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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
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胸騒ぎ

 “全知の賢王”がいるのはガガル王国と最果ての国ニョニョンの間に広がる広大な山の中である。そのため、僕達はまずガガル王国へと向かっている。ガガル王国はペニーニャ王国のずっと北に位置しており、ピッピの木が生えていたキョンキョン大森林に沿って進めばたどり着く。国と国とを結ぶ街道のようになっていて、道中にはいくつもの宿場町が存在している。


 僕達はその宿場町の一つにいた。


 「今日はここに泊っていく。明日の日が沈むまえにはガガル王国に着くだろう。明日も飛ばしていくから今日はゆっくり休むように。じゃあ、俺はちょっと宿の手配に行ってくる」


 そう言って、ペロンギさんは三上さんの荷物を地面に置き宿屋へと入って行った。

 僕達はというと、


 「「はぁ、はぁ、はぁ」」


 肩で息をして、今にも倒れそうな有様なのであった。


 「ペロンギさんはやっぱり化け物だ」

 「は・・・・早すぎるよね。途中馬に乗ってる集団を追い抜かしてたよね」


 最初は良かったんだ。のんびり歩きながら談笑して、ちょっとしたデート気分だった。沈んでた気持ちも完全に復活してたんだけど、少ししたら「よし、じゃあそろそろ行くか!」と言って突然走りだしたんだよね。僕と三上さんは一瞬固まって、あわてて置いてかれないように走り出して必死に食らいついてここまでやってきたと。三上さんのおおきなリュックはわりと序盤の方にペロンギさんが代わりに担いでいた。


 確かに早ければ早いほどいいんだろうけど、これは厳し過ぎだ。


 「でもこれもともこちゃんのためだもんね。私はこれくらいで値を上げないよ」


 三上さんが笑顔をつくり、にこやかに言う。汗やらで疲労感を隠しきれていないけど、三上さんも頑張ってるんだ。僕だって負けられないぞ。


 「そうだね。明日も頑張ろう」


 僕達はへろへろになりながら、お互いに鼓舞しあった。

 

 

 「よ~し、無事に宿はとれたぞ~」


 ペロンギさんが宿から出てきた瞬間、僕達はどたどたとそれぞれの部屋まで駆け出してベッドに沈み込んだのであった。






 夜中、僕は寝苦しさに目を覚ました。


 「うわ・・・・汗臭いや」


 あのままベッドに沈み込んだまま眠ってしまったらしい。

 誰も夜ごはんに起こしにきてくれなかったのだろうか。それとも疲れ過ぎて起きれなかったのかな。

 

 とにもとかくにも目が覚めて、汗でびちょびちょなのも理解しててもうひと眠りするのは無理だろう。僕はシャワーを浴びに行くことにした。


 この世界は魔法器のおかげで生活レベルは低くない。見た目は中世な感じなのに中身は現代日本とほぼ変わらない。とは言っても、宿やの一部屋一部屋にシャワー室はついていない。大体が宿に一つシャワー室がある感じだ。もちろん男女は別だけど。

 

 「あれ・・・・ないぞ」


 ペニーニャ城の城下町で暮らしていた時は大体どの宿にもシャワー室はあったんだけど、どうやらここにはないらしい。宿の人に町のどこかにシャワーを浴びられるところがあるか聞いてもよかったんだけど、外は真っ暗でみんな寝てしまってるようだったので僕は諦めて外に出た。


 いくら田舎町とは言っても宿場町である。

 どこかに夜でもやってる食堂とかがあるはずだ。


 そんなわけで僕は町をうろうろとしている。

 そんなに大きな町ではない。すぐに一周し終わってしまう。


 そしてそのまま明りがついている建物がみつからないまま、魔物の侵入を防ぐための囲いの近くまでやってきてしまった。

 いまさらになって気付いたけど、もしかしたら魔法器は世界中まんべんなく広まっているわけではないのかもしれない。今までペニーニャ城と隣の村、それと獣人達のところしか行ったことなかったから何が普通かわかっていなかったのかもしれない。もしかしたら隣の村にも魔法器とかなかったのかもしれないな。


 しょうがないので部屋に戻ってタオルで汗をふく。

 宿に泊まれるということでシャワーとかを期待しちゃったけど、別にこれくらい普通のことである。というか部屋で眠れる分、この前の森の中の旅より数倍楽だ。


 洋服を着替えてさっぱりし、ベッドに横になった。


 

 「・・・・」


 

 今度はなかなか眠れない。

 寝苦しさで起きたけど、どうやら汗が不快だったせいだけではないようだ。


 どうもやっぱり胸騒ぎがおさまらない。


 僕はベッドで横になりながら天井をみつめる。


 視力を失っていた時間を経て、僕は魔力というのもを若干感じ取れるようになっていた。人のエネルギーを感じ取れるのと同じような感覚だ。しかし、人のエネルギーと違って空気中の魔力はそんなにはっきりとわかるわけではない。空気中の魔力を感じるというのは、山に行って空気が美味しく感じるとか、そんなレベルでなんとなくわかるレベルにすぎない。そんなレベルだけど、最近はすこし魔力の様子がおかしいように感じる。それこそなんとなくなんだけど。


 「魔力のせいで落ち着かないのかなぁ」


 僕は自分で理由を探し、落ち着かせる。

 もちろんともこちゃんが心配で焦っているのもあるんだろうけど、どうにもそれだけだとは思えないのだ。


 なんなんだろうな。



 考え事をしているといつの間にか寝てしまう。

 よくあることだけど、今日もそんな感じで一日を終えた。

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