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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第1章:モブの異世界生活
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物語の始まり

 僕は乱痴気騒ぎからこっそり抜け出して、ペロンギさんが治療を受けている病室の前にやってきた。病室の扉に手をかける。


 「待ってください」


 涼宮さんが僕を止める。


 「どうして止めるんですか?ちょっと様子を見に来ただけなんだけど」

 「それは・・・・」


 涼宮さんが応えずらそうにうつむく。


 「まだ目覚めていないんですか」

 「・・・・・・」


 和田君達の反応からずっと気になってはいた。体の怪我は治って後は目を覚ますのを待つだけのはずなのに、応えずらそうな表情をする。心がざわつく。ペロンギさんは本当に無事なのか。


 「入るね」


 そう言って、僕は病室の扉をあけた。

 そこには胸から黒い瘴気のようなものをあげながら苦しむペロンギさんの姿があった。


 「ペロンギさん!!!!」


 僕はペロンギさんのもとへと駆け寄った。


 「これは!?どうして!?怪我は治ったんじゃなかったのか!」


 「体の怪我は治っているんですけれども、私の杖をもってしても体をむしばむ瘴気を消すことはできなかったんです」


 「そんな・・・・」


 僕はがくりと膝をついた。

 そして、そのまま自分の無力さを嘆きつづけた。


 

 

 「おい、ともたけ!」


 病室の扉がいきおいよく開け放たれた。

 和田君を筆頭に、東堂さんと三上さんと林君も入ってきた。


 「みなさん・・・・」


 涼宮さんがぼそりとつぶやく。

 僕はみんなが入ってきたのを確認するだけで声はださなかった。

 ただただペロンギさんの近くで立ち尽くしていた。

 

 「おい、そんなに気負うなよ。これはお前のせいじゃないんだから」


 和田君が言う。

 いや、これは僕のせいだ。

 もしかしたら僕が残らなければこんなことにならなかったかもしれない。


 「そうよ。悪いのはあのわけのわからない不気味な男なんだから。」


 東堂さんが言う。

 それはそうかもしれない。

 でも、神宮寺君みたいな人が近くにいればペロンギさんは傷つかなかったかもしれない。


 「ペロンギさんはきっとよくなります。だからそんな顔しないでください」


 三上さんが言う。

 こんなに苦しんでいるのに。

 本当によくなるんだろうか。

 既にヒールはして体はよくなっているんだろう?


 「そうだ。以前読んだ本にどんな病も治すというしずくがこの世界にはあるらしい。それにこういう呪いのようなものは術者を倒すことで治せたりする事例もあるらしい。」


 林君が言う。

 そんな都合のいいことが本当にあるのか?

 下手に期待して裏切られるんじゃないのか?


 みんなの言葉が右から左に流れていく。

 こうなってしまった結果はどうしようもないのだ。いまさらペロンギさんが苦しまなくなるなんてことはない。僕のせいで。

 僕がよけいなことをしたばっかりに。

 僕が力ないばっかりに。


 「く・・・・いい加減に目を覚ませよ!」

 「がっ!?」


 和田君が僕のほほを思いっきりなぐった。

 どさりと僕は壁際に倒れこんだ。

 

 「お前がそこにつったててペロンギさんがよくなるのかよ!こうなってしまった以上、どうすれば早くよくなるようにできるかを考えるしかないだろうが!そうやっていつまでもめそめそしてるなよ!!」


 く・・・・そんなことはわかってる。

 わかってるけど。


 「ペロンギさんのことが好きなんだったら、どんなことをしてでも治せるように行動しろよ!泥水啜ってでも良くなる道を探せよ!」


 僕だってできるならそうやって自分の思うとおりの行動をしたいよ・・・・

 でも、僕なんかが行動したってどうにかなるわけないんだ。

 神宮寺君みたいな人が取ってきてくれるんじゃないか。 


 「俺達はどんなことだってできるんだ!この国に見放されても諦めずに特訓を積んで、今回の防衛戦では立派に役に立てたじゃないか!」


 確かにゴブリンロードを倒したことで冒険者の方たちには感謝された。

 胴上げなんて初めてされたけど、すごい気恥かしかったな。めちゃくちゃ嬉しかったけど。

 

 「俺達が諦めなきゃどんなことだってできるんだよ!だから、立って、自分の信じた道を胸を張って進めよ!」


 自分の信じた道。

 自分の進みたい道。

 僕なんかが頑張ったところで・・・・ 


 「周りからどう思われるかじゃない!自分がどうしたいかだろ!!大切なのはそれだけだ!」


 僕がしたいこと。

 ペロンギさんを助けたい。

 ペロンギさんに好かれたい。 

 僕ができることは・・・・


 僕は立ちあがった。

 

 「僕はペロンギさんを助けたい!」


 そのためだったらどんなことでもしよう。

 お前なんかがそんなのことしなくてもと言われようが、もっと適人がいようが関係ない。

 僕がペロンギさんを助けるためにできることは、助けになると思うことはどんなことでも挑戦しよう。

 必要だったら魔王だって倒してみせよう。

 

 そして今できることは、


 「林君!さっき言ってたどんな病も治すしずくについて教えてください!」


 突然元気になって立ちあがった僕に、一瞬驚いた顔をした林君だったが、にこっと笑って、


 「わかった」


 と呟いた。


 みんなもにっこりと笑って僕の肩を叩いてくれた。



 ペロンギさん。

 絶対に助け出してみせます。

 僕はもう誰かに任せてうつむくだけでいるのはやめます。 


 だから、どうか、ペロンギさんも負けないでください。

 





 ペニーニャ城防衛戦から三日がたった。

 僕達はピッピのしずくというどんな病も治す薬をみつけだしペロンギさんを救うため、この町を旅だつことになった。


 現在は、門の前の広場に集まっている。


 和田君は“黒き鉄壁のペリルギ”のみんなと別れをつげて、林君はピッピのしずくに関する本をもって、東堂さんと三上さんはそれぞれヒールステッキをもらって、そして、僕はヤンキーでありNEET軍団の隊長でもある飯室君と一騎打ちをしてお互いエールを送りあいこうしてここに集まった。

 

 


 「ついに出発だね」


 僕が呟く。

 それに対してみんながうなずく。

 

 僕達は、僕達の意志で、冒険にでる。

 国の支援はもちろんない。


 でもきっとうまくいく気がする。

 自分の意志で物語を紡ぎ始めた僕らはもうモブなんかじゃない。

 立派な主人公のはずだ。


 いや、それは語弊があるか。

 みんなは既にそれぞれの物語の主人公だった。

 自分の意志で選択し、行動していた。

 僕だけが、唯一、流されるだけのモブだったんだ。

 しかし、もうそれも終わりだ。  

 これからは僕も自分の意志で選択していく。

 自分の心に正直に行動していく。


 

 僕はペロンギさんと笑いあえる未来を目指して一歩を踏み出した。

 


 きっとこの先にはたくさんの困難が待ち受けているだろう。

 しかし、それでもきっと、僕はそれを乗り越えて見せる。


 僕の物語は始まったばかりだ。

 

 

読んで頂いてありがとうこざいます。

何人かの人にブックマークしてもらえてすごい嬉しいです。



ここまで毎日更新してきたのですが、これからは最初に書いたとおり2日に1回位になるかもです。

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