技とレベル
タンジョンに挑んだ翌日、僕達は街の中の訓練場に呼び出されていた。
「ペロンギさん、今日はレベル上げしないんですか??」
この前まで戦闘訓練といえば街の外の原っぱでウサギ狩りだったので、このような訓練場にくるのは初めてだった。なので、僕も和田君と同じ疑問を抱いていた。
「今日はここで訓練を行う」
「え!?どうやってレベル上げるんですか?」
「魔物でも飼ってるんでしょうか」
ペロンギさんの応えにみんなががやがやとしだす。他のグループはみんな原っぱに向かっていたために、より疑問がうがぶ。
昨日のダンジョンで何か問題でもみつかったのだろうか。
そわさわしていた僕達に向かってペロンギさんが尋ねる。
「お前達は昨日のダンジョンでどれくらいレベルが上がったと思う??」
昨日のダンジョンはうさぎに比べて戦いがいもあったし、何より戦闘回数が多かったから2レベル位はあがったんじゃないだろうか。
一昨日測定をしたばかりなので、正確な数値はわからなかった。
ちなみにレベルは教会か冒険者ギルドにある不思議な玉に手をかざすと測定することができる
「わからないけど、2レベル位はあがったんじゃないですかね?魔物も強かったし戦った回数も多かったですし」
林君がそう答えるが、それを聞いて三上さんが続けて応える。
「私、あのあと教会で測定してきたんだけど、10レベルから1レベルもあがってなかったよ」
「ウソだろ!?あんだけ戦ったのにレベルが上がってない??」
僕達は三上さんの応えに驚く。
感覚では2レベルは上がっててもおかしくないのに、まさか1レベルもあがっていないなんて・・・・
「そうだ。おそらく他のみんなも同じだろう。」
「なんでなんでしょうか?」
僕がみんなの疑問を代表して尋ねる。
「それは、レベルは10レベルを超えると上がりにくくなるからだ。そもそもレベルというのは、魔物を倒した際に吸収したエネルギー量を測定し便宜的に分類したものでしかない。エネルギー量に比例して強くなるわけではなく、得られる量に比べて能力上昇の幅は徐々に小さなものになっていく。つまり、レベル1から10に必要なエネルギー量が100で、能力上昇値が100だとすると、レベル10から20に必要なエネルギー量が1000で能力上昇値が100ほどになる。そしてレベリングは能力上昇率を基準に作られているため、徐々に上がりにくくなっていくんだ。理屈はわからないが10レベルを区切りに一気に能力上昇率は悪くなる」
「そうだったんですね。でも、じゃあどうしてもっとレベルを上げやすい場所に行くのではなく、今日は訓練場に集合にしたんですか?」
「それはだな。レベルを上げることだけが強くなる道ではないからだな。例えば、レベルが上がればそれだけ力や移動速度は速くなるだろうけれども、剣をふる技術や体の効率的な動かし方が身につくわけでない。純粋に身体能力しかレベルでは上昇しないんだ。俺は正直レベル上げよりも、こういった剣をふる技術こそが強さの根本だと思っている。だから、これからはそういった点を重点的に鍛えていこうと思ってここに集まってもらったわけだ」
「おお~なんかかっこいいな」
和田君が目をキラキラさせて聞いている。
僕も同じようにちょっぴり興奮しいた。レベルに頼った戦い方ではなく、鍛練や経験によって強くなっていく。渋くていい!
「まぁ、技術を教えるにしてもある程度の身体能力が必要だからレベル10までは一般的な方法であげさせてもらった。レベル10ってのは一般人レベルの身体能力なんだが、お前達は異世界人だからレベルが10でも一般的な騎士団員クラスの身体能力だからな。昨日のダンジョンの動きもなかなかよかったしな。こうやって技を重視するのは少数派なんだが、俺の下についたからにはレベルだけじゃなくこれからはこういったことも訓練していくからよろしくな!」
「「「「「はい!!」」」」」
良い返事が訓練場に響き渡った。
「と、いうわけで、そろそろ自分の武器を選んでもらおうと思う。ここにはいろんな種類があるから自分に合うと思うものを選ぶように。悩んだら相談してくれていいからな」
自分の武器!
この世界の基本的な武器はファンタジー世界らしく、剣や槍、弓などがある。
剣にも片手剣だったり両手剣だったり結構色々な種類がある。
冒険に対しては大分消極的になった僕だけど、やっぱりこういう武器選びはテンションがあがってしまう。慎重に吟味して後悔しないようにしよう。
「まぁ、別にあとあと変えてもいいし、気楽にな」
こうして、僕達はしばらく武器とにらめっこをした。
三上さんや東堂さんたち女の子組はペロンギさんと相談したがら選んでいた。三上さんが槍を手にとって真剣に悩んでいる。
「なぁ、どれにする??俺はやっぱり大剣がいいなと思ってる。ロマンがあるし、モンハンではいつも大剣選んでるしな」
「俺は弓かな。グループで行動する時1人は遠距離いたほうがいいと思うし。三上さん達は槍になりそうだからな」
和田君と林君は武器が決まったようだ。
僕も実はもう決まっていた。
「僕はペロンギさんと同じ片手剣にするよ」
巨大な爬虫類に助けられて以来、僕はペロンギさんの剣に惚れている。
「ほ~、お前、助けられて以来ペロンギさんに夢中だもんな」
「そういう言い方しなくてもいいだろ。」
「よーし、そろそろみんな決まったな。」
「「「「「はい!」」」」」
「えーと、和田が大剣で林が弓で武井と東堂が片手剣、そして三上が槍か。うん、チームのバランスも悪くないな。遠距離にも近距離にも対応できたほうがいいからな。今日はそれぞれ自分の武器に慣れるところから始めようか。」
「「「「「はい!!」」」」」
こうして僕達の本格的な訓練が始まった。
と思っていたのだが、次の日に残念な展開が待ち受けていたのだった。