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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
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復活!!

 ピッピのしずくにのおかげで僕は視力と右腕が復活した。

 体の色々な不調も一気に良くなったように思う。


 蚊にさされてかゆかったところもかゆくなくなったし。

 

 素晴らしいピッピのしずく!

 こんな素晴らしいものがあったなら人間達が攻めてくる理由もよくわかる。


 

 「本当に治ったのか?」


 和田君がおそるおそる僕を覗き込む。

 

 「ばっちりだよ」


 そう言って、僕は和田君のおでこを右手ででこぴんした。


 「あ、痛え!」

 「ね。よくなってるでしょ?」

 「わかったけど。わざわざでこぴんしなくたっていいだろ~」


 和田君が額をさすりながらぶつくさと文句を言う。

 東堂さんも僕に近づいてきて、顔に手をあてまじまじと僕の目を見てくる。


 「そんな近いと恥ずかしいんだけど」


 僕がちょっぴり顔を赤くすると、東堂さんも恥ずかしそうに離れて、


 「良かった。目も元に戻ってるみたいね」


 安堵の表情を浮かべる。

 みんな僕の言葉を信じなすぎである。

 まぁ、魔法がある世界とはいえ完全に失明したものが元に戻るというのはやっぱり不思議ではあるけれども。


 「パパ~、良かったね」


 そう言って、ともこちゃんが僕に抱きついてきた。

 僕は頭をなでなでしながら応える。

 

 「ともこちゃんのおかげだよ。ありがとう」

 「えへへ~」


 ともこちゃんがにへらと笑う。

 先ほどのまでの神々しさが一瞬でなくなった少女らしい笑顔である。


 「しずくの力が本物なのはわかったから、急いで城に戻ろうか。あいつが仲間を連れて戻ってくるかもしれない」


 林君が周囲を警戒しながら言う。

 

 「そうだね。急いで戻ろう。タッタさん!」


 僕はピッピの根元に手を当ててたたずんでいたタッタさんに声をかけた。


 「お、おう。・・・・俺がもうすこい速くたどり着けていれば、すまなかった。今まで俺達を見守ってくれてありがとうございました」


 タッタさんがピッピの木へと語りかけ、こちらへと歩いてくる。


 「タッタさん・・・・」

 「ああ、なんだよ。お前達がそういう顔しないでくれよ。悪いのは全部あの男なんだからよ」


 獣人達にとって御神木であるピッピの木が破壊される。

 それはきっと僕達が思う以上に大きな意味があるのだろう。タッタさんの瞳が、あのケルベロスへ向けていたのと同じ熱い炎をたぎらせているのを感じた。


 「よし、それじゃあ、急いで城に戻ろう」


 僕達はピッピの木を後にした。






 僕達は行きの時よりもかなり急いで城へと向かう。

 道中では7日ほどかかった道のりを、わずか3日ほどでタッタさんの村まで帰ってきた。

 

 マッチ村長が僕達を出迎える。

 

 「おお、そなたたちもう戻ってきたのか。どうだった無事しずくは手に入れられたのかの?」

 「実は・・・・」


 タッタさんが事情を説明する。

 僕達がたどり着いた時に不気味な男がいたこと。そして、その不気味な男がピッピの木を破壊したこと。


 「なんじゃと・・・・。なにやら胸騒ぎがしたのじゃが、そのようなことが」

 「はい・・・・私たちはあの男が再び攻めてくる前に戻るために急いで帰ってきたのです。私たち獣人達も警備を強化した方がいいと思います。あの男からは何やら不吉なものを感じました。それにあいつの口ぶりからするとあのダンジョンもあいつのせいで現れたのかもしれません」

 「そうか。それならば久しぶりに族長達で集まって会議をした方がいいかもしれんの」

 「それと、戻ることを優先してピッピの木の宝物庫を持ち帰ることはできませんでした」

 「それも踏まえて会議をしなければならないな」

 

 どんどんと話が進んでいく。

 タッタさんが話についていけなくなっている僕達の方へ振り向いた。


 「ちょっと俺達は話合いをする。ここまで急いできたのもあるし、今日はここでゆっくりして明日出発しよう。少しでも体を休めておいてくれ」

 「はい。でも、その言い方だとタッタさんも一緒に来てくれるんですか?」

 「ああ、ここまで一緒に行動したんだ。お前達が無事にそのペロンギさんとやらを救えるまで見届けてやるよ」

 「ありがとうございます」

 「それじゃあ、今日はゆっくり休んでいてくれ」



 僕達はこの村で休んでいくことになった。

 この前と同じ部屋を割り振られる。


 僕は荷物をおろして、ベッドで横になる。


 「ふぅ、癒される~」


 久しぶりのベッドはとても気持ちがいい。

 日本やペニーニャ城にいたころよりも硬いベッドではあるが、野宿の時に比べれば天国である。

 

 たまった疲れがどこかえと消えていく気分だ。


 ペロンギさんの元へと一刻も早く向かいたい気持ちもあるが、しかし、それ以上に疲れもたまっている。僕達でさえそうなのだ。ともこちゃんは限界だっただろう。途中から和田君と僕と林君で交互に背負ってきたものの、きっと大変だったに違いない。それでもつらそうな顔は一切せず、僕達について来てくれた。本当に強い子だ。


 「でも、本当に一体何者なんだろう」


 僕はしばらく、ともこちゃんのことを考えた。


 なぜ僕をパパというのか。なぜ魔法器を使えず魔法が使えるのか。そして、なぜあの男に狙われたのか。

 考えても答えがでない。謎が謎を呼ぶ。


 ああ、頭がこんがらがる。


 僕がともこちゃんに思いをはせている時、家の外に誰か来ていることに気付いた。

 ――――誰だ?


 僕はその人がノックするよりも早く扉をあける。


 「うわ!?びっくりした!」


 「三上さんと・・・・ともこちゃん?どうしたの?」


 そこには三上さんと、ともこちゃんがいた。

 ともこちゃんがにっこりと笑って言う。

 

 「パパ、一緒にご飯食べに行こう」


 その笑顔に先ほどまでの疑問や疑惑はどこかへとふっとんで行った。

 ともこちゃんが何者であれ、こんなに純粋無垢な笑顔ができるんだ。悪いやつであるわけがない。


 僕はこの笑顔を守らなきゃいけない。

 だって、僕は彼女のパパなのだから。


 理由はわかないんだけどね。


 「うん、行こうか」


 僕達は食堂へと向かった。 


  

 


  

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