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夏の夜の出来事  作者: ざー
Side A
2/12

Side A(2)

1995年7月6日(木)21:20

 2階へ降りる階段の途中、階下から聞こえる声に立ち止まった。タキの猫なで声と困惑するサヤの声。階段下にある休憩用のソファーで、口説きの真っ最中のようだ。お邪魔かなぁとためらう内、ふと、二人の声が途切れる。

 バチン!

「……あ」

 走り去る足音、バタンとドアが閉まる音が続く。まったく、何をやっているんだか。気づかなかったフリをして、階段を降りる。

「まだ上に来ないの?」

 先に声をかけた。驚いたタキは、頬をなでていた手を慌てて引っ込める。

「な、何?」

「何って、ジュース買いに来ただけ」

 ソファーの横にある自販機を示す。ああ、と呟いて、タキがソファーから腰を上げた。

「俺のもコーラ買っといて」

「はあ? 何処行くの?」

「便所」

 ひらひら手を振りながら、彼の背中は廊下の奥に消えた。


1995年7月6日(木)21:25

 ゴトン。

 3本目の飲み物を買った時だった。ドアが閉まる音に気づいて振り返ると、廊下の奥を横切るヤマの猫背が見えた。

 純粋なパソコン好きの彼は、トイレに立つ時くらいしかパソコンルームから出てこない。さして気にもせず缶の取り出しにかかる。

「うわわっ!?」

 背後から悲鳴のような物が聞こえた。ドタドタとへっぴり腰で走るヤマが目の前で止まる。

「と、トイレで……タキが……血ぃ……!」

 よく分からないが緊急事態らしい。

「屋上のセイ達呼んできて!」

 抱えた缶ジュースをソファーに投げ出し、男子トイレに向かう。

 トイレの前でサヤがオロオロしている。構わず男子トイレに飛び込む。

「タキ!」

 床に座り込んだタキ。ユウが彼の後頭部にハンカチを当てている。洗面台の角に、血痕がほんの少し。

「ひっ!?」

 後ろからついてきたサヤの声。顔を上げたユウと目が合うと、何故か一目散に逃げ出した。

「サヤ!」

 ユウは僕にハンカチを預け、彼女の後を追う。ハンカチにも血はほとんどついていない。タキのケガは、大したことはなさそうだ。

「ヤマが青い顔で飛んでくるからビックリしたよ。えーっと、ちょっとたんこぶになってる」

「イテテ……アイツ洗面台の血を見て逃げてったんだ。どんだけ血に弱いんだか」

 そう言ってタキが立ち上がった頃。

「タキ、大丈夫か!?」

 血相を変えたセイとトモが、トイレに飛び込んできたのだった。

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