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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
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槍: 葛城 光成

 「死ね!!」


 葛城君の鋭い槍の連撃が僕に迫る。

 僕はそれを紙一重でなんとか交わす。


 「うわ!ちょっと!まじで殺す気じゃん」

 「当たり前だろうがこの野郎!」


 葛城君の連撃が止む、そしてそのまま大きく振りかぶって制止する。


 「お前がみかと付き合ってるだって?そんなの認めない!!!」

 

 葛城君の槍の先端が燃え始める。

 彼ら勇者組の聖武器はどれもこれもが何かしらの魔法器となっている。葛城君の槍は炎系の魔法器でもあるんだなぁ。


 って、そんなことよりも。


 僕は問題の元凶になっている東堂さんを見る。

 東堂さんは申し訳なさそうな顔をしている。

 

 顔だけで何も言ってくれない。


 どうしてこうなった。

 僕はここ1時間の出来事を振りかえった。


 

 


 東堂さんと三上さんが生活している宿にやってくると、東堂さんが泣きながら部屋を飛び出した。僕は和田君に三上さんのことを任せて東堂さんの後を追った。そしてなんやかんや説得した帰り道、なぜか僕の手をつなぐ東堂さん。僕もおっかなびっくり青春っぽいことをしていると、僕達の前に槍の勇者である葛城光成かつらぎみつなり君が現れた。すると当然、槍を僕の方に向け、


 「決闘だ」


 突然決闘を申し込まれた僕はもちろん丁重にお断りした。

 しかし、葛城君は納得できなかったみたいで、


 「く・・・・こんなフ抜けた男となんで手なんてつないでるんだ!みか!」


 東堂さんに問い詰める。

 僕はこの時、頭の中は“?”で埋め尽くされてたね。

 突然決闘を申し込まれることに対してもそうだし、気にしてるところが手をつないでたこともそうだし、何より葛城君と東堂さんがの関係にたいしてもだし。


 僕は東堂さんの方を見た。


 東堂さんは何か一瞬考えたそぶりをみせて応えた。


 「私はそんなフ抜けてる武井君が好きなの。ラブラブで付き合ってるの。だからもう付きまとわないで。迷惑なのよ」


 「「え!?」」


 僕と葛城くんは同じ反応をとり、東堂さんを見てそしてお互いに見つめ合った。


 「ははは、なんなんだろうね~これは」


 僕はあまりにも理解できない展開にもはや笑いだしてしまったが、葛城君はそれを挑発ととったらしい。ぶちっと僕にも聞こえる位に頭の血管が切れている気がした。


 「決闘だ!もう答えは聞かない」


 そう言って、買い物袋を地面に置き、槍を空に向けて振った。

 すると槍の先から炎がでて、空中でとまる。

 そしてそれは光源となり完全に暗くなっていた周囲を明るく照らし出す。


 偶然にもそこはちょっとした空き地のような感じになっていて決闘にはもってこいだった。


 「待って。話合おう。僕達はわかりあえる」


 「問答無用。死ね!!」


 そして冒頭の槍の連撃につながる。

 短い回想だが短時間の間にこんなことがあったわけだ。

 

 でもしかし、意外にも葛城君の槍を避けれたのには驚いたね。

 昨日神宮寺君の力に自尊心をボロボロに砕かれたってのに。


 色々文句を言いたい展開だけど、とにかく今は葛城君をなんとかしないと下手したら僕は死ぬ。

 東堂さんはそこまでして葛城君に嘘をつきたいのかねぇ。


 未だ何も言ってくれない東堂さんのその意志になみなみならないものを感じる。

 きっと何かしら事情があるんだろうなぁ。それならしょがない。僕もその嘘に乗っかることにしよう。僕はこの決闘に勝って嘘をつきとおす。



 「火炎大車輪!!」 


 葛城君が何やら技名を唱えて、切っ先が赤く燃え盛った槍を豪快に振り回す。

 

 速い!

 けど、避けれなくはない。


 僕は葛城君に向かって飛びながらその攻撃をよける。

 そして、その跳躍力の力をそのままに、蹴りを放った。


 「お前らいちいち技名叫んでんじゃねぇ!!!」


 僕の怒りも込めたその一撃はなんと、あっさりと葛城君の顔面を捉えた。

  

 ドガ-ン!!!!

 

 盛大な音を立て、葛城君はふっとぶ。


 「え・・・・・?」


 そして、そのまま葛城君はダウンしたのであった。


 「え?ええええええええええええええええ?」


 意味のわかない展開、意味のわからない決闘、そして意味のわからない勝利に僕の思考回路は完全に停止した。。。。。。



 なにがなにやらさっぱりです。



 僕はがばっと東堂さんの方を向く。

 僕が何か言うよりも早く、東堂さんは話し始めた。


 「変なことに巻き込んでごめん。私、この世界に来る前から葛城君に迫られてて、昨日会った時なんて求婚までされちゃって。さすがもううんざりしてたからこんなことしちゃいました笑」


 「いや、笑ってもさ。なんかすごい事情でもあるのかと思ったらそんなありきたりな」


 「ありきたりでもこっちは凄い迷惑してたんだもん。しょうがないでしょ」


 「はぁ、ちょっと前のドキドキを返してよ。それよりも、葛城君にヒールしてあげないの?」


 「いいよ。あんなやつ放っておけば。これにこれて迫ってこなくなればいいんだけどな」


 僕は女の子の恐ろしさを感じた。さっきまであんに乙女チックな感じだったのに。可愛い感じだったのに。嫌いな存在には容赦ないな。


 こうして、僕達は葛城君を放置して今度こそ宿へと戻ったのであった。



 僕と東堂さんが宿に戻ると、和田君と三上さんが笑って出迎えてくれた。


 「うわ、どうしたの。二人ともそんなに笑顔で」


 僕はニコニコ全開の二人にちょっと後づさりながら質問する。

 二人はなおも笑顔のまま応える。


 「みんなが元気になったみたいで私嬉しいんだよ!これでともこちゃんに一歩近づけたね。みんながこのまま意気消沈してたらどうしようかと思ってた。1人じゃさすがにともこちゃんを助け出せないし、頭パンクしそうだったよ。だから和田君がともこちゃんを救おうって言ってくれてすごい嬉しかったんだ。みかちゃんには武井君が着いて言ってくれたからきっと大丈夫だと思ってたし、だから嬉しくて笑っちゃったんだ」


 「とまぁ、こんな感じで三上さんが嬉しそうににこにこニコニコにこにこニコニコしてるから、俺もつられて笑顔になっちゃったんだよ」


 なるほど。なるほど。

 三上さんのこういうところがみんなの心をつかむのかもしれない。笑顔で明るくて天真爛漫で無垢で純粋で、もう天使かって感じ。

 そりゃあ、東堂さんが私の気持ちなんてわかるわけないと思うのも仕方ないってものだよ。

 

 三上さんも落ち込んでるかと思ってたけど、みんなが落ち込んでたことに対して落ち込んでたんだな。



 「そうだったんだ。よかった。これでみんなの意志が一つになったね」


 「うん、みんなでともこちゃんをあの悪魔から救い出そう!」


 僕達は夜遅いにも関わらず、みんなで図書館へと向かった。

 必死になって手がかりを探していた林君と合流して、一緒になって本を読み漁った。


 

 しかし、手掛かりはなにもつかめなかった。

 

 

 

 

  

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