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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
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因縁の対決:前編

 「いけいけ~」


 三上さんが腕を振り回しながら叫ぶ。


 「はは、なんかあの子変わったな」

 「僕も三上さんにあんな一面があったなんて知りませんでした」


 僕達は現在龍に乗ってピッピの木を目指して空を飛んでいた。ガガル王国で一泊し、ピッピの木まではもう少しである。


 そんな状況で三上さんはのりのりで風を感じていた。

 三上さんってスピード狂だったんだな。人はみかけによらないというか。なんというか。


 まぁ、でも、心配な気持ちで押しつぶされそうになりながらも笑顔でいる三上さんより、一瞬でも心の底から笑顔な方がいいよな。たとえ僕達がどんな気持ちでいようと龍のスピードは変わらないのだから。


 「どうしたの?そんな顔して」


 「いや、なんでもないよ」


 「そう。よーし、いけいけ~」


 僕は高さでぶるぶるなのに、三上さんは怖くないのかね?

 異世界に来て高所恐怖症だと知ったよ。いや、これが特別なだけかもしれないけどさ。


 こうして僕達はピッピの木へと順調に近づいていた。


 

 すると突然、ものすごいエネルギーが僕達に襲いかかった。


 「な、なんだ!!?」

 「これは、地龍のブレスか!?」


 ニブルヘイムはそのエネルギーを旋回してよけようとするが、わずかに翼にかすってしまった。


 「グギャアアアア!!!」


 龍が絶叫を上げ、地面へと一気に急降下する。


 「墜落する!!」


 地面に激突する寸前、龍がなんとか体勢を立て直す。しかし、完全に止まることはできずにその着地の衝撃で僕達は放りだされた。放り出されながら、エネルギーが放たれた方へと視線を向ける。そこには、氷龍以上の体格の龍がいた。それこそまるで岩のような外見をしており、氷龍以上の力強さを感じる。そして、その上には、見覚えのある男が立っていた。


 僕はなんとか体勢を整え、地面に着地した。


 「お前は!!」


 僕はすぐにその龍の上に立つ男へ向かって叫んだ。

 すると男は「フフフ」と言って、ニヤリと笑った。


 「また、あなたですか。しょうこりもなく。しかし、これほどまでに縁のある人間も初めてですよ。ちょっぴり愛着が湧いてきましたね」

 

 外見はこの前とは違う。しかし、発している邪悪な気が、あいつであることを確信させる。


 「ともこちゃんはどこだ!!!」


 僕は剣を抜き、男へと向ける。


 「あの方はもはやここにはいませんよ。最後の仕上げとして、ペニーニャ城に向かっています。あの方の意識は完全に洗脳しました。しかし、今邪魔をされるとどのような悪影響を与えるかわかりませんからね。万が一にも意識を取り戻されては大変です。そういうわけで、あの憎き男のところから何かが向かってくるのを感じた時にここを離れさせました。まさかあなただったとは思いませんでしたけどね。やはりここを離れさせて正解だったようです」


 そう言って男はまたも笑う。


 「いててて・・・。くそ、まさかこんなことになるとはな」


 タッタさんが体を押さえながら歩いてくる。

 衝撃で一番遠くまで飛ばされていたが、どうやら無事だったようだ。


 「ばれてたんですね。急がないと間に合わなくなる」


 三上さんも槍を構えなが立ちあがる。

 

 「こいつを倒して、すぐに追いかけよう」


 僕は二人にそう言うと、男はさらに大きく声を出して笑う。


 「ははは。私を倒すですって。この前は確かにひやりとさせられましたが、最早ピッピの木がない以上、私を完全に倒すことなどできませんよ」


 「それはどうかな?」


 タッタさんがにやりと笑いながら懐から剣を取り出す。


 「それは!?」


 「ふふ、見覚えでもあるのかな?これは俺達獣人族に伝わる聖武器。この剣にはこの前の光と同じ力が込められている。すなわち、この剣ならばお前を倒すことができるんだ」


 そう言って、タッタさんが僕に剣を渡す。


 「タッタさん、僕で良いんですか?」


 「剣ならお前の方がいいだろ。それに俺以上にお前はあいつと因縁があるだろう。お前以外にはいないんだよ」


 タッタさんが力強く、うなずく。三上さんもにっこりと笑ってサムズアップをする。


 「わかりました」


 僕はタッタさんから剣を受け取り、男へと向ける。


 「ははは。武器は私を倒せるとしても、はたしてお前で私に勝てるかな?」


 男が挑発をする。

 

 「ああ、倒して見せるとも。今度は視界も見える。全力全開だ!」


 僕があいつを倒すと強く思うと、剣が光輝いた。

 剣から力強いエネルギーを感じる。剣につられて自分も力が湧きあがってくるように感じる。


 これならやれる!


 僕は男へ向かって駆け出した。

 しかし、それを阻止しようと地龍が息を吸い込む。


 また、ブレスか!

 

 僕がとっさに逃げようとすると、


 「ギャオオオオ」


 するどい雄たけびを上げて、氷龍が地龍に突撃をする。

 そのもの凄い衝撃で僕は動きが止まる。


 「こないならこっちから行ってやりましょう」


 ふっと、地面のしたから男が湧きあがる。

 まるで影の中から出現したかのように。


 男が手に持った剣を振るう。


 ――――動けない!

 

 開始そうそうやられそうになる僕だったが、しかし、体が勝手に動き男の攻撃を撃退する。


 「な!?」


 僕自身も驚きの声を上げる。

 剣が僕の体を動かしたのであろうか。それとも僕の防衛本能か。


 とにかく、なんとか窮地を脱することができた。


 僕はそのまま男に向かって剣を振る。 

 それを男が剣で受ける。


 続けて僕は剣を振る。

 体が軽いうえに思ったように動く!!


 これが聖剣の力か。


 前回はおされぎみであったが、今回は完全に押している。


 「すごい・・・・」


 三上さんが感嘆の声をあげているのが聞こえる。普段だったら戦いの時は周りが見えなくなるんだけど、今回は周りも全て感じ取れている。

 剣を振りながら、周りを完全に把握する。


 地龍と氷龍のぶつかりあいも感じるし、タッタさんが隙を窺っているのもわかる。


 絶好調だ!!!


 「く・・・くそが~!!」


 男が体から強烈なエネルギーを発する。

 僕はとっさに男から距離をとる。


 「どうした?それで全力か?これならあっさり勝てちゃいそうだぞ」


 「くそが、くそが。馬鹿にするんじゃない!この下等生物めが~」


 そういうと、男から一気に邪気があふれだす。

 こうなることはわかっていた。こいつはいつも最初は舐めプをするのだ。全力を出させてからが本番だ。


 もともと体はなかったのだろう。あふれだした邪気が男を覆い隠してなおもあふれだし、それは悪魔のような形になる。横でぶつかりあっていた龍達も、その男の異様な存在感に戦いを止めている。

 

 「どうなるんだ?」

 「武井君・・・・」


 タッタさんと三上さんも心配そうにしている。

 しかし、僕自身には全く不安がなかった。根拠のない自信が胸の中を埋め尽くしていた。


 きっとやれる。剣もそう言っている気がした。


 僕は二人にそっと笑いかける。


 「フフフ、こうなったからにはお前達はお終いだ。100%の力でお前達を滅ぼしてやろう」


 変身?を終えたのだろう。男が自信満々にそう言い放つ。

 僕にはそれが前フリにしか聞こえない。


 「ふふ・・・」


 「何がおかしいんだ!この虫けらめが~」


 男が叫ぶ。その叫び声は辺り一面に響き渡り、森中の生き物がこの男から遠ざかっていくのを感じる。

 タッタさんや三上さんも恐怖で鳥肌がたち、龍達でさえ警戒の色を向けている。


 それでも、僕にはこれっぽちも響かない。


 「よし、じゃあ今度こそけりをつけよう。三度目の正直だ!」


 こうして僕達の最後の戦いが幕を上げた。

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