林 ひろし
僕達は図書館の前にやってきた。
もう日は沈み、辺りは暗くなってきている。
「林君はいるかな?」
図書館からは明りが洩れている。
営業時間は日が沈むまでなのでもう終わってるはずだから、まだ色々と片づけやらをしているのだろう。仕事に出ていたならばまだ残っているはずだ。真面目な林君はきっとここにいるはず。
「まぁ、とにかく明りがついてるし、行ってみようぜ」
「そうだね」
僕達は図書館の扉をこっそり開けた。
「おじゃましま~す」
別にこんなこっそりする必要なんてないんだろうけど、なんとなく忍び込んでみたくなっちゃうんだよね。男ってそういうもんでしょ。
和田君も僕に続いてこっそりと着いて来ている。
カウンターには誰もいない。
僕達はカウンターを超え、中へと進もうとする。その時、中から誰かの話声が聞こえてきた。
「とまって」
僕は手で和田君を制止する。声はもちろん小声である。
「なんだよ?」
「なにか話声が聞こえる。そっと覗いてみよう」
僕達は身を隠ながら、中を覗き込む。
みんなが読書する机に、二人の男女が座っている。
「俺だってね。このままで終わりたくなんてないんだ。でも、俺の力は和田や武井にも劣るんだ。そんな俺が神宮寺達を押しのけて助けになんていけないよ。きっとあいつらならやってくれるはずだ。俺はここであいつらの帰りをまってればいいんだ」
「そうですね。ひろしはここで私と一緒に本に囲まれているのが幸せですよ」
林君が爆乳司書さんの胸に顔をうずめながらめそめそとしていた。
「「うわぁ・・・・・・」」
僕達は声をあげてげんなりとしてしまった。
「な・・・なんでここに!?」
林君がササッと爆乳司書から離れる。
「こ、これは違うんだ。あの、その、とにかく違うんだ」
林君が必死に否定するが、いまさらである。
司書さんもあたふたとしているがもう遅い。
「いいよ。そんな否定しなくても。その人は魅力的だよ、うん」
僕はそっと林君の肩を叩いた。
「あ~、もう。だから違うんだって。ピルピルも説明してくれよ~」
「これで私たちの中は公認のものに。ついにあの忌々しいメガネ女から一歩リードだわ」
司書さんはどこかへトリップしていた。
「あ~もう。わかった俺から説明するから」
え~、なんでも。林君が言うには、昨日の件で仕事に身が入らず落ち込んでいたところ、爆乳司書であるピルピルさんが相談に乗ってくれたそうで。話を聞いてもらってるうちに泣きそうになり、ピルピルさんが胸を貸してくれたんだそうだ。だからけしてやましいことをしていたわけではなく、純粋に話を聞いてもらっていただけなんだそうだ。
「うん、だとしても胸に顔をうずめてめそめそしてたことに変わりはないよね」
「う・・・・確かにそうなんだけど」
「別に俺らも誰かに言ったりなんてしないから気にすんなよ。欲求に負けちゃうことはあるよ、お前だって男だもんな」
僕と和田君の口撃に泣きそうになる林君。
「冗談はこれくらいにして本題に入ろう」
「そうしてくれると助かります」
しゅんとする林君。ああ、こんな顔色豊かな林君は向こうにいた時も含めて初めて見た気がする。
僕はまたもからかいたい衝動に駆られたが、言葉通りに本題に入る。
「一緒にともこちゃんを救いに行こう。昨日は神宮寺君達に何も言い返せなかったけど、やっぱりこのままただ待ってるだけなんて駄目だよ。自分たちもともこちゃんを救うために行動を起こそう」
「俺も昨日からずっとそのことを考えてた。でも、俺達が行動したってあいつらの邪魔にしかならないんじゃないか?足手まといにしかならないなら何もしないでともこちゃんの無事を祈っているほうがよっぽど役に立つんじゃないか?」
林君が言うこともよくわかる。この前の戦いの時見たいに、弱い僕らは強い神宮寺君達の邪魔になってしまう可能性は確かにある。でも、やっぱりそうじゃない。
「確かにそういう可能性もある。でも、それと僕達が行動しないことは違うと思うんだ。だって戦う以外にもできることはたくさんあるはずだ。例えばこの前のピッピのしずくの時みたいに、あいつが隠れそうな場所を文献から調べることだってできる。ともこちゃんと一番親しかったのは僕らだ。というよりも、僕らしかともこちゃんと親しくしていた人はいないんだ。だから僕達は行動しないと駄目なんだよ」
「・・・・・・。そうだな。強いとか強くないとかそれだけじゃないよな。なんで俺はそんな単純なことを忘れていたんだろう。ありがとう。目が覚めたよ。俺はこれからここで男の情報とともこちゃんの情報を探ってみるよ」
林君の目に光が戻る。
そして、そのままいきなり立ち上がり本の海へと消えていった。
「なんだか、一瞬で立ち直ったな。俺もあんな感じだった?」
「うん、あんな感じだったよ」
僕達はやはりこころの中では諦めてはいなかったのだろう。神宮寺君の力を目の当たりにしてし心がぽっきり折れてしまったけど、雑草魂ってやつなのかな。折れても諦めないつよき心だ。だから二人とも僕のちょっとした後押しで一気にもとに戻ったのだろう。
「おし、じゃあ次は三上さんと東堂さんのところか?」
「そうだね。でもこんな時間だからどこに行けば会えるかな?」
外は日が完全に沈み、辺りは真っ暗になっていた。




