一狩り行こうぜ
「おい、ともたけ、一狩り行こうぜー」
「行かない」
そんな野球に誘う感じで気軽に来られたって行くわけない。
「どうせ暇なんだし、たまにはいいだろー。人手が足りないんだよ。後生だから頼む。」
全く人が気にしていることをあっさりと言うんだから、和田君は。
まぁ、でも逆に嫌な気はしないんだけどさ。気にされるのも嫌だし。
そこらへんを考えてこういう対応ならいいやつなんだろうけど、和田君の場合、ただ何も考えていないだけなんだろうな。
「戦わなくていいからさ、ちょっぴり散歩気分でいいからさ。」
そうやってついて行ったら散歩だけじゃ許されなくて戦うはめになるんだろ?
少しでも気を許したら駄目なんだ。すぐにつけこまれるんだから。
「どーか、この通り。行ってくれるのであるならば土下座でもなんでもしますから」
本当に土下座をしようとする和田君。
「わかったよ。わかったから土下座なんてしないでくれよ。でも危なくなったらすぐ逃げるからな」
「サンキュー!!」
人から真剣に頼まれると弱いんだよな、僕は。
意志が弱い人間って損だ。
「と、いうわけで今回一緒に狩りに行くことになった武井ともたけ君だ」
「よろしくお願いします。」
「俺はピピンってんだ。よろしくな」
「ペーダです。よろしくです」
「ぺっぺだ。しかしこいつけんじの連れてきたやつにしてはまともそうだな」
それぞれが自己紹介をする。
3人ともがっちりと鎧を着こんでいる。それはがっちりと着こんでおり、顔はおろか本当の体格もわからないくらいだ。また3人とも大きな盾を背負っている。ちなみに三人とも黒い鎧で声以外判断材料がない。
「俺がまともじゃないみたいに言うなよな」
「頭のねじぶっ飛んでるじゃねーかよ。狩りに行きたい狩りに行きたいっていつも狂ったように言いやがって」
「しょうがないだろ狩りは漢のロマンなんだからよ」
なんだかずいぶん楽しそうだな。
でも、なんかだんだん殴りあいになりそうになってるけど、大丈夫なのか??
「ぺっぺとけんじはいつもあんな感じだから気にすんな。じゃれあってるだけさ」
なんか和田君たくましくなったなぁ。昔は教室の隅で一緒におとなしくだべってたのに。
ついには軽い殴りあいが始まった。
「おい、いい加減にしろ。そろそろ今回の狩りについて打ち合わせするぞ」
そう言って、ピピンさんが二人の頭をげんこつでなぐる。
「「いて!!」」
「まいどまいどこいつらほんとに馬鹿ですよ」
「お前もまた火に油をそそぐようなことを言うんじゃない」
ペーダさんも二人と同じように殴られた。
あれなのかな。ここまでがお約束的な感じなのかな。
「えー、じゃあ気をとりなおして、今回の狩りの内容は、オーク討伐となっております。」
和田君が今回の主旨の説明に入る。
「となり街のペニール村の周辺でオークの目撃情報が寄せられまして被害が出る前に討伐しようということで、確実に狩るために5人以上のチームしか受けれないようなっています。そんなわけでともたけに声をかけたってわけさ」
「オークってあのイノシシ男というかブタ男のこと??」
僕の質問にピピンさんが応える。
「ああ、そうだ。まあ、レベルが20を超えてれば1人で討伐も余裕な魔物だな。レベルが15を超えてる人間が3人いればまず負けることはない。ちなみに俺たちは全員レベル15を超えているから、俺たちだけで余裕ってなわけだ。申し訳ないけど数合わせみたいなもんだな」
「そういうこと」
なるほど。
だから僕は散歩気分でもいいわけだ。
ん?全員レベル15を超えている?
「え?和田君もレベル15を超えてるの??」
「ああ、超えてるぞ。この前の狩りであの恐竜みたいなのをたくさん討伐して15になったよ」
通りで最近の戦闘訓練で一撃の威力が増してきていたわけだ。
いつのまにかレベル差が5もできていたんだな。まぁ、それでも僕の方が勝ち越してるんだけどさ。暇な時間は剣を降り続けているから対人能力だけは確実にあがっている。魔物に利くかはわかりません。
「そんなわけで、この狩りは安心安全てなわけだぜ!たまには息抜きしようぜ!!」
「そうだね。でもあんまりそんなこと言うと不安になるからやめてほしいかな」
「不安??オークに私たちが負けるわけないです。」
「ああ、この“黒き鉄壁のペリルギ”の防御を突破できるものはいないぜ」
「けんじとは対照的なびびり野郎だな、まったく」
むー、だからそんなにフラグになりそうなこと言わないでって。
言ってもわからないだろうから、言わないけどさ。和田君にはあとで文句言ってやろう。
ていうか、“黒き鉄壁のペリルギ”ってチーム名か何かなんだろうけど、センスもあれだけどペリルギってどういう意味なんだろう。
「あ、ちなみにペリルギっていうのはこの世界で勇敢な者って意味らしいぞ」
すでに和田君が質問済みだったんだね。
鉄壁で勇敢って、なんか壁が迫ってくるみたいで怖いな。装備もそんな感じだし。
「よーし、では、オーク討伐に出発だ!」
「「「「おう!!」」」」
無職で時間ばかりはある僕は暇つぶしに狩りに行くことになった。