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「お久しぶりです。今、大丈夫ですか?」
「見て分からないのか。駄目に決まっているだろう。話し掛けないでもらえるかな」
彼女は僕のことを見ようともせず、本に目を落としつつ言った。
いつも通りなので、気にせず僕は話を続ける。
「相変わらずの言い草ですね。これはあれ、虐めですか?」
「虐め? 君はこんなことを虐めだと認識する程に繊細な心の持ち主なのか。そうか、それは悪いことをしたね。これからは少しばかり労りの精神で君に接してあげるよ。――ということで消えてくれ」
「文脈がナチュラルにいかれていますよね!? 虐めにしか思えませんって!」
「自意識過剰なんだね、君は。自意識過剰で繊細なチキンくん。君はもう少し他人の攻撃に対する守備方法を学ぶべきだよ。受けるだけでなく流すことや避けることも覚えておくといい」
「はあ、御高説ありがとうございます」
「うん。今のを受けるのは間違っていない。今までのはただの忠告であり警告だ。虐めだなんてとんでもない」
「分かりましたよ」
「ではチキンくん。素直な君のために一つ聞いてあげるとしようか」
「チキンじゃないですが、何ですか?」
「君は誰だ?」
「やっぱ虐めじゃないですか!!」
ちょっと来なかっただけでこれか。
しかもまだ僕を見ようともしない。
「僕ですよ、僕。分かりませんか?」
「分かるわけがない、と言いたいところだが、話し方や態度で分かったよ」顔を見ろ。「学校に友達がいない、まして普段私以外に話す相手もいないチキンくんだね」
「分かったなら名前で呼んで下さい」
チキンじゃないっての。この人、本当に分かっているのか。
「まったく、最初から名乗っていれば邪険に扱わなかったのに」
嘘吐け。
変わらず本を読みながら言われても説得力がない。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「ええ、ちょっと話がありまして」
「ふーん。面白い話なら聞いてあげるよ」
「面白い話かどうか分かりませんけど、とりあえず聞いて下さい。それがですね、昨日僕の携帯に知らないアドレスから変なメールが届いたんですよ」
「どんなメールだ?」
「読み上げるのもあれなんで、送りますよ」
自分の携帯から、彼女の携帯に件のメールを転送した。
あなたには友達がいますか?
あなたにとって、友達は大切な存在ですか?
これを読んだ人は、友達5人に同じ文章をメールで送って下さい。
送らなかった場合、あなたの友達が必ず不幸になります。
これは強制ではありません。
友達が大切な存在だと思えるあなたなら、
送ってくれると信じています。
あなたには友達がいますか?
あなたにとって、友達は大切な存在ですか?
「――とまあ、そんなメールなんですけど」
「ははははは! いいね、これは面白い!!」
「えっ、そんなに面白いですか」
はて、そこまで面白いものでもないと思うけど。
「ああ、こんな面白い話があるか。友達のいない君に、友達に送らなくてはいけないチェーンメールが送られてくるとはね」
「そこは面白いところじゃない!!」
この人は鬼か?
「ははは、冗談だよ。嘘ではないけどね」
「一言余計ですよ?」
この人は鬼だ。
「……まあいいです。ところで、あなたはこのメールを知っていますか?」
「君のような人間に送られてくるくらいには広まっているんだ。私は知っているよ」本のページをめくりながら彼女は言う。「加えて言うなら、このメールについてはもう調べ終わっている」
「何を調べたんです?」
「出所と広まった理由についてだよ」
「……でも、チェーンメールなんて現象を遡って調べることなんて可能なんですか?」
「不可能ではない。特に今回は特殊だったしね」
「特殊ですか?」
「ああ。その辺も含めて、説明してあげるよ。どうやら君は、そのために私のところに来たみたいだしね」
「ははは、ばれてましたか」
「そんなに質問ばかりしてたら分かるよ」
本を閉じながら、彼女は言った。
話に集中してくれるのかと思ったが、どうやら違ったようだ。
読み終えた本を自分の右側に積んで、次の本を準備しながら彼女は話し出した。




