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籠の中  作者: Kate
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ガァァァァァン!

大きな金属音と共に僕は倒れた。大きな衝撃がボロボロな僕の体をさらに痛めつける。

だが、その拍子に僕の両手は体の前に来た。僕はもう自由だ。漆黒の闇からの脱出だ。希望が見えた!

僕は両手で思い切り前方の壁を押した。鍵はかかっていなかったらしく、少しの力で開くことが出来た。

光が差し込む。一時間程度しか経っていないと思うが、暗闇になれた僕の目には眩しすぎた。瞳孔が急激に小さくなり、目が痛い。

目が明るさに慣れるのには三十秒ほどかかった。

箱の中を見渡す。僕の紐を千切るのに貢献した釘はちりとりやほうきを掛けるためのものだったようだ。僕は掃除用具入れに閉じ込められていたのか。律儀に外にほうきを出してまで僕をこの掃除用具入れに入れたのだから熊田はさぞかし疲れただろう。

そこまでして僕を閉じ込めて何がしたかったのかは分からない。熊田に聞いてみよう。耳が聞こえないけど。

倒れた掃除用具入れから這いずり出る。一瞬躊躇してしまう。床が赤いのだ。

―血?

血だ。血液だ。教室の床一面に血液が流れてる?なんだそれは。意味がわからない。また熊田がなにかしたのか。説教してやりたい。

体ごと血液の海にダイブしてから体を起こす。傷口に他人の血が入って絶対に悪影響があるだろうと思っていたが、そんなこと言っている場合ではなかった。

死体がたくさん転がっている。学級委員長も鷹島先生も転がっている。なんだこの空間は。怖い。僕が閉じこめられているあいだに何があった?

教室の端になにか動いている。あれは誰だ。見たことがある。

血液で顔が詳しく見えないがあれは獅子尾だ。

獅子尾に会えて嬉しいだなんて初めて思った。

「獅子尾!」

と、声をかけようと思ったが僕は言葉を飲み込んだ。

そして静かに、獅子尾に気づかれないように掃除用具入れの中に戻った。ゆっくりと。そっと。

話しかけたらこの状況を理解することは出来たかもしれない。だが、僕には話しかける勇気が出なかった。

獅子尾は熊田らしき死体の頭を開き、脳を食べていた。血まみれの頭を強引に開き、脳を手でかき混ぜ、鷲掴みにし、口に運ぶ。一心不乱に。

―完全に狂っていた。

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