Side A(4)
1995年7月13日(木)22:00
結局二人ともケガは軽傷で、あの夜の出来事は公にならずに済んだ。しかし……何事もなかったことには、できなかったらしい。
あれから一週間。サヤとユウ、タキの関係はギクシャクしたまま、周りの僕達にとっても気まずい日々が続いていた。まったく、三人の色恋のイザコザに、どうして僕達まで巻き込まれてしまうのか。
「あーもうっ!」
グシャグシャと髪を掻き混ぜてベッドに寝転んだ。イライラする。きっと、あの夜に何が起こったか分からないからいけないんだ。もう一度最初から、じっくり考え直してみよう。
【考察】1995年7月6日(木)21:20
タキとサヤの会話が途切れた後、バチンという音、足音、ドアが閉まる音を聞いた。その後タキが頬をなでていたことから、サヤが強引にキスしてきたタキにビンタし、走って逃げたと想像した。しかしよく考えると、この状況でドアが閉まる音がするのは、少しおかしい。
ドアが閉まる音は、パソコンルームのドアが開閉したことを意味する。サヤが不本意ながら他の男とキスしてしまったとして、恋人のいるパソコンルームに戻るだろうか。……いや。もし僕なら、女子トイレに逃げ込むと思う。個室に入ってカギをかければ、誰にも顔を見られずに済む。
音がしたからには、パソコンルームのドアが開閉したのは間違いない。それがサヤの仕業でないとしたら、一体誰の……。
【考察】1995年7月6日(木)21:25
男子トイレで、タキが洗面台の角に頭をぶつけてたんこぶを作っている。ぶつけたのは後頭部。つまり、洗面台に背を向けて転んだ、と考えられる。だが出入口は洗面台の横だ。手を洗ってトイレを出るだけなら、洗面台に背を向けることはない。
僕が男子トイレに飛び込んだ時、中にはタキの他にユウがいた。僕がドアの音を聞いたのはヤマがパソコンルームを出た時の一回だけ。ユウはいつ、パソコンルームを出たのだろうか。
……あ。そういえば僕はもう一回、ドアの音を聞いたのだった。タキがトイレに行く前、サヤが走って逃げた後。あの時、物音に気づいてパソコンルームを出たユウが、サヤのただならぬ様子を見たのだとしたら。そして後からやって来たタキに、トイレで詰め寄ったのだとしたら。……すべての辻褄が、合うような気がする。