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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第2章:脱モブ宣言!
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獣人の国の危機

  僕達6人を、屈強な獣人の戦士が囲う。


 「もう一度問う。人間がこの場所に何の用だ」


 一番偉そうな中年の獣人が威嚇するように低い声でこちらを睨む。

 

 「僕達はあやしいものではありません。親しい人の呪いを治すためにピッピのしずくを探しています。この森に住む獣人がピッピの木への道を知っているということでここまでやってきました」


 僕は正直に応えた。ここで下手に嘘をついて信頼を得られないのが一番困ると思ったからだ。

 獣人はそのするどい五感で人の嘘を見抜くと言う設定もよくあるしな。


 「そうか・・・・それは大変だな。だが我らは手伝えん」


 「な・・・・なんでですか!早くピッピのしずくをもって戻らないと大変なことになってしまうのです。どうかピッピの木までお導きください」


 僕は泣きそうな思いを必死にこらえて懇願する。

 ここで獣人達の助けを得られなければ、この広大なキョンキョン大森林をくまなく探さなければならなくなる。それは途方もないことで、1年以上は確実にかかってしまうだろう。そんなに時間をかけてしまうとペロンギさんの体力がもたないかもしれない。だから、なんとしても獣人達の助けが必要なのである。


 「すまないが我らもそれどころではないのだ。こちらも大変な危機に見舞われていてな」


 これだけ頭を下げても助けてくれないなんて。

 頭の血管がぷっつんと切れた気がした。


 「この―――――」

 「危機というのは一体何がおきているのでしょうか??」


 切れそうになった僕を押さえつけ林君が前にでる。

 

 「む・・・・それはだな。この近くにダンジョンが出現しての。そこから魔物がどんどんと湧きあがってくるのじゃ。普通ならダンジョンの外にはあまりででこないんだがの。だからその魔物に対処するために人手を割くことができんのじゃ」


 中年の獣人が苦い顔をする。そうとうに困らされているのだろうか。

 僕は興奮した気持ちが鎮まってくるのを感じていた。林君と獣人達のやりとりを見守る。


 「それでは、私たちがそのダンジョンを攻略するので、そうしたら案内していただけないでしょうか」


 中年の獣人の目が開く。周りの戦士たちもざわざわとしだす。


 「しかし、そのダンジョンには我が村の戦士たちも挑戦したが無事に帰ってきたものはいないのだぞ。皆20レベルを超えた優秀なもの達だったのじゃが」


 中年の獣人が思い出したかのように悔しそうな顔をする。


 「実は僕達は異世界人なんです。仲間の数人がペニーニャ城の近くに出現していたダンジョンをレベル10代の時に攻略しています。私たちもきっとそのダンジョンをクリアしてみせましょう。」

 

 「おお、そなたらが最近噂になっている異世界人じゃったか。ガガル王国に出現した死霊の騎士団を討ち滅ぼしたという」


 「私たちの仲間がそれを成し遂げました」


 獣人達がよりざわざわとしだす。

 ダンジョン攻略なんて出来るのか・・・・僕達で。いや、これが僕達に残されてる唯一の道なのか。

 それならば恐れる必要はない。たとえどんな困難な道だとしても、ペロンギさんのために突き進むと決めたのだから。


 僕は、びしっと胸に手を当てて言った。


 「必ずや僕達でダンジョンを攻略してみせます。安心してください。だからどうかダンジョンを攻略した暁にはピッピの木まで案内をお願いします!」


 「わかった。そこまで言うのならば頼もう。どうかダンジョンを攻略してくれ。さすれば私たちは、お主たちへの協力を拒みはしない」


 周りの獣人達がおおおおと雄たけびを上げる。

 僕達が救世主に見えるのかもしれない。嘘をついているようで心苦しいが、きっとダンジョンを攻略して本物にしてみせる。


 

 

 僕達は中年の獣人の案内で木の上に立っている建物に移動した。


 「まずは自己紹介をしましょうか私はこの村の村長をしているマッチと申しますじゃ。この村は主にネコ科の獣人達で集まって集落をつくっております」


 マッチ村長の傍らにいる女の獣人が茶を配る。僕達はそれをうけとりながらそれぞれ自己紹介をした。


 「あの、ダンジョンの詳しい話を聞く前にちょっと質問したいことがあるんですけど」

 

 「なんですかな?」


 三上さんが僕達の間に座っていた少女の肩をだく。


 「村の外でこの子と出会ったんですけども、こちらの村の住人でしょうか?記憶がはっきりしないみたいで、名前もわからないみたいなんですが」


 村長がう~んとうなりながら少女を眺める。特徴的な角をじっくりと観察してから応える。


 「う~ん、この子はこの村の住人ではなさそうじゃ。私たちは主に猫科で集まっておるからな。猫科以外の獣人が暮らしていたら確実に覚えて居るはずじゃ。この立派な角はもっと違う種族の村からはぐれてきたのかもしれないの。しかし、この辺には私たちの村以外はないからどこから来たのか全く見当がつかんわい」


 「そうですか。わかりました」


 三上さんがしゅんとする。そんな三上さんを少女は心配そうに見つめている。

 この子は一体どこからやってきたのだろうか。


 「しばらく一緒に行動するしかなさそうだね」


 僕はぽんぽんと少女の頭をなでた。少女は嬉しそう表情をする。


 「それじゃあ、本題に入るとするかの」


 マッチ村長が表情をきりっとしたものに切り替える。

 僕達はごくりと唾を呑んだ。

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