力の使い方⑥
シリアル風の話はこれにて終了です。
題名と内容が合致してないように思った今日この頃です
エドワードさんとシズさんの2人の息子としての最後の仕事を終えた。
「ふぅ〜静かだなぁ」
現在屋敷に1人で過ごしている。
どこでゆっくりしようかと思って自室に来たけどなんか寂しかったからエドワードさんの執務室に来て椅子に座り背もたれにもたれかかって背伸びをしている。
俺は手紙の内容を思い出して「いいんだよな?」と独り言を呟いてからエドワードさんの机、もとい現在は俺の所有物となっている机の引き出しを開けた。
中には一枚の紙と牢屋の鍵みたいに円形の金具にジャラジャラと鍵がたくさん付いてるものがあった。
紙には「これを見てるということは死んでるかな?家のもの全部君のものだから好きなように使ってね」と書かれていた。
エドワードさんの相変わらずさに自然と笑みがこぼれた。
それからしばらくぼーっとしてから手紙をインベントリに入れて俺は行動を起こした。
まず屋敷の本や何か文章が書かれているものは全てインベントリに放り込んだ。見る見ないは別として片っ端から放り込んだ。
次に食料や衣類をエドワードさんの部屋から探し出し着れる服は俺のリュックに入れサイズが合わずに着れない服とシズさんの服をインベントリに入れた。その時に俺の趣味に沿った服も見つけたためそれはあとできることにして自室においてきた。そして家具やその他屋敷にあったゴミ以外の全てをインベントリに入れた。
行動を起こしてから数時間経つ頃には屋敷の中は空っぽになっていた。
ここであることに気づいた。
「あれ?おかしいなぁ…鍵が余ったぞ…」
全部の部屋には開けたことを記すために鍵をさしている。なのにまだ数本の鍵が余ってる現状にハテナマークが頭から離れない。
もう一度見回りも兼ねて各部屋を回って見たが結局どこの鍵なのかはわからなかった。
「ん?」
微かに別の部屋から物音がしたように聞こえた。
俺はその部屋を探すためにもう一度この広い屋敷を確認し始めた。
そしてやっとその部屋を突き止めることができた。ていうか部屋ではなく部屋の外の花壇から音がしていることに部屋の中から気づいた。
外に出て花壇を確認しに行くと、それは結構わかりやすい位置にあった。
レンガで区切られた花壇の側面に鍵穴があった。俺はそこに何本か残ってる鍵を差し込むと3本目でヒットした。
鍵を回すとゴゴゴゴゴッと大きな音がする。すると、目の前にあった花壇がせり上がってきて一枚の扉が目の前に現れた。
その扉にも鍵穴があったから残りの鍵を差し込み扉を開けた。
中に入ると頭の中に声が響く。
『これは僕が今まで見つけてきたコレクションの全てだよ。使えるものから役に立たなかったものまでいろいろあるけど蓮君の好きなようにしていいからね』
どこから聞こえてきたのかはわかんなかった。
でもふいに聞こえたエドワードさんの声にまた涙がこぼれてしまった。
俺はコレクションの全てをインベントリにしまい残りの鍵を使ってコレクションの倉庫と化していた扉の中にある鍵穴に全ての鍵を差し込み倉庫内の全てのものをまたインベントリにしまった。
そして俺は最後に自分の出発の用意をして先ほどエドワードさんからのクローゼットから拝借した服を着て表に出た。
「ありがとうございました」
と1ヶ月も過ごしていない愛着の湧いていた家と俺を救ってくれた2人の恩人に挨拶をして俺はこの家を出た。
俺は今回家を出て旅をするにあたって生き抜く術として2つの行動を心がけることに決めた。
1つ、自重はしない。
できることを精一杯する事が俺は転移前にできなかった。今俺の持っている能力やステータスがどんなものなのかまだ分からないが自重して失敗するよりは自重しないで成功した方が得策と考えた。
2つ、隠す
自重はしないと決めたがおおっぴらに力を使う事は無いと思っているから隠せる力ならば隠す方がいいに決まっている。
後、エドワードさんの服を着た事でそっちの方がかっこいいと思ったから…
この2つを心がけて異世界を生き抜くぞ!
♢
「とは言ったもののどこに行こうか…うーん方角がわからん」
さっきまでの威勢は何処へやら…
家を出ていざ森に入る手前目的地をとりあえず決めるべきだと思いインベントリから地図を取り出した。だけど俺がどっちに向かってるのか分からない事態に現在苛立ってる。
「いっそguguleマップとかだったらわかりやすいのに……ん?」
転移前の世界にあったググレマップに持っている地図がならねぇかなぁと思っていると地図がパタパタと折れていき掌サイズのスマートフォンになった。それは常に電源が入っているようで先ほどまで見ていた地図が画面に映っていた。
「おぉ〜便利な世の中だなぁ。思っただけなのに」
これが異世界ってやつか…と感嘆の声をあげて画面を操作すると、このまままっすぐと進めば町に着くということがわかった。
俺はググレマップを服のポケットにしまい込むとまた歩き出した。
♢
遠くに見えるは壁に囲われた城?
『遠見』を発動してみれば壁に穴が空いていてそこから人や馬車が出入りしているのが見える。
俺が今いる場所は見渡す限り稲穂がこうべを垂れてそろそろ収穫が近そうだと思える金色のカーペットが広がるあぜ道だ。城?が建っているところと森のちょうど間らへんに位置する場所で突っ立っている。
「とりあえずあの壁の穴に向かって行くか」
当初の予定通り俺は街を目指していたのだがここに来るまでに結構時間が掛かった。
徒歩で大体5日。
最初の1日2日はググレマップを見て後何キロとかを見ていたのだが日に日に縮んで行くがまだだいぶ距離があるのに辟易して途中から方角以外の機能を消した。
だって旅が嫌なものになりそうだったから…
それでも歩き続けてやっと到着した壁は遠くから見ただけでは分からないほど高く穴だと思っていたものは扉が開いていたせいで見えなかった門だった。
俺は取り敢えず門をくぐろうと門に向かって歩き出した…
「おう、そこの黒い服のにいちゃん?じょうちゃんか?列を無視するたぁどういう了見だ?」
俺はその声に反応して声の主を見るため振り返る。一言で言えばハゲ面の盗賊みたいなおっさんが俺を指差しながら話しかけてきていた。
「列があったのですか。気がつきませんでした」
俺は一言いいおっさんが並んでいる列の最後尾に並び直した。
おっさんはそれに気を良くして腕を組んでフンフンと鼻息荒く頷いていた。
列に並び直して30分経ったくらいでやっと俺の番となった。
「民証と通行料を!」
多分衛兵のおじさんが結構うるさい声で喋りかけてきた。この衛兵さん身長が2mあるんじゃないかってくらい高くて威圧感が凄まじい。こえぇ
「民証はこれで、通行料はいくらです……えーとどうかしましたか?」
民証を衛兵に渡して通行料を払うために財布を取り出そうとリュックを漁ってるも、衛兵からの返事がないため不審に思い衛兵を見上げるとカードを手に取り目を見開いていた。
「どうしました?通行料は?」
「い、いえ、これは、失礼しました!どうぞお通りください」
「え?通行料払わなくていいんですか?ラッキー?まぁいいやありがとうございます。」
不思議に思いながら俺は門をくぐる。
ちらっと衛兵さんを見上げると顔が青ざめていた。
なんでだろうと思うが、たまたま腹痛でも起こったのだろうと思い気に留めなかった。
門をくぐると活気溢れる声が色々な方向から聞こえてきた。人はごった返していて馬車が道を走り抜けていった。
「おーー」
ゲームでしか見たことのない光景に思わず感嘆の声が出た。
取り敢えず町に向かうという目標は達成したという事で次に宿屋を見つけるために街を練り歩いて行く。