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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第1章:モブの異世界生活
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ペニーニャ城防衛戦:後編

 今この瞬間はゴブリンのボスを倒すことに専念する。ペロンギさんを守れなかった悔しさと、戦闘への恐怖感や高揚感、ぐちゃぐちゃだった心の中がすっと軽くなる。


 僕達は普通のゴブリンを蹴散らしながら進む。

 そして、一瞬でゴブリンのボス、ゴブリンロードと思われる者の前に到着する。ゴブリンロードは近くでみるといっそう大きく感じる。普通のゴブリンは僕たちの肩まで位の大きさしかないが、こいつは僕達がすこし見上げないといけない位の大きさであった。腕も太く力強い。地球でこんな体型の人が近くにいたら絶対に目を合わせられない位恐ろしいだろう。しかし、今は違う。


 「ゴギャ!?」


 突然目の前にやってきた僕ら二人にゴブリンロードが驚愕する。


 「行こう!和田君」

 「おう!」


 僕達二人は剣を降る。

 お互いが極限まで高めた集中力をもって降る剣は、単純に二人でふる剣よりも威力を発揮する。

 ここに来る前から一緒に行動し、ここにきてからは一緒に剣を降り続けた仲だ。おそらく、お互いがお互いに負けまいと努力してきた。だからこそ、お互いの行動が声を出さずとも伝わる。


 ハイオークの時は動揺があってがっちりとハマらなかったが、今はしょっぱなからゴブリンロードを倒すことに集中できている。

  

 二人がポテンシャルを最大限発揮した攻撃を、しかしゴブリンロードは見事に受けきる。

 このゴブリンロードもやはりただものではない。


 僕が横腹へと剣を走らせるも、それをゴブリンロードは盾でいなしそのまま無理のない動きで和田君の大剣をはじく。和田君の大剣の反動で一瞬体が硬直するが、その隙をついた僕の一撃を崩れた体勢のまま剣でいなす。そして、はじいた動きのまま回転し、和田君へと切りつける。和田君はそれを体をそらすことでよける。


 僕達は一進一退の攻防を繰り広げた。


 お互いがお互いにダメージを与えることができない。

 硬直状態がしばらく続いた。

 

 しかし、それだけでもこの戦況では大きな意味があった。


 僕たちの後ろで戦っている冒険者の声が大きくなる。威勢のいい声が響き渡り始める。 


 僕達がゴブリンロードを引きつけている間に、こちらの戦線が持ち直してきたようだ。

 指示するものがいないゴブリンなど、冒険者をやっている者たちの敵ではないのだ。


 「ともたけ、そろそろけりを着けよう」


 そういって、和田君は大剣を大きく振りかぶる。

 防御を捨てた最強の一撃を放つつもりだ。


 「わかった」

 

 僕は和田君のその一撃を全力でサポートする。

 僕は1人でゴブリンロードへ向かって剣をふった。さきほどまで2人で攻撃をしていても対処されていたわけで、僕1人の攻撃などゴブリンロードはたやすくいなしてくる。しかし、僕はそれでも剣を降り続ける。わずかな隙をつくるために。


 「うぉぉぉぉおおおおおおお」


 上に下に横に後ろにあらゆる方向から剣をふる。

 僕の縦横無尽の斬撃によってわずかにゴブリンロードが一瞬体勢を崩す、和田君はその隙を見逃さずに、大剣を降り落とした。ゴブリンがその一撃を片手でそらそうとするが、そらしきれずに、体に傷が入る。


 「ゴギャーーーーー!!!!」 


 ぐらりと大きく体をよろめかしたゴブリンロードに向かって、僕はとどめの一撃みまう。


 僕の一撃によって、ゴブリンロードの体と頭が分離した。

 ゴトっと、ゴブリンロードの頭が地面に落ちる。体からはぷしゅーと霧のようなものが噴出する。


 「おおお~。あいつらやりやがったぞ~!!」


 近くで戦っていた冒険者が声をあげる。

 それにつられて周りの冒険者たちもおおおおおと雄たけびをあげる。


 「やったな、ともたけ!」 

 「ああ!今回は僕がとどめをささせてもらったぜ」

 「協力プレイのたまものだろ!ここでそんなこと言うなんてみみっちいぞ」

 「冗談だよ」


 僕達はお互いにハイたっちをした。




 ゴブリンロードを倒した僕達は、一気に形勢を逆転させゴブリン達を殲滅していく。

 あらかた戦況が落ち着いてきたころ、戦場の真ん中でまばゆい光と衝撃が発生した。

 そして、騎士団の大きな歓声が響きわたる。


 「勝った・・・・のか?」


 ピピンさんが言う。


 「勝ったんだよ!魔物達が森に逃げていく」


 わずかに残っていたゴブリン達が森へと逃げていく。

 他の場所に目を向けても、同じように魔物が逃げていくのが見えた。


 「おっしゃー!勝ったぞ~」


 和田君が雄たけびを上げる。

 僕達と周りの冒険者も一緒になって雄たけびを上げた。


 

 当初の作戦よりも早く戦争は決着した。

 あとから聞いた話だと神宮寺君と首なし騎士の戦いは激しいものであったらしい。近くにいた騎士達は助太刀に入ることもできなかったようだ。もしも神宮寺君と涼宮さんが帰ってきていなければ、この結末はまた違ったものになっていたかもしれない。それ位に絶望的な戦闘力であったようだ。この世界の戦争では1人の強者によって大きく戦況が傾くこともある。今回の神宮寺君達がまさにそうだろう。

 しかし、まぁ、今回の戦闘では確かに神宮寺君達が最も大きな活躍をしたかもしれないが、僕達が一線を支え切ったことも大きな要因の一つになっていただろう。戦闘の後の宴では、僕たちの近くで戦っていたらしい冒険者たちが集まってきて、僕と和田君は胴上げをされた。

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