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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
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ピッピのしずく

 「ぐぁぁああああ!!」


 天から降り注ぐ光によって、男は苦しんでいた。

 視力を失った僕でもまばゆさを感じさせる光は、男の邪気をどんどんと浄化させていく。


 「お前達、今のうちに攻撃するんだ!この光は邪悪なものにしか影響を与えない」


 タッタさんが何やら仰々しい機械を持ちながら叫ぶ。

 僕達はその言葉を受けて、男のもとへと駆け出した。


 「ペロンギさんを苦しめた罰を受けてもらうぞ!」

 

 僕は剣を振り上げた。


 「おい・・・・本当に切れるのか?」

 「ん?どういうこと?」

 「なんか、邪気が消えたら普通のおっさんにしか見えないんだよ」


 そうか。人を切ることに抵抗があるのか。

 僕も視力が通常だったら同じように躊躇したかもしれない。

 しかし、今は視力が見えない。視力が見えない状態で認識するこの男は、表層を覆う邪気が晴れたとしてもやはりまがまがしい存在であると感じるのだ。


 「わかった。じゃあ、僕が切るから目をそむけてて」

 「あ、おい―――――」


 僕は振り上げた剣を躊躇なく振り下ろした。


 「ぐああああああああああ」


 どさっ。

 男が地面に倒れこむ。

 そして剣の切り口から一気にどすぐろい蒸気が湧きあがった。


 「なんだ!?」


 これはいつもの魔物を倒した時以上の蒸気であり、何より僕に吸収されない。

 そして、その蒸気は光の外へと一気に飛び出した。


 「ぐああああ。よくも私の肉体を壊しやがったな。本当に憎たらしいやつらめ」


 飛び出した蒸気から、脳内に直接響くような声が聞こえてくる。


 「く・・・・まだ死んでないのか」


 僕は蒸気に向かって剣を向ける。


 「この私がこんな簡単に死ぬわけないでしょう。このいまいましい光でさえ、私を完全に消滅させることなどできないのだ。しかし、この状態では戦えない。一旦引きさがるとしましょうかね」

 「逃げるのか!」

 「この状態ではまともに戦えないのでね。いずれまた君たちの前にやってきますよ。その子を迎えにね。今日のところは最初の目的を果たして帰らせてもらいましょうかね」


 男がそう言うと、突然、ピッピの木の根元が爆発した。


 「な・・・・」


 僕達は衝撃のあまり固まってしまう。


 「はははは。君達が来た時には既に魔法器をセットしていのだよ。それじゃあ。さらばだ。」


 そう言って、男は空の彼方へと飛んで行ってしまった。



 「そんな・・・・ピッピの木が」


 僕はその場で膝をついた。

 ピッピの木が破壊されてしまったら、もはやペロンギさんを救うことができない。僕の視力と右腕だって治らない。


 僕は絶望でたちあがることができなくなってしまった。


 「まだだ。もしかしたらまだしずくがとれるかもしれない!」


 和田君はそう言って、ピッピの木へと走り出した。

 タッタさんや三上さん達も根本へと移動しだした。


 確かにその通りだ。

 まだ諦めるのは早い。


 僕も立ち上がり根元まで急いだ。


 しかし、


 「く・・・・これじゃあしずくなんてとれるわけない。もうおしまいだ。」


 爆発はすさまじく先ほど感じた重厚なエネルギーがどんどん消失しているのがわかった。先に根元までやってきていたみんなもどうすることもできないでいた。


 すると、僕の腕をともこちゃんが引っ張る。


 「どうしたの?」

 「私がなんとかできるかもしれない」


 そう言って、ともこちゃんがピッピの木の根元にそっと触れる。


 「死にゆく大樹よ。どうか私たちのために最後の力を振り絞ってそのしずくをわけてください」


 ともこちゃんが優しく語りかけると、突然ともこちゃんとピッピの木が光始める。

 さきほどの天からの光と同じか、それ以上に神々しい輝きを放っている。


 「これは・・・・一体」

 

 ピッピの木の上空からなにかがゆっくりと落ちてくるのを感じる。

 そして、そのなにかはともこちゃんの手のひらへと落ちていったのだった。


 「パパ、しずくが。ピッピの木の最後のしずくがとれたよ」


 「ともこちゃん・・・・君は一体全体」


 何者なんだ?

 魔法器を使わずに魔法を使えて、不気味な男からは狙われていて、さらにはこんな奇跡みたいなことが起こせるなんて。

 

 「なにかいれものはある?」

 「あ、ああ。ここにビンがあるよ」


 そう言って、ともこちゃんが手のひらのしずくをビンにうつす。

 しずくが詰められたビンからはなにかとてもつない力を放っているように感じる。


 「綺麗・・・・」


 三上さんが感嘆の声をあげる。

 もしかしたら神秘的に光輝いていたりするのかもしれない。


 「パパ、さっそく飲んでみてよ」


 「わかった」


 僕は、そのしずくをほんの少し口に入れた。

 味はほんのり甘いだろうか。飲み午後地も悪くない。


 「あれ?何もおきな―――――」


 何も起きないじゃないかと言おうとした瞬間目がしらが一気に熱くなる。


 「熱い!」


 感覚を失っていた右腕にも同様に熱くなる。

 

 「ぐああああああああ」


 思っていたよりもかなり痛みを伴うようだ。

 僕はこの痛みが鎮まるのをじっと耐えた。


 そして5分ほどで痛みが消えた。


 僕はそっと目を開けてみる。


 「見える。目が見えるよ!!!」

 

 久しぶりに見る景色は、心配そうに僕をみつめるみんなの姿だった。


 「「「おおおおお、やった~」」」

 

 「心配かけてごめん。武井ともたけ、完全復活です」


 これならきっとペロンギさんだってよくなるはずだ。

 一刻も早く戻りますからね。待っててください。

 



 



 

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