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赤錆色の霧  作者: 機乃 遙
ブルー・マンデー
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ブルー・マンデー

『二体のフォグ、エガートン採石場に出現』

 昨日、エガートン・コーディアルに二体の巨人が出現した。警察の調べによれば、うち一体は、先日殺害された緑川シゲルによって密造されたものとのこと。

 緑川シゲルは、霧の向こうについて研究をしていた。しかし十四年前、不祥事を起こしてラリュング大学を除籍処分に処されている。今回現れたフォグは、それら一連の研究の結果であると推測されている。

 また、フォグのコントロール・ユニットとなっていたヒューマノイドも、同じく霧の向こうの技術であると考えられている。ヒューマノイドは、緑川の実子である緑川ミナさんを模して修復された。このヒューマノイドの暴走によって、緑川ミナさんを含む、少なくとも三人が殺害されている。警察は他に被害者がいないか調べを進めている。


 グローブ特別報道班の調査の結果、緑川の手記に「自分の研究に自信を失った」「生きている理由がわからない」「娘だけが自分の生き甲斐だったのかもしれない」などの記述を発見。また、「ミナが娼婦になっていると聞いた。耐えられない」「ぼくのミナはあんなじゃない」「ぼくのミナが必要だ」などという記述も確認できた。緑川は、自分の理想の娘を造ろうとした結果、殺人機械を野に放ってしまったのではないだろうか。

 捜査はなおも続けられているが、現段階では、緑川シゲルへの出資者など不明な点も多い。警察は、緑川以外に犯行を計画・資金提供した者がいるとし、捜査を続けている。

 また、青色の巨人と同時に発生した赤色の巨人については、いまだ不明のままであり、警察も手を焼いている。〈担当記者:マリー・ライアル〉


     *


 ラリュング・グローブ紙の一面トップ。そこには、マリーの書いた記事が載っていた。わたしが情報を与えた通り、彼女はすばらしい記事を書いてくれた。

 わたしはそんな素晴らしい記事を、自宅のリビングで読んでいた。起き抜けのナイトガウン姿で、ニナの入れたブラックコーヒーを飲みながら。

 一連の殺人事件を起こした犯人は、緑川シゲルが造った『アオイ』というヒューマノイドということでカタが着いた。霧の向こうの機械人形がラリュングに紛れ込む、という至ってふつうのケースであると処理されたわけだ。

 後々になってわかったことだが、研究への自信を失った緑川は、娘の美貌にすべてを求めたらしい。アオイにそれだけの魅力があることは認める。だが彼の場合、娼婦となり、年老いていく娘を見るのが耐えられなかったらしい。その結果、彼は娘の姿をしたロボットを作り上げた。自分の研究分野である、霧の向こうの技術を用いて。

 やつは自分の研究に自信を失っていた。だが、結局は彼の技術が一連の事件を引き起こした。考えてみれば、大した男だと思う。

 ともあれ事件は解決した。暴走した『アオイ』が蒼井ミナをストーキングしていたということもわかり、また誘拐されたミナの祖母も解放された。

 しかし不可思議なのは、『アオイ』の一連の行動だ。彼女は、名実ともにアオイになろうとしていた。そうならないために生み出されたマシンであるというのに。『アオイ』は、彼女のオリジナルを知るために、オリジナルをつけ回し、その血族を誘拐するまでに至った。何が彼女をそうさせたのだろうか。殺人欲求……この街の全員を殺してしまいたいという願望からだろうか。だけども、しっくりこない。それに、殺しの手口もそうだ。血の腸詰め(ブラックプディング)。あのような芸当は、たしかに霧の力を使えばたやすく行えるだろう。だが、機械があんな執念の色が見える殺人を犯すだろうか? まるであの手口は、第三者の殺人願望が乗り移ったかのよう。機械に刷り込まれた殺人欲求だけでは、どうにも説明がつかない。

 それに一番謎なのは、緑川のどこにこれだけのモノを造る金があったのか、ということだ。

 警察も言っていたが、わたしもまたこの事件には真犯人がいると考えている。緑川に金を与え、フォグを造らせた真犯人が……。

 ――よそう

 わたしはホロ・タブロイドを閉じ、コーヒーを啜った。ソファーに背を持たれ、うつろな考えを捨てるように。

 わたしに与えられた事件は一段落した。蒼井ミズキは再び祖母と母との生活を続けている。依頼は解決したのだ。

 しかし、それでもわたしの中には心残りがある。アオイ――彼女の美貌は、結局どこまで人を魅入らせたのだろう。わたしも、その一人だったのかもしれない。まったく、面倒きわまりない事件だった。

 これだから月曜は嫌いなのだ。


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