大森林の中で
僕達はピッピの木があると言われる場所を目指してペニーニャ城の前に広がるキョンキョン大森林の中を突き進んでいた。以前ダンジョンに挑戦した森だ。キョンキョン大森林は大陸の西側全体を覆う大きな森である。森の中にある獣人の村にピッピの木への道を知る者がいるというので、そこに向かっていたのだった。
「よし、こっちだ!」
僕は左側を指さしてそう言った。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
じっと僕をみつめるだけでだれも何も応えてくれない。
頬を汗がつたう。
ドキドキ・・・・
「こっちかな?と思うんだけど・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
じとーっという効果音が聞こえてきそうな気がする。
わかりました。みとめましょう。
もう限界ですね。
「すみません。どっちに行けばいいかわかりません」
「なんか先頭をすごい自信満々に歩いてるから道わかるのかな!って思っちゃったじゃねぇかよ!」
「なんで道とかもない森の中にある村をみつけられると思ったの?馬鹿なの?」
「だから私は神宮寺君達とガガル王国までは一緒に行って案内人の人と合流するべきだって言ったのに!」
「もう私疲れちゃったよ・・・・先行きが不安すぎて」
あふれだす不満。
しょうがないじゃないか。テンションあがりすぎてなんとかなると思っちゃったんだから。
「ごめんなさい。直線距離で進んだ方が時間が短縮できると思って。早くペロンギさんを救いたくて・・・・」
「気持ちだけでなんとかなるわけないだろ。ちょっとからまわりしすぎだろ!」
「結局森の中で2日間も過ごしてるんだったら、ガガル王国によってでも確実に進んだ方が早かったんじゃない?」
「ごちゃごちゃうるさいな!だったらそっちで色々決めればよかっただろ!」
「誰もお前に頼んでないだろうが!勝手にどんどん話を進めたのはともたけだろ!」
和田君ととっくみあいになる。
「もうやだ・・・・なんでこんなことになっちゃったのかなぁ。」
三上さんが疲れたように呟いた。
そう、僕達は広大なこの大森林の中で絶賛迷子中なのであった。
「しょうがないから現状の確認と、これからどうするか話し合おうぜ」
林君の言葉で僕と和田君もとっくみあいをやめる。
みんなで輪になってこれからのことを相談する。
「とにかく今はピッピの木への道筋を知っているという獣人の国を目指してるわけだろ?迷子にならなければ今頃ついてるはずなわけだから、少なくともペニーニャ城に戻るよりは近いはずだかこの辺を探しまわるしかないんじゃないか?」
「私はとにかく一旦ペニーニャ城に戻るべきだと思うわ。このままうろうろしていても現在地が全く分からないんだから無駄でしかないと思う」
「でも、それじゃあこの2日間が本当に無駄になっちゃんじゃない?」
「お前がそれを言うなよ!またぴりぴりしちゃうだろ」
険悪なムードになりかけたが、林君がちょっと待てと僕達を制した。
そして話し始める。
「いや、でも実は進みながら地図とにらめっこしてたんだが、あながち間違ってたわけじゃないんだよな。俺の地図の見方が間違ってなければ、獣人の国はこの辺のはずなんだよ」
「なんでそれをもう少し早く言ってくれないの!そしたらピリピリしないですんだんじゃないの?」
僕が額に血管を浮かべながら尋ねると、
「いや、わるいわるい。でもずっと見てたわけじゃないからな。確証があるわけではないんだよ。余計混乱するかもしれないからこうして話し合いになるまでは黙ってたんだよ」
なんか釈然としない気もするけど、自分が一番悪いからここらで黙っておこうか。
「それじゃあ今日1日探してみて、みつからなければペニーニャ城をに戻りましょう」
「俺もそれが一番ましだと思う」
こうして、僕達は今日一日獣人の国を探すことになった。
なんとかみつけて、みんなのこの酷い視線をなんとかしよう。
汚名返上しないとこれからやってけない。
「じゃあ、行こうか!」
「「「「お前は後ろを歩けよ(歩いてよ)!」」」」
「はい・・・・」
僕はみんなの後ろをとぼとぼと歩く。
なんだか自分の信じた道を進み始めたら状況が悪くなってる気がするのだけれど。
僕は森だけじゃなくて人生の道にまで迷っているのだろうか。
しばらく進んでいると、すこし開けた場所にでた。
そこには綺麗な花が咲き誇っていた。
「きれい・・・・」
三上さんと東堂さんが目を輝かせる。
近くの花に近づいて臭いをかいだり眺めたりしている。
僕も足を踏み入れようとすると、花畑の真ん中に人影があることに気付いた。
「ん?真ん中に誰かいない?」
「確かになにかいるような」
和田君にも同じものが見えたので、僕は声をかけてみることにした。
「すみませ~ん」
僕が声をあげながら近付くと、その人影はびくんとしてこちらをみる。
そこには少女がいた。年齢は12歳ほどだろうか。まだまだあどけない感じが残りつつも、大人の雰囲気をまといはじめた美しい少女であった。ちょっぴり普通と違うところは頭から黒い大きな角が2本生えているところだ。しかし、その美しさにはいっぺんも影をおとさない。むしろそれが良いアクセントになっているように思う。そしてその将来は絶世の美女になるのではないかと思わせる少女の一番奇妙な点は、何も身につけていないところだった。角を生やした真っ裸の美少女がそこいたのであった。
「な・・・・」
僕が息をのむと、少女はこちらにてとてととやってきて、
「パパ??」
と呟いたのであった。




