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友達  作者: 八頭葛
第二章
3/4

③_______


「私は裏サイトを直接確認するために、このメールを送った人物に裏サイトの情報を教えてもらった。それで確認したところ、推測通りだったよ。一番古いスレッドに書いてあった。しかもスレッドのテーマからして、このメールについてだったよ。つまり一番最初のレスに、このメールの文章が書いてあったんだ」

「つまり、最初に書いてあったから、これだけ広まったってことですね」

「いや、そんなに単純な話ではないよ。そもそも、このスレッドは最初見向きもされていなかったようだ。当然だろうね。いきなりこの文章を見て、面白いと思うわけもない。無視して次のスレッドに行くだろう」

「そうですね。面白くないとスレッドは盛り上がらないし、メールが広がるわけがないですからね」

「そうだ。しかも最初はこの裏サイト自体、広まるのが遅かったようだ。だからこの文章を目にする人間も極端に少なかった。――でも、一ヶ月前くらいから、急にスレッドへのレスが盛んになってきたんだ。裏サイトが急速に広まり出したんだろうね」


「何故ですか?」

「それは分からない。専心的な誰かが広めたのかもしれない。だが、理由なんてどうでもいいんだ。結果が重要なんだよ。裏サイトが広まった結果、この文章を見る人間も急激に増えた。恐らくこの頃から興味本位でメールを流した人間が出てきたんだろう」

「それで広まり出したってことですか?」

「いや、その直後に起きたことが原因だったんだ。それは、とあるスレッドの、とあるレスが発端で起きたことだ。内容はこうだ。『俺、こんなメールが色んな奴から来るんだけど、皆知ってるか』。これを聞いて、君はどう思う?」

「んー、単純に考えるなら、このメールを皆が知っているか聞いているだけかと。穿って考えるなら、――自慢ですかね。俺、このメールいっぱい受け取るくらい友達多いんだけど、って」

「ふふふ、そうさ。君の言う通りだよ。そうやって煽る人間が出てきて、そのレスは注目されるようになった。そしてレスにあるメールについても注目されるようになったんだよ」


 一息入れて、彼女は続ける。


「初めの内は意味もなく面白がって、友達同士で送り合ったりしていたんだが、気付けばメールに意味が付随するようになっていた。貰えば貰うほどに交友関係が広い、という証明書になったんだよ。つまりこのメールは人物のステータスを示す道具になったんだ」

「友達が多い、なんてことがそこまで人物のステータスとして確立するものですかね」

「それがするんだよ。彼等は学生だからね。学生のステータスなんて、学力と運動能力とコミュニケーション能力――交友関係の広さ――くらいなものだ。彼等にとっては立派にステータスになるんだよ」


 彼女は本を閉じて、次の本を用意しながら言う。


「ではメールがステータスを示す道具になったなら、学生はここで何をすると思う?」


 それは――


「他人への誇示と、それを利用しての誹謗中傷、ですか」

「当たりだよ。彼等はいつしかメールを貰った人間よりも、貰っていない人間に興味を惹くようになった。貰っていない、もしくは貰っていなさそうな人間を片っ端から中傷しだしたんだ。『こいつ友達いないんだぜ』ってね」


 事実であれ無実であれ、中傷された人間はメールを貰えるように行動するし、中傷していた人間は自分のステータスの誇示のために、ますますメールを貰うようにする。

 だからこそ、このメールは僕の学校でのみ、急激に広まったわけだ。

 成程。

 確かにこれは愚行だろう。


「結局、学生ゆえにメールを道具とし、裏サイトゆえにメールを使用して誹謗中傷した結果、生じてしまった現象だったんだよ」


 彼女は次の本を読みながら、そう締めくくった。




「こうやって説明されると、なんだこんなことかって思ってしまいますね」

「事の真相なんて、大抵はそんなものだよ」

「少し残念です。予想していたものと大分違っていましたから」

「君はどう予想したんだ?」

「予想というより期待ですかね。僕は友達が不幸にならないように、友達に送るというサイクルが繰り返されて広まったと期待したんですよ」

「現実的に考えて、『友達が不幸になる』なんて戯言を信じる人間はいないだろう。そもそも友達を不幸にしないために友達に送るなんて、矛盾している」

「その矛盾も含めて無限にサイクルしたと思ったんです」

「そんな理想論、成り立つはずもないね」


 そう、ですね。――と僕は呟いて彼女を見た。

 気付けば左だけに本が山積みになっていた。

 恐らく最後の本だろう。

 それを読みながら彼女は言った。


「さて、私の説明はこれで終わりだ」

「あ、はい。ありがとうございました。それに長々と説明させてしまってすみません」

「別にいいよ。君と話して分かったこともあったしね。」そう言って彼女は、最後の本を閉じ、万歳するように体を伸ばした。「そしてまた、分からないこともできたんだがね」


 ああ、流石に疲れたな――と、彼女は呟く。

 そりゃ本を読みながら、これだけ話せば疲れるだろう。


「分からないことですか? あなたが分からないことが僕に分かるとは思えませんが、せっかくだから聞かせて下さい」

「いや、これは君にしか分からないことなんだよ」

「僕にしか?」

「ああ。ではお言葉に甘えさせて貰うよ」


 彼女は今日初めて僕を見て言った。


「君はどうして、このチェーンメールをつくったんだ?」


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