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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
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決着

 「ともたけ!」


 和田君が僕の存在に気付き、こちらにやってきた。

 

 「無事だったんだな!三上さんからドラゴンにやられたってきいた時は心配していたんだが」

 「ペロンギさんがピッピのしずくをもってきてくれてなんとか治ったんだよ」


 「「「武井君!!!!」」」


 遅れてみんなも僕の周りにやってきた。

 神宮寺君達は表情を暗くしてこちらにはやってこなかった。


 「みんな。遅れてごめん。しかしこれは一体何があったらこうなるの。騎士の人に大体話を聞いたんだけどいまいちピンときてないよ」


 僕の言葉にみんな顔を伏せる。


 「ちょっと複雑すぎて俺じゃあ説明できないよ。とにかく端的に今の状況を説明するとしたら、あの神宮寺達の近くに浮かぶ黒い球の中にともこちゃんがいて、俺達にはどうすることもできないんだ」

 

 みんなもそれ以上なにも言ってこない。

 

 「なるほど・・・」


 僕はそう言って黒い球の方へと歩いて言った。


 「もう、みんなで色々試したけど全く反応なかったんだ」

 「それでも自分の目で見て触って確かめたいんだ」

 「それなら止めはしないけど・・・・」


 神宮寺君達の横を通り過ぎてともこちゃんがいる黒い球に近づこうとした時、神宮寺君が声をかけてきた。


 「あの、ごめん。俺もできることをしようとしただけなんだ。俺だってこんな小さな子をすきこのんで殺そうとしたわけじゃないんだ。そうしないと元の世界に帰れなかったんだ。だから・・・・」

 

 何も話しかけていないのに神宮寺君がおどおどしながら謝ってくる。正直全然状況を把握できていないけど、騎士の話じゃともこちゃんと戦ってたんだったか。いくらこっちの世界に長くいたからといって、それで小さな子と本気で戦うなんてできるわけがない。きっと彼なりの信念があったのだろう。


 「そうだ。こいつは悪くないんだ。全知の賢王に魔王を倒したエネルギーを使ってしか元の世界には戻れないと言われてしかたなく」


 葛城君も必死に弁明している。

 きっと僕がいない間に和田君達と神宮寺君達の間で色々あったんだろうな。


 「わかってる。僕はあまりにもこの世界に絡んでこなかったから、いろんなことを知らないんだ。ペロンギさんとともこちゃんを助けるために知ったことしかしらない。だから最初からずっと渦中の中にいたみんなの方が色々知ってるんだと思う。だから謝らなくていいよ。今ともこちゃんは無事で、まぁ無事と言えるかはまだわかないんだけど、目の前にいるんだから。だからここからは僕ができることをする。そこまでの過程については僕は何も言えないよ」


 「そ、そうか・・・・」


 神宮寺君がしゅんと肩を下ろす。その表情はどこか釈然としていないように感じる。しょうがない。言った僕だっていまいち意味がわかっていないのだから。言われたほうは余計に意味がわからないだろう。

 でも、神宮寺君達がしたことについて攻める気はないのは本当なのだからしかたがない。


 

 そしてついに僕は黒い球の前にやってきた。

 1m位の球。あれだな。ガンツのあれみたいだ。


 「ふぅ・・・・さて」


 僕はそっと黒い球に手をふれた。

 あいつとの決着がついて以来、体の調子だけじゃなく感覚も鋭敏になってきている。特に魔力を感じる力が前以上に上がっている。


 だから触って確信した。

 

 僕の声をともこちゃんに届かせることができると。


 「ともこちゃん、聞こえる?」

 

 僕はともこちゃんに向けてしゃべりかけた。


 「・・・・・パパ?」

 「そうだよ。パパだよ。さぁ、早く元気な顔を見せてほしいな」

 「・・・・なんで?この中にいれば誰も干渉することはできないはずなのに」

 「魔力を前より感じることができるようになったおかげかな。パパにも色々あってね」

 「そうなんだ。・・・・でも私はこの中からでれない。私はみんなにすごい酷いことをした。だからもうここから出ない方がいいんだ。でてもみんなを傷つけてしまうだけなんだ」

 「そんなことない。ともこちゃんはあいつに操られていただけなんだ。あいつはもうパパが倒したからそこからでてもきっと悪いことはしないはずだよ」

 「ううん。確かにあいつに操られていたのもあると思う。でも、全部思いだしたんだよ。私が前にしてきたことを。毎回生まれかわる度に人類に対して酷いことをいっぱいしてきた。その時も操られていたのかもしれない。でも楽しんでやっていた時もあるんだ。だから、私はもうここからでない方がいいんだよ」

 「なんでも知ってる人が言っていたんだけど、ともこちゃんの力は善にも悪にもなるんだ。だからともこちゃんがその力をよく使おうとすればきっと良いことがたくさんできる。今までは色々あったのかもしれないけど、だったら今回は今までの分も良いことをすればいいんだよ」

 「・・・・そんな。いいのかな。今までに酷いことしてきたのに。受け入れてもらえるのかな」

 「全員に受け入れてもらうのは難しいかもしれない。でも、僕達がいる。少しずつみんなにわかっていってもらえばいいよ」

 「・・・・」

 「だから出てきてよ。僕がともこちゃんを守るから。一緒に生きていこう!」


 その瞬間玉が光輝いた。


 「これは!?」


 後ろで驚いている声が聞こえる。

 

 そして黒い球は割れ中から盛大に光をまきちらしながら町一面に降り注いだ。

 まばゆい光に一瞬目がくらむ。


 「パパ・・・・」

 

 「ともこちゃん?」


 光で目がくらんでよく見えないが、球があった場所から聞きなれた声が聞こえてくる。


 「パパー」


 その声は元気よくこちらに向かって近づいてきて一気に僕へと飛び込んできた。

 


 むにゅ~


 

 何かとてつもなく柔らかいものが僕に当たる。長年求めていたもののような気もするんだけど、しかし僕の知っているともこちゃんからは絶対に感じることはないだろう柔らかさで、もしやともこちゃんじゃないのかなと僕の心に疑問が浮かんでくる。

 

 次第に視力が回復してきた。


 僕は意を決して胸に飛び込んできた柔らかい感触を見てみる。


 そこにはともこちゃんによく似た超グラマラスな女性がすっぽんぽんで抱きついていた。

 僕はあまりの衝撃に、守るとかなんだとか言ったにも関わらず鼻血を出して倒れてしまった。


 「パパ・・・・パパ・・・・パパ・・・・」


 グラマラスな女性がパパと連呼しながら心配そうにのぞきこむ様子をみながら僕は意識を手放した。

 

 

 

 

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