悪魔との再戦
男はすっと立ち上がった。
「フフフ。あなたたちは私の邪魔をしないと気が済まないのですか。殺す。殺す。殺す。殺す。ぐしゃぐしゃにして殺してやる!!!!」
男の体からまがまがしい気が一気に膨れ上がった。
おそらく、この前と同じように頭から角が生え、背中から黒い翼が生えているのだろう。
「な・・・・なんだこの強烈な邪気は」
タッタさんがひるむ。
一度見たことがある僕でさえ、やはりこのまがまがしい気にはしりごみしてしまう。視力を失ったからこそその邪悪さがわかる。
「三上さん!ともこちゃんを頼む」
僕は今のうちにともこちゃんを非難させる。
「わ・・・・わかった」
「パパ」
「大丈夫だよ。あんなやつにお前を渡すものか」
ともこちゃんがてくてくと三上さんのもとへと移動する。
「ふぅ。今回はあの女騎士はいないからな。お前達は確実に殺してやる」
男が変身を完了させてそう呟く。
「僕達を依然と同じに思っていると痛い目にあうぞ。あれからあまり時間はたっていないかもしれないが、僕達は強くなった」
「ああ、逆に返り討ちにしてやるぜ」
「はははは。雑魚どもがいきがるんじゃない!」
男が地面をけった。ものすごい勢いで僕達に迫る。
以前は全く反応ができない速度であったが、今回はその速度をしっかりと感じとることができる。
男が剣をふるう。
僕はそれを剣ではらう。
「なに!?」
その隙に、タッタさんと和田君が男へと追撃をする。
男はそれを剣でいなす。
僕は即座に男の背後に回り込み、横一線で切りつける。
「ちぃッ」
避けられてしまったが、しかし僕の剣は男に確かにふれた。
かすり傷はつけてやったぜ。
「傷が・・・・。この私に傷が。ゆるさんぞ。」
男の邪気がさらに強くなる。
そして男の周辺にエネルギーが集中していく。
「何かくるよ!」
僕が二人に警戒をする。
刹那、男から何かが射出させた。
それは僕達3人に向かってそれぞれものすごい勢いで向かってくる。
「うわっ」
僕はそれを跳躍することでかろうじて避ける。
しかし、避けた先に男が先回りしていた。
「死ね!!!」
男が剣を振る。
それを剣で受けるも、
「な!?」
先ほどの一撃よりも重い一撃で僕はなすすべもなく吹き飛ばされた。
僕は地面に激突する。
男からさらに追撃がせまる。
僕はすぐさま立ち上がり、迎撃の態勢をとる。
男の鋭い剣戟が僕を襲う。
僕もそれをなんとか受け、こちらも剣を振るが当たらない。
「この前は本気じゃなかったかのか!?」
「は!?私が本気を出すわけないでしょう。今だって私にとってはお遊びですよ」
そう言って、男の剣速がさらに速くなる。
慣れない左手ではこれ以上の速度にはとても対応できない。
そして、ついに僕はその攻撃に対応できなくなり、剣を弾かれてしまう。
「くそ・・・・」
「確かに以前よりも大分強くなっておりましたが、それでも私の敵はありませんでしたね。死んでください」
男が剣を振りかぶる。
怒ったり冷静になったり、こんな情緒不安定な奴に僕は殺されるのか。まだペロンギさんを救えていないのに。こんなところで負けられない。
男が剣を振り下ろす。
「だから俺達のことを忘れるんじゃねぇよ!」
和田君が振り下ろされた男の剣を大剣で受け止める。
そして、そのまま弾き飛ばし、男に向かって大剣を振る。男はそれを余裕を持って避ける。
「別に忘れていませんでしたよ。ただ、雑魚だから気にしてなかっただけです」
「なんだと。このやろう!」
和田君が男に向かって飛びかかる。
和田君と男が剣をぶつけ合う。
「武井君、大丈夫?」
東堂さんが近づいてくる。
「大丈夫。ちょっと手がしびれただけだよ」
僕は落とした剣を拾おうとする。
東堂さんが先に拾って手渡ししてくれる。
「ありがとう」
僕は戦場に意識を集中する。
和田君が男とやりあっているが、大剣では男のスピードに対応するのが精いっぱいで攻められていない。
ん?タッタさんの気配がみつかない。
「あれ?タッタさんは?」
「タッタさんは和田君とすこし話たあとにピッピの木の方へ移動してたよ」
「そうなんだ」
何をしてるのだろう。
それよりも、男をなんとかしなければ。
男の速度はさらに速くなっていく。
「ともたけ!ひとりじゃ無理だ!早く来てくれ!!」
和田君が男の剣を受けながら悲鳴をあげる。
僕は急いで、二人の方へとかけつける。
そして、そのまま男へと向かって剣を振る。
男はそれをすり抜けるように避けて、僕達から距離をとった。
「こいつ、どんどん速くなってやがる。一体どれだけ速くなるんだ」
「大剣じゃあ分が悪いね。僕があいつとやりあうから、和田君は隙をついて攻撃して」
僕があいつに駆け出そうとすると、和田君がそれを止める。
「ちょっと待て」
「何?」
「お前がさっきあいつにつけた傷がもう治ってるんだ」
「なんだって!?」
確かにかすったとはいえ、剣で傷をつけたにもかかわらずあいつの動きはどんどんと早く鋭くなっていた。かすり傷とはいえ、剣の傷だ。多少は動きに影響がでてもおかしくない。
「さっきあいつが邪気を高めた時に、一瞬で治ってるのがみえたんだ」
「傷が治るのか?」
「あの身にまとう邪気が傷を治す可能性がある。だから半端な傷じゃあすぐに治ってしまうかもしれない」
「じゃあどうすればいい?」
「ああ、だから今タッタさんが確実にあいつを消滅できるように武器をとりに行った。」
武器?
「武器を変えたらなんとかなるの?」
「武器というか魔法器か。ピッピの木は人間達が見つけられないように保護されている。だから、ここには獣人達の宝が隠してあるんだそうだ。その中には邪気を払う魔法器があるらしい。そいつで邪気を払ってから攻撃すれば――――」
「何をごちゃごちゃ話してるんですか。戦いの最中におしゃべりなんてとんだアマちゃん達ですね!」
男が僕達に向かって一気に迫る。
しかし、その瞬間、天から光が男に向かって振りそそいだ。




