表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
23/55

少女の名前

 「ちょっと、武井君、顔がすごいことになってるよ!」


 夕食時、食堂に顔を出すと三上さんがあわててやってきてヒールをかけてくれた。


 「いや、階段で転んじゃってさ」

 「ここ大体どこもはしごだから本当だったら大事故だよ!?」


 はははと笑って誤魔化す。そして、心配そうにこちらをみていた少女の隣に座る。


 「パパ、大丈夫なの??」


 「ああ、大丈夫だよ。パパは頑丈だからさ」


 そう言って、ぽんぽんと頭をなでてあげる。

 まだ会って1日も立ってないのにパパと言われるのに慣れてきてしまった気がする。


 「あれ?みんなはまだ来てないの?」


 「もうすぐくると思うよ。先に食べてようか」


 僕達は先に夕食を食べ始めた。

 パンとシチューがシンプルだけととても美味しい。

 しかし、ヒールをかけてもらったとはいえ口の中が凄い染みる。


 そうこうしているうちに食堂に全員そろった。



 「ともたけ、お前凄い顔腫れてるけど何があったんだ?」

 「階段から落ちたんだって」

 「は?」


 和田君の問いかけに三上さんがシチューを飲みながらそっけなく応える。

 あれから何度も聞かれても僕がずっと同じ答えを返していたらちょっぴり機嫌が悪くなってしまったようだ。でもタッタさんと喧嘩してたなんて不安にさせそうだから言えないな。まぁ、仲直りというか結果的にはわかりあえたんだけど。


 「そんなことよりもさ」


 僕はそう言って、少女の頭をぽんぽんと叩く。


 「この子はどうしようか?」


 みんなが少女を見る。


 「この辺にはこの村以外ないそうだし、一体どこからきたんだろうな?武井がパパってこと以外結局なにもわかってないし」


 「いや、パパってことも間違ってるんだけどね」


 う~んと林君が腕を組みながら悩む。


 「この子がどこから来たかっていうのも問題だけど、名前がわからないと呼ぶ時とか大変よね」


 「仮に名前つけちゃおっか?」


 東堂さんが言うことに和田君が乗っかっておちゃらける。

 いやいや、ペットじゃないんだから勝手に名前なんてつけちゃだめでしょう。


 「じゃあ、武井君のことをパパって言ってるから、武井君の名前からとって“ともこちゃん”て言うのはどうかな?」


 さらに三上さんまで乗っかる。


 「ともたけの子供でともこちゃんか。いいんじゃないか?」

 

 「え?そんな勝手に簡単に安易に名前なんてつけちゃだめでしょう。それに僕の名前からとらないでよ、別に本当にパパなわけじゃないんだからさ」


 僕があわててつっこむも、


 「どうかな?ともこちゃんって呼んでいい?」

 「うん」

 「じゃあこれからともこちゃんね!」


 みんなわいわい騒いで僕の声には耳を貸してくれない。

 少女もなぜか嬉しそうにしている。


 いいの?記憶を取り戻した時が心配だ。


 「それで明日はこの子はどうしようか?村で預かってもらうしかないかな?」

 「ともこちゃん」

 「え?」

 「このこじゃなくてともこちゃんって呼んで」


 三上さんがじとーっとこちらを眺めながら呟く。


 「と・・・・ともこちゃんはそれでどうしようか」


 僕がそう言いなおすと、


 「パパと一緒にいる」


 少女・・・・ともこちゃんは僕の腕にぎゅっとしがみつく。


 「明日はちょっと危ない場所に行くからここで待っててくれるかな?」


 僕がお願いしても、しかしともこちゃんはかたくなに首をふる。


 「う~ん、どうしようか。さすがに明日は危険すぎるよな」


 「私が一緒にこの村に残るよ」


 三上さんがそう言って、ともこちゃんの方を向く。


 「私と一緒だったらいいかな?」

 「うーん、わかった。ゆかこお姉ちゃんと一緒なら待ってる」

 「いいかな?それでも」


 ダンジョンからあふれ出た魔物達がうろついている以上、ここの村も完全に安全とは言い難い。村の防衛戦力という意味でも1人位は残った方がいいのかもしれないけど。どうなんだろうか。

 

 「ダンジョンだけじゃなくて村を守るために戦ってる人もいるだろうし、ヒールができる人は貴重かもしれないな。今回は少数精鋭で一気に攻略する予定だし、それが一番得策かもしれない。」


 林君がそう言う。


 「明日はタッタさんと俺達の合計5人でダンジョンに挑戦することになるのか。20人で挑んで2人しか無事に帰ってこれてないんだろう?」


 和田君が不安そうに言う。


 「もう道はわかってるんだ。速効で攻略しちゃおうよ!」


 「そうだな!心配しても意味ないか。後は野となれ山となれだ!」


 こうして僕達は明日のダンジョンに向けて早めに部屋へと戻った。

 そして、僕は若干鈍い痛みを感じながら眠りについたのだった。



 翌朝、村の入り口に集まった。

 タッタさんの顔は綺麗に腫れが引いていた。僕はヒールをかけてもらったものの、まだ少し赤みが残っていた。


 「獣人ってのは傷の治りが早いんだよ」


 僕が不思議そうに眺めているのに気がついたのか、タッタさんがそう言ってきた。


 「そうなんですか。うらやましい」


 僕は顔をさすりながらそう返した。


 

 「よし!それでは言ってまいります」


 タッタさんがそう言って腕をあげる。

 それをうけて他の獣人達が歓声を上げる。


 「パパ~頑張ってね!」

 

 僕もその声をうけて腕を上げる。

 獣人達とともこちゃんの期待を一身に背負って僕達はダンジョンへと向かった。 


 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ