表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
52/55

祈るだけでは終われない!

 ガバッと僕は目を開けた。


 「ここは・・・・」


 見覚えがある。タッタさんの村で泊った家に似ている。

 助かったのか。


 こうしてる場合じゃない。早くともこちゃんのところへ行かないと。


 僕はベッドから起き上がろうとした。

 

 「ぐぁ!痛い!!!!」

 

 しかし全身の激痛で起き上がることができなかった。

 首を下げるのも痛くて、全身がどんな状況になってるのかも確認できない。


 僕が痛みで大声をあげたことで誰かがこちらに向かってきている。

 いきおいよく扉があけ放たれる。


 「大丈夫ですか!目が覚めたのですか!!」


 ナースのような獣人の子が僕に近寄って体をあれこれと調べている。


 「はい・・・・。なんとか目は覚めたんですけど。体が痛くて全く動けません」

 「それりゃあそうですよ。龍のブレスを受けたんですから。生きていたのが奇跡です」


 そういって、再度検査をする。


 「三上さんやタッタさんは?」

 「二人はやらなきゃいけないことがあるとあなたを置いてペニーニャ城に向かいました」

 「そうですか」


 二人が向かったのなら大丈夫か。僕のせいで足止めしてるんじゃないかと心配しちゃったよ。

 

 「3日も目を覚まさなかったのでもう駄目なんじゃないかと心配しておりました。やっぱり異世界人の方は丈夫なんですね」


 ナースさんが何気なくそう言ったのだけど、3日!?


 「え!?僕は3日も目を覚まさなかったんですか!?」

 「ええ」

 「なんてことだ!」

 

 3日ということはともこちゃんが覚醒する日じゃないか。ここからペニーニャ城までは飛ばせば1日で到着する。行って帰ってきて2日。上手く行ったのならもう帰ってきてもおかしくない。何かあったのか?


 僕はなんとか体を起こそうとする。


 「何してるんですか!まだ動いちゃだめですよ」


 ナースが僕を止めようとする。

 

 「でも、急がないと間に合わなくなる」

 「今は二人を信じて安静にしてください。そんな体じゃペニーニャ城までももちませんよ」

 「く・・・」


 歯がゆい。

 目を覚ましても何もできないなんて。


 みんなは大丈夫なのか?ともこちゃんは救えたのか?


 僕はなすすべもなくここで横になっているしかないのだろうか。


 みんなどうか無事でいてくれ!

 僕は天に祈った。祈るしかできなかった。


 


























 いや、最後の最後に祈るだけなんて駄目だ。


 「ぐああああああ!!!!」

 「どうしたんですか。まだ安静にしてないと駄目です。動けるわけないですよ。あなたも自分の体を見ればわかってくれるはずです」

 「たとえ僕の体がぼろぼろであったとしても、今ここでただ祈って待ってるだけなんてどうしてもできないんです。何もできなくても何かできることがあるかもしれないのなら向かわないと」


 僕は激痛をこらえ、しかし体を起こす。

 うわ・・・・。全身包帯まみれだよ。ミイラ男みたいだ。


 「そんな、こんな状態では立ち上がることもできませんよ」

 「無理だと思ってたけど起き上がれました。ならきっと立ち上がることもできるはずです」


 僕は足を動かそうと力を入れる。

 すると足を動かそうとしただけで全身に痛みが走る。


 「ぐぁ!!」


 せっかく起き上がった体を倒してしまう。

 そしてその倒れた衝撃でまたも全身が痛む。


 く・・・・。確かにこれじゃあ起き上がって立ち上がれても歩けるわけがない。


 「無茶をしないでください。私はあなたを死なせるわけにはいきません」


 ナースの人が酷くあわてている。

 でも、それでも止まれないんだ。


 「ぐあああああ!」


 なんとか起き上がろうとする。立ち上がろうとする。痛みで倒れる。

 そんなことを繰り返していると、次第に獣人達が集まりだしてきていた。


 「もうやめてくださいですじゃ。この国の英雄が苦しんでる姿はもうみたくないですじゃ」


 いつの間にか来ていたマッチ村長が瞳に涙を蓄えてそう言う。


 「でも、急がないと・・・・」


 僕が再度起き上がろうとした時、またも扉が開く。


 「まったく。そんな体じゃどんなに急いでも間に合わないだろうに」

 「ペロンギさん!?」

 「遅くなったな。これでも全力で走ってきたんだぜ」


 そこにはボロボロになったペロンギさんがいた。

 

 「どうしてここに??」

 

 「お前達がピッピの木に向かった後、じいちゃんがまずそうな顔をしてな。これを持ってすぐ獣人の国に行けと」


 そういってペロンギさんが懐から小瓶を取り出した。

 

 「それはまさか・・・・」

 「ピッピのしずくだ」

  

 「僕が飲んでいいのでしょうか」


 「ああ」

 

 僕は小瓶をペロンギさんから受け取って、一気に飲み干した。


 「ぐああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 先ほどの痛みがただのお遊びに感じるくらいの激痛が襲う。

 まったく、なんで、治すのにこんなに痛いんだよ、ちくしょうが!!!!!


 痛みで頭がおかしくなりそうだ。

 

 しかし、ふっと痛みが消える。


 集まったみんなが心配そうに僕を見ている。

 僕はみんなに向かって親指を立てた。


 「もう大丈夫です。心配かけて申し訳ありませんでした」


 そう言って、今度こそガバッと立ちあがった。


 「よし、行くか」

 「はい。みなさんありがとうございました。僕達もすぐにペニーニャ城へ向かいます」


 僕はすぐに準備を始め、ペロンギさんと一緒にペニーニャ城へ向かって駆け出した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ