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弓使いが魔法を覚えたら  作者: 肝臓の支配者(ノンアルコールマスター)
11/42

無限スライム

語彙力ほちぃ



弓を構えて狙った獲物を射る、ただそれだけを無心に作業的に繰り返してすでに1時間が経とうとしていた。

最初の15分はそれは楽しかったよ。

敵が噴水の水のように無尽蔵に湧くし、1発急所に当てれば即死だったから無双できて俺強えができて優越感とか凄かったもんなぁ…あの時は楽しかった……


ギルドでの一悶着を払拭するためにまずウサギを三匹狩り一回ギルドに戻り清算した。その後今度は特に目的もなく森に入り目につく薬草などを採取していた。

そうして森をテクテク歩く黒装束の怪しいこと…

まぁ忘れよう…

森に入って30分、普段は行かない結構深いところまで進んだあたりで森の中に蔦が絡まった古い井戸を発見した。そこからスライムがナメクジのように井戸を登ってきていた。最初俺は気持ち悪いから駆除のつもりでスライムを射殺ろしていたが、次第にこれって経験値効率めっちゃ良いんじゃね?とゲーム脳に支配された俺の悪い心が囁いて沸き続ける限り殺すことに決めていた。後で気づいたのだが、この世界経験値って概念あるのか?まぁいいか。

だけどこんなに沸き続けるとは思いもしなかった。もういっそ井戸埋めようかなと何度思ったことか……スライムがナメクジに見えなかったらやっていたかもな。

近くに寄るだけでも嫌だから井戸を破壊することができないことが今物凄いもどかしい。

そんな事を考えながらも一矢、また一矢、撃ち続ける。


「もう終われ!な?!そろそろ帰るからな!」


誰に言ってるかは言ってる俺自身定かではない。

無限に湧くスライムに言ってるのかもしれない、

楽しかった記憶だけを持って宿に帰らなかった過去の俺に言ってるのかもしれない、もうこいつらのことを見るのが本当に嫌になっていた。

こいつらの嫌なところが既に3時間経った時には増えていた。

スライムの親玉が『出来上がっていた』のだ。

決して井戸から出てきたわけじゃない。

どうやらこの世界では、動物は殺すとそのまま残るが、スライムのような魔物と呼ばれる奴らは殺すと体が溶けて「何か」をドロップする。

今回俺は『遠見』を発動してわかったんだが、スライムが落としているドロップ品は『スライムの核』か『スライムリキッド』か『謎の肉』の3種類に分けられるようだ。

ドロップ品の名前は倒した人にだけ名前がわかるようで、俺は『遠見』を発動するだけで何が落ちたのか分かるわけだ。


スライムの固有スキルには『悪食』と『同族吸収』がある。

スライムという種族は総じて弱い。

どうやって繁殖をしているのかは解明されていないが数だけは生物界で1位の多さなのではと言われている。

スライムは食欲だけを持つ生物で基本的に腐っものから石などの無機物までなんでも食べることができる。有機物も例外ではないのだが、なにせ種族上弱いので他の有機物にも勝てないといった風に弱い。せいぜい動かない草とかには勝てるだろう。スライム同士でも勝ち負けがつかないのも解明されている。

毒虫を壺に入れ共食いをさせて呪いをかける「蠱毒」というものがあるが、それを真似して壺の中にスライムを入れてみた結果、一年たっても数が減らなかったそうだ。というか単純にスライム同士戦わせても平等に弱く勝てないため全滅した。

しかし今回蓮の殺したスライムたちのドロップ品を噴水の水のごとく湧いてくるスライム達が捕食することでスキルの『同族吸収』が発動。

そして3時間経過した時に明らかに井戸から出てきたとは思えないほどに膨れ上がったスライムが蓮の目の前にいた。


今回蓮がスライムを倒す時に井戸から出て完全に地面に降りた立ったスライムが今の所いなかった。

むしろ井戸から出た瞬間に射殺したくらい瞬殺をした結果井戸の外には数えるほどしかドロップ品が落ちることはなく、ほとんどのドロップは井戸の中に落ちていくことになった。

その結果が現場の5mはあろう巨大なスライムである。なおそんな理由でこの状況が生まれたことを知らない蓮はと言うと…


「きんも!!無理無理!!こっちくんなああああ」


なんだよこいつキモすぎだろ!

とりあえず距離を取ろう。


冷静だった。

今の心境はどうですか?と聞かれればこう答えるだろう。


「離れたら分かる、ただでかくなっただけだ。」


今俺はデカスライムから30mくらい離れた位置にて弓をしならせて構えている。

よく考えれば簡単な話だ、たかがスライムなのだから負けるはずがなかった。

スライムに遠距離攻撃があるはずがない事は魔物図鑑をギルドの図書室で見たから知っている。

あいつらは触ると悪食のせいで色々溶かされるからキモいだけで戦闘能力はこぞって皆無なのだから。


俺は薄ら緑色の身体に向けて矢を射る。

きちんと核をめがけて飛んでいった矢は正確にデカスライムの核をぶち抜いた。

そして溶けるように消えていったデカスライムの後には30cmほどの球体(かく)と『特上スライムリキッド』なるものが落ちていた。俺はそれを拾い上げて疲れた足取りでギルドへと帰った。



「あらっ、蓮さん!珍しいですね2回もくるなんて。」


俺はギルドに戻ると受付&買取カウンターに向かった。そこはいつも俺が兎を買い取ってもらう顔馴染みの受付嬢であるレイルさんのいるカウンターだった。


「聞いてくれよー、森に入って30分くらいのところに古井戸があってさぁ、そこに無限に湧くスライムがいてそいつを殺してたんだけど最後に5mのデカスライムが出てきて参ったよ」

「へぇ〜あの井戸にそんなにスライムがいましたかぁ。一応それ討伐の依頼書が出ていたので何か確認できるものがあれば討伐完了にしておきますよ」

「そうなのか!じゃあカード渡すな。あと、これデカスライムからのやつと他のスライムからのやつ」


そう言って俺はポケットにインベントリを設定した事で割と怪しまれなくなったインベントリに手を突っ込み先ほどでに入れたデカスライムの核と特上スライムリキッドなどを受け取りカウンターに置いた。


「これはまた……多いですね。」

「そうなんだ、3時間矢を射続けたからなぁ」

「3時間ですか。大変でしたね」


うんうんとレイルさんの話に相槌を打つ。


「じゃあはい!これが依頼達成の報奨金とスライムの核などの売却益です。」

「ありがとう。じゃあ今日はもう帰って寝るね」


そう言ってレイルさんと別れ、俺はギルドの飯どころに足を運んでクロード飯を食い宿に帰った。

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