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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
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僕達の帰還

 「ついに戻ってきた」


 僕達はペニーニャ城の前ににいた。

 マッチ村長の村を出発し、その日の夕方に到着した。一日ゆっくり休んだ僕達は、考えられないほどのスピードで森の中を突き進んだ。

僕はタッタさんの方を向く。


 「タッタさん、ありがとうございました」

 「良いってことよ。早くペロンギさんのところにいってやりな」

 「はい」


 僕達は城の中へ入る。

 しかし、城門で止められてしまう。


 「獣人達をこの城に入れることはできません」


 門番がタッタさんとともこちゃんの前に立ちはだかる。

 

 「その人達は僕達の仲間なんです。通してあげてください」


 僕は冒険者ギルドで発行された身分証を提示する。

 しかし、門番達は二人の前に立ちはだかったまま動かない。

 すると、タッタさんがふぅと息を吐き、やれやれだと肩をすくめる。


 「しょうがない。俺達はここで待ってるから、とりあえずペロンギさんのところへ行ってやりな」

 「でも・・・・」

 「俺だって逆の立場ならそうするさ。最後まで見届けられないのは残念だが、世の中ってのはそういうもんだ」

 「わかりました。すぐに戻ってきますから」

 「おう」


 僕はともこちゃんの方に顔を向ける。

 

 「パパ、言ってあげて。私はここでタッタさんと待ってるから」

 「ごめん。すぐに戻ってくるから」

 


 僕達はタッタさんとともこちゃんを置いてペロンギさんの元へと向う。

 城の中はどこかお祭りムードが漂っていた。普段よりも町に活気がある気がする。


 「なんで獣人ってだけで城から閉めだすんだろうな」


 和田君もこの仕打ちに憤慨している。

 

 「今までよっぽど衝突しあってきたんだろうね」

 「でも、別に俺達と何も変わらないのにな。ちょっと獣要素が強いだけで言葉だって通じるのに」

 「地球だって、肌の色や宗教の違いなんかで差別や争いがおきるんだ。人間ってそういうものなんだよ、きっと。悲しいけどさ。それになんか今日はお祭りみたいだし、それでいつもより警備が厳しいのかもしれない」


 僕達は門番の仕打ちに対しての不満をぶつけ合いながら足を進める。 

 そして、ペロンギさんの病室の前までやってきた。


 「ペロンギさん」


 僕は病室のドアを開ける。

 病室には出発した時と同じように苦しむペロンギさんの姿があった。


 僕はすぐにペロンギさんのそばによって、ピッピのしずくをとりだした。


 「間に合ってよかった。これを飲んでください」


 僕はピッピのしずくをペロンギさんにのます。

 するとペロンギさんの体が光輝いた。

 

 ペロンギさんの顔が苦しそうに歪む。


 「頑張ってください」


 僕はペロンギさんの手をとって必死に語りかける。


 しばらくして、ペロンギさんの体から光が消えた。

 表情も安らかなものに変わる。


 そして、目を開いた。


 「・・・・一体、何が?ここは?ん?みんなどうしてここに?」


 「「「「「ペロンギさん!」」」」」


 僕達は一斉にペロンギさんに抱きついた。


 「痛い。痛い。なんだ。なんだ。」


 ペロンギさんは戸惑っているがそんなの関係ない。


 「良かったです。本当に良かったです」


 涙を流し、鼻水をたらし、僕達はペロンギさんに抱きつく。


 「お、おう。なんだかよくわかないがみんなに心配かけてたみたいだな」

 

 僕達はしばらくだんごのように固まってペロンギさんの復活を喜んだ。







 「なるほど。そんなことがあったんだな」


 僕達はペロンギさんへここまでの経緯を説明した。


 「あの時の俺の活躍を見てもらいたかったですよ。ケルベロスの首を一刀両断する姿を」


 和田君が意気揚々とそんなことを話す。


 「はは。見てみたかったよ。少しの間で随分と成長したんだな」


 ペロンギさんがしんみりとしながら言う。

 僕自身もまさかあのピクニックからここまで激動の時間を過ごすとは思っていなかった。のんびりと過ごしながら仕事をみつけて普通に生活をしていくもんだと思っていた。

 何が起こるかわかないものだ。まぁ、異世界にいる時点で異常なことに巻き込まれてるんだけどさ。


 「それで、色々お世話になったタッタさんを城の外に待たせてしまっているんです」


 「そうか。この国は、というより人間達は獣人を恐れているからな。本当は俺自身が顔を見せるのが筋なんだろうけど、あいにくまだ体が本調子じゃなくて会いにいけそうにない。俺の代わりにお礼を言っておいてもらえないだろうか」


 「わかりました。それで、その、説明しずらいんですけどもあの・・・・」


 僕はともこちゃんのことをペロンギさんには全く話さなかった。自分たちもよくわかってなかったし、何より誤解を与えずに説明するのが難しいと思ったからだ。

 しかし、ともこちゃんがこの町に入れない以上、僕達、もしくは僕だけでもこの町を離れてともこちゃんと暮らさないといけない。せめて知り合いをみつけるまでは。


 「ああ、わかってる。告白の件だろう。私のことを好きだとかなんだとか」

 

 僕は説明するのに戸惑っていると、ペロンギさんが勘違いしたのか、男と戦っていた時に自分が口走ったことについて話始める。


 「え・・・いや。違―――」

 「確かに男にそんなことを言われたのは初めてで嬉しいっちゃうれしい。だけどこんな男まさりな女でいいのか?だからまだともたけの気持ちにどうこたえていいかわからないんだ。それに私は付き合うなら私よりも強い男がいいとかねてから思っていたもので――――」


 ペロンギさんが顔を真っ赤にさせながらすごい饒舌になって話していると、突然ものすごい爆発音が辺りに響き割った。


 「な・・・・なんだ!?」


 僕達は病室の窓から外を眺める。

 すると、城門の外から煙がもくもくと上がっているのが目に入った。


 「まさか!?」

  

 煙の上がっている場所は僕達が入ってきた場所のすぐ近くで、ということはつまり・・・・


 「ともこちゃんが危ない!」


 三上さんがそう言って一目散に病室を飛び出して行った。


 「これは・・・・一体」


 ペロンギさんも突然の事態に目を丸くしている。

 

 「ペロンギさん、これが説明しようとしていたことで、ちょっとすぐには説明しづらいんですけども・・・・」


 「わかった。説明は後でいい。タッタさんと、ともこちゃんとやらが危ないんだろう?すぐに行ってあげるんだ」


 「すみません。事情はあとで説明しますから!」


 僕達はペロンギさんを残し、急いで煙があがる城門の前へと向かった。

 


 


 


 

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