表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
46/55

質問と答え

 「もう、離さないぞ~」


 “全知の賢王”であり孫好きのおじいちゃんでもあるバギンスさんは、ペロンギさんにまとわりついて一向に離れなかった。なにも知らない人が見たらただのセクハラじいさんにも見える。


 「わ、わかったから。いい加減離れてくれよ」


 ペロンギさんがそんなバギンスさんをはがそうとするが、それをことごとく避けてまとわり続ける。


 バギンスさんもめちゃくちゃ強いのかな?


 「いや、わしはそんなに強くはないぞ。まぁ弱くもないがな。わしよりビルボの方が強いし、ペロンギよりも全然弱いよ」


 「な!?僕しゃべってましたか?」


 「いや、何もしゃべってなかったぞ。ただそんな風なことを考えてたのかなと思っただけだ。少し前に失礼なことを考えてたことは許してやろう」


 セクハラじいさんのことまでわかってたのか。恐ろしい。


 「あの、バギンスさん?と呼んで良いんですかね」

 「いいぞ」


 僕がドキリとしていると三上さんがバギンスさんに話しかける。

 その表情は状況に比べ真剣そのものだ。僕もそんな三上さんの表情を見て、気を引き締める。


 「バギンスさん、ペロンギさんとの再開を喜ぶのもわかるんですけども、さっそく質問をしてもいいでしょうか?」


 三上さんの真剣なまなざしをうけて、バギンスさんもペロンギさんから離れる。


 「はぁ、はぁ、やっと離れてくれたぜ・・・」


 ペロンギさんがぐったりと地面に倒れこむのと対照的に、バギンスさんはその老いた外見とは裏腹にびしっと姿勢を正す。


 「三上ゆかこ。お主の人生で一度だけどんな質問にも答えてやろう。心して質問するように」


 先ほどまでの孫好きのおじいちゃんの顔が消え、“全知の賢王”という異名にふさわしい貫禄を帯び始める。その目はどんなことも見透かしているかのようだ。


 「はい、それでは。私の友達であるともこちゃんが見知らぬ男に連れ去られてしまいました。助け出したいので居場所を教えてください」


 あらかじめ質問は決まっていたため、微塵の躊躇もなく三上さんは言った。

 その質問を受けて、バギンスさんはふむ・・・と顎を引く。


 「やはり異世界人は面白いな。どんなことでも答えると言っているのに、欲がない質問をする。君たちにとってみたらこの世界など所詮偽物のように感じているのかな?この世界のやつらはたいてい私利私欲の質問をするが。いや、お前達の中にも私利私欲のやつはいたか。葛城光成は女の子の様子を聞いてきおったな。それはそれで異例なことで面白かったがな」


 葛城君・・・。きっと東堂さんのことを質問したんだろうな。


 「それで、居場所は!?」


 三上さんが珍しく語尾を荒げる。


 「まぁ、そう焦るでない。いや、もはや焦っても無駄と言おうか。お前達が探しているともこはあと数日で消えてなくなってしまう。最早お前達が急いだところで間に合ないだろう」


 「な!?それはどういうですか?」


 僕は思わず質問をする。


 「それがお前の質問ということで良いのかな?」


 く・・・。これはずるい。


 「おい、じいちゃん。そんなせこいこと言ってないで教えてやれよ」


 「1人につき、1つの質問というルールを破りたくないだがの~。しょうがない。これは独り言の続きだが、ともこはいわゆる普通の生命体ではない。お前達異世界人よりは特異ではないが、この世界の中ではもっとも得意な存在の1つ。ともこはこの世界では魔王と呼ばれる存在だ。魔王はこの世界に魔力が満ちてきた時に発生し、満ちた魔力を吸収して覚醒し、世界に魔力が満ちすぎないように調整する存在だ。あと、数日でともこは覚醒し、覚醒すれば最早それはお主達が知っているともこではなくなる」


 「そんな・・・」


 確かに普通の存在ではないと思っていたけど、まさか魔王だなんて。全然邪悪さなんて感じなかったのに。むしろあの男の方が魔王にふさわしい邪悪さだというのに。


 「魔王には善も悪もないからな。ただ吸収した魔力を破壊や創造に使うだけの存在だ。その手綱を握る者が善か悪かで魔王にも神にもなりえるんだ」


 「どうやっても助け出せない場所にいるんですか!?」


 三上さんはそれでもいまだ諦めていない。

 確かに諦めるにはまだ早い。諦めるのは助け出せなかった時で十分だ。


 「ともこは今キョンキョン大森林のピッピの木の地下深くにいる。あの男、私の対の存在とでも言うべき男とともにいる。今から向かっても、10日はかかるだろう。最早間に合うことはない」


 「そ・・・。そんな」


 三上さんが地面に膝をつく。

 

 「待って!まだ諦めるのは早いよ!」


 僕はそう言って鞄の中から赤く輝く念話石を取りだした。


 「この石で和田君達に連絡して救出に向かってもらおう!ペニーニャ城からなら全力で走れば間に合うかもしれない!」

 「そうだね!早く連絡してみよう!」

 

 三上さんが元気よく立ちあがった。

 二手に分かれて正解だったみたいだ。


 僕は早速和田君達に連絡しようとすると、ペロンギさんが止める。


 「待て。ともこが覚醒しないようにする方法を聞いとかないと、間に合っても助けられない」

 「あ・・・そうか。バギンスさん」


 「魔王が覚醒しないようにする方法が武井ともたけの質問で良いんだな?」


 バギンスさんがもったいつける。

 これは聞かないといけないのか?


 「はい。いいです」


 「わかった。魔王が覚醒しないようにする方法は存在しない。ともこの意識をなくさないようにするためには、完全に魔力が満ちる前に覚醒させることで完全な覚醒を防ぐという方法しかない。だが、完全に覚醒させないと世界のバランスが崩れ、よくないことが起きる。わしはおススメできないが」


 「具体的にはどうやるんですか?」


 「具体的には――――」


 バギンスさんが答えようとした瞬間、突然念話石が割れ、声が響いた。


 『――――あー、聞こえるか?こちら和田』


 「聞こえるよ!どうしたの!?そっちもともこちゃんの居場所をつかんだの!?」


 『いや、ちょっと問題が起きてな。お前達はこの国に戻ってくるな。居場所をつかんだらそっちで向かってくれ。俺達はちょっと行けそうにない』


 「何があったの!?」


 『詳しく説明してる暇はないんだが、この国が突然魔王をかくまった罪とか言いだして俺達を指名手配したんだよ。今も騎士達に追われてる。今は何とか飯室の地下組織に匿ってもらってるんだが―――』

 『――――おい、逃げろ!!あいつらが来たぞ。ここは俺達がひきつける。お前達は逃げるんだ』


 突然飯室君の声が割り込み、ばたばたと足音が響き渡る。


 『武井君、ゆかこ!聞こえる!こっちはこっちでなんとかするからともこちゃんのことは任せたわよ!』


 ―――プツン


 念話石の輝きが消える。

 一体全体向こうで何が起きてるんだ???

 


 


 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ