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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第1章:モブの異世界生活
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図書館で療養

 僕達は誰一人欠けることなく、ハイオークを倒すことができた。無事に戻った僕らは、ハイオークと遭遇したことを冒険者ギルドへと報告した。平均15レベルほどの僕らがハイオークを討伐したことに職員の人も半信半疑であったが、ハイオークがつけていた籠手を見せることでなんとか納得してもらうことができた。また、籠手はそれなりの値段で回収してもらえ、今回の依頼と籠手代でなんと金貨3枚ももらうことができた。まぁ、命をかけた代償が金貨3枚といわれると安いもするけどね。ピピンさん達とも仲良くなり、また何かあったら一緒に狩りに行こうと言われた。簡単なものなら是非と言っておいた。


 また、今回のようなケースは他にも起きているようで、魔王が発生する前兆なのかこのあたりは少し物騒になっているようだ。



 そんなこんなで翌朝、僕は冒険者ギルドの治療院にやってきていた。

 ハイオークの腕を盾で受けた際、どうにも左腕が骨折していたようで、真っ赤に腫れている。戦っている時はアドレナリンの影響かそれほど痛くは感じなかったのだが、こうして一段落するとずきずきと痛んでしょうがない。ちなみに依頼の途中でおった怪我の場合格安で治療してもらえる。

 一つの部屋にやけに長い行列ができているのはどういうことだろう?優秀な医者でもいるのかな。


 「武井ともたけさん、2番室へどうぞ」


 待合室で待っていると、名前を呼ばれる。

 この辺は地球とそんなに変わらないのだな。


 部屋に入るとそこには東堂さんがいた。


 「武井君、どうしたの!?その腕は」

 「実は和田君の狩りを手伝ったら思ったよりも大変でさ」


 僕が笑いながら応えると、


 「笑いごとじゃないででしょ。ここに来る冒険者の中でも群を抜いて酷いよ」


 東堂さんは少し怒ったように言う。

 僕がしゅんとすると、しょうがないなといった顔を浮かべて、杖を左腕にかざす。

 

 「ヒール」


 そう唱えると、腕を光が包み込み、痛みが和らいでいく。


 「おお、すごいな!魔法みたいだ」

 「魔法だからね」


 東堂さんが笑いながら応える。


 「どういう原理なの??」

 「大気中の魔力をこの杖を使って対象者の治癒力に変換?するらしいよ。他の魔法器と違って、使用者の体力も使用するから疲れるんだよね」

 

 ふむ、普通の魔法器とはちょっと仕組みが違うんだな。

 他の魔法器だったら使用者はなんにもデメリットがなく使用することができる。


 「僕のためにありがとうございます」

 「仕事だからね」


 なんだかちょっぴり悲しい応えだけど、僕は気にしないぞ。

 照れ笑いとかしてくれればよかったのにとか思わないぞ。


 「今日と明日は安静にしてね。仕事探しは明後日から頑張ってね」


 「はい」


 帰り際にちょっぴりとげのある言葉を受けて僕は治療院を後にした。



 どこに行こうか、何をしようか。

 安静にしてなければいけないから、剣をふることもできない。

 体を動かさないとどんどん悶々としてしまうのに・・・・


 僕が悩みながら歩いていると、目の前には図書館が。

 確か林君が司書見習いみたいなことをしていたはず。


 「よし、今日は林君を冷やかしにいくか」


 異世界にきてから初めて図書館へと足をすすめた。


 

 「いらっしゃいませ」


 図書館に入った僕を爆乳の司書さんがお出迎えする。

 こんな素晴らしいおっぱいはじめてみた・・・・


 僕が司書さんの爆乳に気を取られていると。


 「すみません、入館料を頂いてもいいでしょうか?」


 何も反応を示せないでいた僕に、爆乳司書さんが入館料をせびる。

 この世界の図書館は入館料を取るのか・・・・

 僕は司書さんに値段を確認し、財布からお金を取り出す。


 「それでは、ごゆっくり。本を傷付けないようお気をつけください」


 銀貨5枚もした。

 最初に泊まっていた宿の一泊当たりの料金と同じだ。今止まっている格安の宿よりも高い。

 この世界では本はかなり貴重なんだろうな。持ち出しも禁止のようだった。


 僕は林君をさがしてうろうろとする。


 しかし、広大な図書館だ。

 町に本が普及していてない分、全部ここに集めたような感じなのだろうか。


 すると、林君をみつけた。

 

 「おーい、はや----」


 僕が声をかけようとすると、僕よりも早く女の子が林君に声をかけた。

 僕はとっさに本棚の陰に隠れる。


 む、あのこは委員長ちゃん。

 異世界に来た時に、私たちでは役に立てないと言っていた子だ。

 三つ編みのメガネっ子である。実際に委員長もやっていて、みんからも委員長と呼ばれているとかいないとか。僕は正直本名をしらない。


 委員長ちゃんの表情が明るい。あんな可愛い表情をするこだったのか。しかし、一方で林君はクールだ。

 絶対あの子、林君にぞっこんだよ。絶対そうだよ。

 楽しそうな委員長ちゃんの邪魔をするのは忍びなくて、僕はそっとその場を離れた。


 そして、林君の冷やかしをすっかり忘れて読書に夢中になる。

 簡単なおとぎ話みたいな本や、図鑑なんかを読んでみた。

 もともとあまり本を読む方ではなかったけど、おとぎ話なんかは興味深かった。


 あと、モンスター図鑑によるとハイオークってのは危険度Bランクで、レベル25で複数討伐が基本となると書かれていた。単体だとレベル30はないと倒せないらしい。

 いやはや、よく誰も死なずに倒せたものである。


 

 十分に本を堪能したあと、僕は林君に挨拶でもしてかえろうかと、またもうろうろしていると、爆乳司書さんと一緒に本を戻している林君を発見する。


 今度の僕は安易には近づかない。

 物陰からそっと二人の様子を観察すると、林君が高いところの本を戻してあげているところだったようだ。もしやもしやと僕はそっと爆乳司書さんの表情を覗き込むと、やはりというかなんというかどこかうっとりとしているように見えた。そして、そんな林君と司書さんのやりとりを遠くの方で苦い顔をして眺めている委員長ちゃんをみつけた。

 さすが、僕たちのチーム一のイケメンだ。


 

 僕は下唇をかみしめながら、そっと図書館を後にした。

 傷の影響か、なんだか胸が苦しい気がした。



 

 


    

 

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