表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
33/55

勇者の帰還

 僕達が城門の前に着くと、そこには悲惨な光景が広がっていた。

 爆発によって倒壊した門、切り裂かれた兵士、たくさんの怪我をした住民たち。

 

 「酷いな・・・・」

 

 和田君がぼそりと呟いた。

 僕は何があったのかと辺りを見回す。


 三上さんが怪我をした人達にヒールをかけて回っているのに気がついた。


 「三上さん!」


 僕が三上さんに近づくと、


 「武井君、外で、タッタさんが1人で戦ってるの。でも、けが人がいっぱいいて、すぐにでもヒールをしないと死にそうな人もたくさんいないたから。は、早くしないとタッタさんとともこちゃんが」


 三上さんがかなり同様しながら話す。


 「わかった。三上さんはこのまま怪我をした人のヒールをお願い。東堂さんも一緒にヒールを」


 「わかったわ」


 東堂さんと三上さんを残して、僕達は急いで倒壊した門の外に出る。

 そこではタッタさんが1人で2匹の魔物と戦っていた。


 こんな所には絶対存在しないであろう凶悪な魔物と。



 「「タッタさん!!」」


 僕達がタッタさんの名前を叫んだその時、1匹の魔物の凶悪な爪がタッタさんを貫いた。

 そして、ばさりと放り捨てられる。


 「そ・・・・そんな」


 僕達はあまりの出来事に言葉を失う。


 魔物がこちらを見てニヤリと笑った。


 「フフフフフ。ケルベロスを倒した聞いていたからどれだけ強いのかと思ったら、とんだ期待外れだったな兄者よ」

 「そうだな弟よ。これではここにいる人間達も期待できないな」


 その外見はまさに鬼。

 兄者と言われた鬼は二本の角と大きなこん棒を持った鬼で、身長は5メートルほどはあるだろうか。体の色は赤い。そして、もう一匹の鬼は一本の角と凶悪な爪が生えた鬼で、身長は3メートルほどだ。体の色は青い。


 

 「く・・・・よくもタッタさんを!うわああああああ」


 和田君が一気に攻め込んだ。

 しかし、赤鬼が振った一振りのこん棒が和田君に容赦なく激突する。「ごふっ」と、和田君が吹き飛ばされる。怒りで我を忘れていたのかもしれないが、それでも全く反応も取れずに吹き飛ばされてしまった。


 「よそ見してる暇はないぞ」


 「な!?」


 突然背後から声が聞こえてくる。そしてその刹那凶悪な爪が僕達を襲った。

 僕はなんとかその攻撃に反応し、かろうじてその攻撃を避ける。


 「は、林君!」


 しかし、林君はその一撃を避けることができず、血しぶきをあげながら地面へと倒れる。


 「仲間の心配をしてる暇もないぞ」


 またも背後から声が聞こえ、そのすぐ後にまるで壁が押し寄せてくるかのようなこん棒の一撃が迫る。


 「ぐあああああ」


 僕はその一撃を避けることができずにくらってしまう。

 その一撃は今まで受けたどんな攻撃よりもすさまじく、僕はそのまま100mほど吹き飛ばされた。


 ごろごろと転がる。

 

 一瞬で全身の骨をぼろぼろにされる。

 もはや立ち上がることもできない。


 「ああ、なんて弱い。あの男にそそのかされて来てみれば、全くどうして、ふぅ。我らが強すぎるのがいけないんだな、弟よ」

 「そうだな、兄者よ。私たちに敵うものなど、もはや魔王や古竜位だろうよ」


 く・・・・何も言い返すことができない。

 気持ちの問題ではなく、痛みで声をだすこともできないのだ。


 「しかし、あの男は少女を連れ帰って何をするつもりなんだろうな」

 「我らを動かしてでも手に入れたい人物だったのか?」


 少女!?ともこちゃんか・・・・。

 あいつも来ていたのか。


 くそ!

 僕はぼろぼろの体でなんとか起き上がった。


 「ほう。まだ起き上がれるか。ただの人間にしては頑丈だな」

 「しかし、そんなにボロボロでは何もすることはできないだろう」


 「く・・・・ともこちゃんをどうする気だ!このやろう」


 僕は血反吐を吐きながら叫ぶ。


 「ともこちゃん?あの少女のことか?」

 「それなら我らもどうするかは知らんぞ」


 そんな。

 少し離れただけでなんでこんなことに。


 すぐに戻ると約束したのに。


 「もう、死ね。人間よ」

 「期待はずれだったが、久しぶりの運動楽しませてもらったぞ」


 赤鬼がこん棒をふりあげた。

 僕はもはや指一本動かすことができない。気合いでたちあがっただけで完全に限界を超えた。


 こんな・・・・。

 嘘だ・・・・。


 ペロンギさんを救ったばかりなのに、そのすぐ後にこんなことが起きるなんて。


 嫌だ。まだ死にたくない。

 僕は目を閉じて祈った。 


 赤鬼がこん棒を振り下ろす瞬間、光輝く何かがこちらに迫ってくるのを感じた。

 そして、その光は僕の前にやってきた。


 「な・・・・。天使か?」


 「天使じゃないよ。俺だよ。神宮寺賢哉だ。」


 そう言って、神宮寺君は光輝く剣を赤鬼に向かって振った。

 すると、どうやっったら止められるんだと思っていたこん棒の一撃を細い剣で受け止めた。


 「な・・・・なんだと。我が一撃を受け止めるだと」


 赤鬼が驚愕の声を上げる。



 「ふ、受け止めるだけじゃないよ。そら!」


 そう言って、こん棒を受け止めていた剣をさらに振り抜く。

 その剣戟はこん棒を豆腐のように切り裂いて、赤鬼へと迫る。


 「なんだと!?」


 そのまま赤鬼の体に一筋の剣筋を刻んだ。

 

 「く・・・馬鹿な。我の一撃をあっさり打ち破るとは。貴様、何者だ」


 「何者かと問われたら、普通の高校生と応えたい。けど、今は剣の勇者と呼ばれている」


 神宮寺君が光輝く剣を赤鬼に向けてそう応える。


 「勇者だと・・・・面白い。我を楽しませてくれそうだな!」


 そう言うと、赤鬼が一気に力を溜め始める。

 どんどんと力がたまって行く。それは今まで感じたことがないほどのエネルギーであった。


 「な・・・・神宮寺君逃げるんだ。君まで一緒に死ぬことはない」


 僕は神宮寺君だけでも逃がそうとするが、しかし、神宮寺君はにっこりと笑ってこう答えた。


 「大丈夫。俺がなんとかするから安心しててよ」


 そう言って、赤鬼へと駆け出した。


 「ははは。面白い。この一撃で子っぱみじんに消え去れ!!!!」

 「消え去るのは君だよ。くらえ!ライトニングスラッシュ!!!」


 赤鬼の強力な一撃と神宮寺君の強力な一閃がぶつかる。

 僕は衝撃がやってくると身構える。しかし、その衝撃はいつまでたってもやってこなかった。

 なぜなら、神宮寺君の一閃と赤鬼の一撃は完全に神宮寺君の圧勝で、衝撃はすべて赤鬼の方へと流れていたからだ。


 「ふぅ。終わった」


 神宮寺君が優雅に剣を鞘へと戻す。

 

 「ば・・・化け物か」

 「はは。この世界の人に言われるのは慣れてたけど、同郷の君にまで言われるとちょっと傷つくな」 


 「あ。ごめん。あまりにも規格外だったからびっくりして」


 僕はあわてて、謝罪するも、神宮寺君は気にしてないよと言って、僕を担いだ。


 「な・・・・なにすんの!?」

 「凛に治してもらわないとね。結構酷い傷でしょう?」 

 「それよりも、鬼はもう一匹いるんだ」


 僕はあわてて神宮寺君に告げるも、


 「ああ、それならもう終わってるだろうよ。ほら?」


 そう言って、神宮寺君が指す方を見ると、青鬼が地面に横たわっているのが見えた。

 そのそばには優雅に槍を携える葛城くんと、武骨なたたずまいの轟君の姿見えた。


 あれだけの魔物を一瞬で・・・・。

 僕はとんでもない状況に頭がパンクしそうであった。

 

 「武井君!」


 必死に状況を理解しようとしていると、涼宮さんの声が聞こえてくる。

 

 「凛、こいつもそうとう酷い怪我だから頼むよ」


 そう言って、神宮寺君が僕を涼宮さんの近くに下ろす。

 

 「うん。ハイヒール!」


 涼宮さんがそう呟くと、体中の傷が一瞬で治っていくのを感じた。

  

 「涼宮さんのヒールはすごいよな」

 「和田君!無事だったんだね。それに林君とタッタさんも」


 僕がヒールの光に包まれている時、和田君が声をかけてきた。横には林君とタッタさんもいる。

 どうやら涼宮さんのヒールで無事にもどったみたいであった。


 「ああ、さすがに死んだと思ったんだけどな」


 タッタさんと林君が笑う。

 その笑いは助かったことに対してなのか、尋常じゃない力を目の当たりにしたことに対してなのか。



 「俺達が来たからにはもう安心だぜ」


 神宮寺君がにこやかに言った。 


 

 


 

 

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ