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しろいカゲムシャ  作者: テアク
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(2)来客カゲムシャ

 なんて気分の悪い目覚めだろう。

 吐き気、四肢のしびれ…は、もう収まったが、依然としてだるさが抜けない。


 しっかりと前が見えるようになってから、僕は自分の荷物を確認した。

 短いサーベル、黒いズボンに、まだ固いブーツ。

 ワイシャツに、リュック――の中の雑貨類。

 それらが【殺菌済み】と札のついた透明な袋の中に入れられていた。


 全て、間違いなく自分のものだ。


 ジョス医師の話によれば、僕はこの病院に運ばれてきたとき、ぶかぶかの服を着ていたらしい。

 少女がこんな長いサーベルを扱いきれるはずもないし、それ以上に騎士の猛攻を受けきれるはずもないということで。だから聞いた…だから問いたと。

 戦った時の自分と、今の自分は同一人物かと。



 気分の悪さが覚め、立てそうだ。

 僕はベットを抜けだし、部屋にあった大きな鏡の前に立つ。


 手鏡で何度も確認した真っ白の少女がうつるばかり。

 緑色の薄い病院衣に、緑色のスリッパをはいた、不機嫌そうな顔の少女。

 以前の僕も背が低かったから背は変わらないが、腕は細く、肩幅さえもがかなり細くなり、雑に振り回せば折れてしまいそうに見える。

 改めてみると、身長もサーベルの長さくらいまで、縮んでいる…気がする。


 しゅらりとサーベルを抜く。

 戦闘中の剣士がある程度雑に扱っても折れないように、刃は肉厚に重くなっている。

 振りあげようとするが、刃が地面と平行になったあたりで、へなへなと情けなく降りてきてしまう。



 さて、なぜ自分がこんな姿になったのか、考えなくてはならない。

 王国の魔法についてはよく知らないが、性別…そしてその他もろもろを変えてしまう魔法なんてあるのだろうか。

 あの男、なんといったか、確か…デ…デック?違う、…デイビュー!

 そう、デイビューだ。このことがあの男の魔法のせいならば…

 なぜあの男がそんな魔術を持っていたのか…何か特別なのかもしれない。

 そしてこの状況はやはり


「…現実だな。」


 明るく声を出してみるが。やはり、以前の自分とは似ても似つかない少女の声だ。


 以前の僕はどこに行った?

 僕のチャームポイントの黒髪は――

 じゃなくて―――


【コンコン】

「わきゃぁ!?」


 突然のノックびっくりした。

 いつの間にか開いていたドアからジョス医師と…赤い軍服を着た男がのぞいていた。


「…お願いですから、ノックしてから開けてください。」

「失礼。一応したのですが…気が付いていらっしゃらなかったようなので。」

「何の用です?」

「あなたに助けられた方が会いたいと、お見えになられています。」


 後ろに立っていた赤い軍服姿の男が、ジョス医師の前に出て、敬礼する。


「帝国軍大佐、ジャックス。」


 威圧感たっぷりのジャックス。

 大佐。・・・大佐?

…大佐といえばかなりの幹部、彼がVIPだろうか。

 ジョス医師はさりげなく部屋を出て――


 あ、おいまてか弱い少女をこんなのと二人にするな。


「ああ、えと、私はツキモト…です。大佐殿。」


 僕はとりあえず自己紹介をし、お辞儀をする。

 黒い肌に、鍛えられた四肢、高い背。軍帽の下から鋭い目をのぞかせる。

 死線を何度もくぐり抜けてそうな、威厳満点の男だった。

 僕は彼に椅子に座るよう促し、自分はベットに腰かけた。


「まず、療養中のキミにこのように押しかけてすまない。」

「いえ、こちらこそ病院まで運んでいただき―――」

「助けてくれたのはやはり君で合っているのだな!?」

「え?――わぁ」

「君が私たちを助けてくれたんだろう、そうだろう!?」


 突然、彼の威厳は吹き飛んだ。

 目を輝かせ、僕の肩をしっかりホールドする。

 …何だこの人は。熱い、いや暑い。


「すごい…スゴイ!たとえお前が鍛え抜かれた傭兵だったとしても、剣一本で王国の魔法使いを二人も…倒してしまうとは!」

「あばばばば」


 ジャックス大佐は僕の肩を激しく揺さぶる。

 今の体には、しかも怪我をしている自分にはこたえる。

 特に肋骨。


「フォマサンはそんなに剣術が優れているのか!?どうなんだ!?」

「むぅ…」

「!…失礼。」


 大佐は僕の肩をやっと解放した。

 遠のく意識がもどっきて、僕は深呼吸する。

 

「…すまない、怪我している身だったな。」

「あ、いえ…大丈夫です。」


 僕はベットのわきに置いてあった水を一気に飲む。

 飲み終えた僕に、大佐は話しかける。


「すまん…今回来た理由は、お礼を言いに来たほかにもう一つ。」

「プハーイ、なんでしょう。」

「VIPが君を食事に招かれるということを伝えに来た。」

「え?VIPは大佐じゃ?」


 なんだ!?僕はもっとすごい人を助けていたのか?


「詳しいことはここでは話すなと・・・明日の十時、ここに迎えを送る。では失礼する。」


 きゅいっと回れ右して部屋を出ていく。

 残されたのは一人。



 真っ白のシーツの上で、僕は呆然とする。

非力になりました。

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