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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第1章:モブの異世界生活
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初めての死闘

 吹き飛ばされて体勢が整わないピピンさん達に向かって、オークが追撃をする。

 大木を大きく振りかぶって振り下ろそうとする。


 「おら~!!!」


 オークの一撃を和田君が横から大剣を当てることでなんとかその軌道をそらすことに成功した。

 するどい音をたてて地面をえぐる。僕はとっさの出来事に体を動かすことができなかった。和田君がもしも今の一撃をそらすことができなければ大変なことになっていたかもしれない。


 オークは標的を和田君に変え、またも大木を振りかぶる。

 和田君は先ほどの一撃で防御態勢がとれていない。


 今度は、当たれば大惨事を免れないオークの一撃をそらす人がいない。

 ----僕を除いては。


 今動けば、和田君を助けられる。

 このままビビっていられるか!


 僕は無我夢中でオークに向かって駆け出した。



 「うお~!!!!」



 オークが僕の存在に気付き、ぎょろりと顔をこちらに向ける。

 そんなオークに向かって僕は剣を走らせる。

 

 剣がオークの顔面を切りつけようというその時、オークは大木を捨て、腕で剣をうける。

 すると、カキーンという音とともに剣が弾かれた。


 「な!?」


 一瞬戸惑った僕に向かって、オークが腕を振り回す。

 とっさに盾でガードしたものの、僕はその衝撃を受け止めることができずにふっとばされた。


 「がはっ」


 まるでバイクが衝突したかのような衝撃であった。

 全身の骨がぼろぼろになってしまったかと錯覚する。


 しかし、まだどうにか立ちあがれるようだ。

 これもレベルの恩恵か。



 「そ・・・・そんな、なんでこんなところにハイオークがいるんですか!?」


 体勢を整えつつあったペーダさんが驚愕の声をあげる。

 ハイ・オーク??


 「これは俺たちには荷が重い相手だぜ・・・・」


 ピピンさんまでもが弱音を吐く。

 ハイオークというのはどうやらオークよりも上位な魔物のようだ。

 確かに、さっきのオークよりも巨大だし、ムキムキの腕には籠手まで装備されている。


 「だけど、冷静に対処すれば戦えないわけじゃないだろ!」


 ペッぺさんのその言葉に、


 「「そうだな(ですね)!!」」


 ピピンさんとペーダさんも同意する。

 ピピンさん達の鉄壁の盾が展開される。


 「さっきと同じ要領で行くぞ!!俺たちがあいつの隙をつくるから、お前達がその隙をついてくれ!!」


 「「はい!!」」


 僕と和田君が返事をする。

 それに合わせるかのように、ハイオークがピピンさん達に突撃する。

 

 しっかりと体勢を整えたピピンさん達であったが、その威力を抑えることはできず、直撃を受けた人が2mほど吹き飛ばされる。おそらくかなりダメージを負っているはずだ。僕は決死の覚悟で作り上げてくれたチャンスをものにするべく駆ける。


 今度は冷静に、しかし全力で剣を降る。

 僕が剣を降ると当時に和田君も大剣を振りかぶる。

 僕の一撃をハイオークは籠手で受ける。


 キンっと甲高い音が響き渡る。


 防がれるとわかっていれば、次の手に移るだけだ。

 僕はそのまま体をひねるようにまわし、無防備な足元に向かって切りつけた。


 「ぐぎゃあああああ」


 確かな手ごたえを得る。

 ダメージで体勢を崩したハイオークに向かって、和田君が大剣を振り下ろす。

 しかし、ハイオークは体勢を崩した状態で和田君の大剣の腹を殴って軌道をそらし、僕に殴りかかってくる。


 僕とハイオークの間に漆黒の鎧が割り込む。

 そして、僕の代わりにハイオークの一撃をうけ吹き飛ばされた。


 「ぐはっ・・・」


 「な!?大丈夫ですか!?」


 僕はとっさに声をかける。


 「俺達のことは気にするな!!!ハイオークに集中しろ!!!!!」


 無事であったもう一人の声でハイオークに意識を戻す。

 しかし、一瞬意識が離れていた隙にハイオークが迫ってきていた。


 振り回した腕でさえあれだけの衝撃であったのだ。突進されたらたとえ盾で防いだとしてもただではすまない。僕が死を意識した時、


 「とりゃー!!!」


 和田君の一撃がハイオークに直撃する。

 さすがのハイオークも大剣の威力に踏ん張りきれずに吹き飛ぶ。

 

 しかし、肩から血を流しながらもハイオークはまだまだその闘士は衰えていない。


 

 「く・・・・全力の一撃だったんだが」

 

 和田君が苦い顔をする。しとめるつもりの渾身の一撃だったのだろう。

 確かにさきほどのオークだったら一刀両断できていたかもしれない。


 

 一度の攻防でこちらは二人ダウンし、ハイオークには2太刀浴びせたもののまだまだ余力を感じる。



 こちらの分が悪い。

 しかし、諦めるわけにはいかない。


 諦めるってことは死ぬということなのだから。



 ハイオークがまたも突撃の姿勢をとる。

 僕はハイオークの突撃に合わせて剣を当てるべく、意識を集中させる。

 

 襲ってきた爬虫類をペロンギさんが切り伏せた時のような美しい一撃をみまうんだ。


 

 ザッ!!


 ハイオークが地面を蹴る。

 僕が切りつけた影響か、はたまた極限まで高めた集中力の影響か、最初の時よりも遅く感じる。


 これならば!!


 僕はそのハイオークの突進に合わせるように足をすすめる。

 一瞬で懐に潜り、そして一気に剣を降る。

 ハイオークはまさか突進にカウンターを合わせてくるとは思っていなかったらしく、僕の一撃はハイオークに深い傷を与える。


 ぐらり、とハイオークが決定的に体勢を崩す。

 その隙に、和田君が渾身の一撃をはなつ。


 和田君の一撃がハイオークの脳天に直撃する。

 そして、そのままどさりと倒れ、体から霧が噴出した。


 「「うおおおおおおおおおお!!!!」」


 僕達は初めての死闘を制した。

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