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2話 脳筋幼女、頭を使う

 クライン王国第三王女、アリスは悩んでいた。

 教会の扉を破壊した事などもう忘れたが、教会での御神託については忘れようがない。


「じい!じいや!じいやはいるかしら?」


 大きな音を立てて城内の使用人部屋に入り、内部を見回す。六歳のアリスは視界が低く、部屋を一望出来ないために大声で叫んだ方が手間がかからない。この辺り既に脳筋の片鱗が見えるが、前世の記憶があるとはいえ子供とはそういうものだろう。


「はいはい、アリス様。じいはこちらにおります」


 部屋の奥から60代程の白髪オールバック、細身の穏やかそうな表情の男性が現れる。デキる老執事、でイメージした場合、ほぼこの人がイメージされるんじゃないかというほどスタンダードな姿だ。


「じい、私ね、相談があるの。今日の御神託の結果についてよ」


「なるほど、ではアリス様のお部屋でお話しましょうか。お茶とお菓子をお持ちしますので、しばしお待ちくださいますよう」



 アリスは自室で待つ。仁王立ちだ。

 六歳児ゆえに手足は短く、やや頭が大きいが、将来はさぞ美人になるであろう整った顔立ち、美しい金髪を肩甲骨あたりまで伸ばしている。少々気が強そうな眉をキリリとさせ、仁王立ちだ。

 何か難しい事でも考えていそうなのだが、こういう時の彼女は大体大したことを考えていない。

 前世ではもう少し理知的だったと自負しているのだが、アリスとしての年齢や思考に引っ張られるのか、それとも他人から見たら前世も脳筋の気があったのかは定かでない。


 およそ10分ほど仁王立ちしていると、ドアがノックされ、カートにお茶とおやつを乗せてじいが入ってきた。テキパキと準備を済ませると、テーブルに着くようアリスに声をかける。

 ちょこんと腰掛け、ほんのりとフルーツの香りがする紅茶をすすると、アリスが口を開いた。


「じいは王家のことや、御神託なんかにも詳しいのよね?」


「そうですな、先王の頃より使えておりますので、城の者の中では詳しい方だと思います」


「そう。それは良かったわ。まだボケてもいないのよね?」


「そうですな、日頃のアリス様より幾分かマトモですので、かろうじてボケてもいないかと思います」


 じいは辛辣なタイプのようだ。それとも日頃のアリスは老人が笑って見過ごせないレベルでやらかしているのだろうか。酷い言われようではあるが、アリスはじいを信頼していた。第三王女とはいえ、王家の者にハッキリと意見してくれる大人というのはあまり多くない。貴族ともなれば子供同士でおべっかを使うこともある。


「お父様、お母様は、魔法が使えるわよね?」


「ええ、特に王妃様は攻撃、回復、補助に至るまで得意としていて、賢者と呼ばれる程の腕前ですな」


「そうね。お父様だってそこいらの魔術師に引けを取らない程度には魔法が使えるでしょう?それはいいの。むしろ素晴らしいわ。問題はお兄様、お姉様よ」


 王家の跡継ぎは、男子二名、女子三名で、アリスは末っ子で三女。兄姉は皆立派に育っており、文武両道、剣も魔法も教育を受ける習わしだ。


「お兄様、お姉様、全員魔法使えるわよね?」


「はい。得手不得手ございますが、もれなく全員使えますな」


「なんでよ?基本的に魔法の才能は遺伝なんでしょ?」


 老執事は考える。アリスの言うことは間違っていないのだ。多少の誤差はあれ、遺伝的に魔法の才は引き継がれる事が多い。むしろ研鑽を積んで代を重ね、魔術師は強くなっていくものだ。しばし考え込み、ハッとした顔で答えた。


「そういえば、先代からお聞きした事があったのですが、先代の祖父、アリス様からすればひいひいお爺様にあたる方が、それはそれは武に秀でた方であったとか。それこそ腕力のみにモノをいわせ、城落としの異名を持った王であったと」


 アリスは撃沈した。多分そいつだ。自分は魔法少女として人々を救いたいのであって、進撃のナニカになりたいわけじゃない。なんだ『城落とし』って。

 フリーズすること数分、再起動したアリスは考えた。この世界は不思議現象に溢れている。何か方法はあるはずだ。


「じい、作戦会議よ!なんとか私が魔法少女になるための作戦を立てるのよ!」


 じいは思った。これはまた厄介な面倒ごとに巻き込まれたな、と。

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