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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
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走れ!僕!

 「わかった。お前達が諦められるように魔王が覚醒する日を正確に教えよう。あと5日だ。さっきも言ったが、こから全力で走り続けたとしてもピッピの木までは10日はかかる。最早あきらめるのだな」


 バギンスさんが腕を広げながら言う。

 く・・・、バギンスさん達が悪役のように思えてきたぞ。憎たらしい。


 だけど、バギンスさんの言ってることが本当だとしたら気になることがある。


 「だったらなんで僕達を足止めしようとするんですか?どうせ間に合わないんだったら勝手に行かせればいいでしょう?」


 「・・・・」


 バギンスさんが固まる。案外打たれ弱いようだ。 

 僕は他人の心を読んだりできるわけじゃないけど、絶対しまった~って考えてる。


 「だからきっと何かしら方法があるはずなんだ!」

 「フフフ、そこに気付くとは。しかし念には念をという言葉がありましてね。私は石橋は叩いて渡るタイプなんですよ、ハハハ」


 “全知の賢王”取り繕うの下手~。

 なんでも知ってるけど万能なわけではないのね。なんでも知ってるっていうのもどこまで本当かわからないけどさ。


 「そうですね!その通りですね!だから私たちを足止めしてたんですね!希望が見えてきましたね!」


 三上さんが目を輝かしてこちらを見る。

 天真爛漫か。眩しいです。


 「なるほど、確かにそうだな。では、私が足止めをしよう。二人は早くともこの場所に向かうんだ!」


 そう言ってペロンギさんが剣を取り出し、ビルボさんと向き合う。


 「いいのか?いくら娘とはいえ、こいつらの味方をするなら容赦なく斬るぞ」

 

 「はっ。さっき勝ったからって次も勝てると思うなよ」


 ペロンギさんとビルボさんはお互い火花を散らしながらにらみ合う。

 僕としてはペロンギさんに危険な目にはあってもらいたくないんだけど、ここで行かないとともこちゃんが救えなくなる。


 しかし・・・・


 「ペロンギさん!!」


 三上さんが叫ぶ。


 「二人ともいいから行け!!どっちにしろビルボとはちゃんと決着をつけないといけないんだ。私を一人前だと認めさせる。だから行くんだ!!」


 「わ、わかりました!絶対無事でいてくださいね!!」

 

 「お前達もな!!」



 僕達は一気に駆け出した。

 具体的に間に合う方法はわかっていない。しかし、全力で走る!!

 あと少しで花畑を抜け、雪山へと入ろうとした時、人影が僕達の前へと割り込む。


 「待て!!」


 僕達の前にバギンスさんが立ちはだかった。

 老人とは思えない俊敏性であった。

 

 「そこをどいてください」


 「ここを出ていくというのなら、わしもお前達の前に立ちはだからないといけない」


 バギンスさんが腰から短刀を抜く。

 一見すると老人だが、しかし発するオーラは達人のそれだ。油断できない相手だろう。


 「わかりました。では!」


 僕は剣を抜きながらバギンスさんへと向かう。

 そしてそのままバギンスさんに斬りかかった。


 もちろん殺す気なんてない。

 ちょっと怪我をしてもらうだけだ。


 しかし僕の一撃は空をきった。


 僕の一撃を少ない動きで避けたバギンスさんは、僕のふとろこにすっと入り込み短刀を突き付けてくる。

 

 僕はそれをかろうじて避ける。

 そのまま一度距離をとった。


 「やっぱり強いじゃないですか」


 「ああ、弱いとは一言もいてってない。だろう?」


 僕達はニヤリと笑う。

 その瞬間、バギンスさんの横から槍の一閃が走る。


 「えい!!」


 完全に不意を突いた攻撃である。

 しかしそれをバギンスさんは見ることもなく避ける。

 

 まるであらかじめわかっていたかように。


 「無駄だ。わしは魔力を感じることができる。いかに気配を殺そうとも、体から発する魔力を完全に消すことはできない。・・・・だから無駄だ!!」


 バギンスさんは、三上さんの不意打ちに便乗した僕のけりを片手で受け止める。


 「ああ、だがわかってても受けれない攻撃もあるだろ?」


 そう言って、僕はもう一回転体を回しこみ、残ったもう一方の足で思いっきりバギンスさんを蹴り飛ばした。


 「ガッ・・・・」


 バギンスさんがつかんでいた僕の足を離し、一瞬ひるむ。

 その隙に三上さんが豪快なタックルを決めた。

  

 バギンスさんが吹き飛ばされる。


 「すみません。でも私たちは行かないと行けないんです」


 僕達はこのスキに花畑を抜け雪山へと飛び出した。




 僕達は転がり落ちるように雪山を駆け降りた。

 

 「三上さん、大丈夫?」

 「私は平気だよ。ともこちゃんのためにも急ごう」


 極寒の中を雪に足を取られながら走るのは正直僕でも辛い。

 しかし三上さんはそんな状況でも行き以上のペースを維持し続けている。


 「そうだね!」


 僕達はなおも走る。

 地球だったら死んでしまうような崖も一気に飛び降り、岩に体をぶつけながらも走りつづける。


 襲いかかってくる魔物も蹴散らしながら進む。


 圧倒的なペースで山登り初日に泊った洞穴まで2時間ほどで到着しそうになった時、そいつはあらわれた。


 銀の鱗で吹雪を受け、山ように悠然と立つ。

 圧倒的な存在感を持って、空から僕達の前へと降り立った。



 「そ・・・そんなここで・・・・ペロンギさんでさへ人生で2回しか遭遇したことないって言ってたのに・・・」

 「そんな・・・」


 僕達は驚愕した。

 氷龍ニブルヘイムが僕達の前へとやってきたのだ。 

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