこうなるのだろうか…」


 8人の勇者のうち1人が死亡した。

 だが、魔王との戦いで命を落とした訳じゃない。


「君をいいように使い回したあげく、魔王倒した後に他の勇者に殺されるとは…自称神の子孫というべきか…」


「え?それってどういう事ですか?」


「いや、なんでもない。こちらの話だ。では君を、この世界以外の世界に転生させよう」


「はい、お願いします。もう利用されて殺されるのは嫌なんで」


「わかった…ふむ、私は君がこれまでの努力を見ていた。そして、こうなってしまった事は私にも責任がある。よって君にいくつかの恩恵を授けて転生させようと思う」


「えっと…あまり凄いのは遠慮したいんですが…その恩恵とかは、ほんの少しだけでいいんで」


「わかった。では、次の生命の時間を謳歌したまえ。君に幸あらんことを」


 裏切られた勇者を転生させ一息ついた。

 転生した勇者にはあえて恩恵を教えてない。本来なら転生すると記憶は消えるのだが、自称神のように前世の記憶を持っている者がたまにいるので、この世界のようにならないよう念の為である。


「チート転生は困るが、あの勇者なら大丈夫だろう」


 水晶で見ている7人の英雄を讃える世界を見てそう呟いた。

読んでくださってありがとうございます。

もしかしたら転生した勇者の話も書くと思いますし、見守っている世界の未来も書くかもしれませんが、他の妄想の小説に取り組み中。

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