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MP SOULー魔力を授かりし者ー  作者: 鈴風
第1章 -友達-
9/17

8話 「命の代償」

章分けしてみました〜

 

 城の中は、何処もかしこも豪華で綺麗で豪勢だった。


 どれぐらい豪勢かというと、まず物が高価なような物ばっかりで、しかも何処の部屋も全て掃除が行き届いていて清潔感が半端ない。

 そして城に入ったばっかのところには、直径15mぐらいあってもおかしくはないんじゃないだろうか? ってほどに大きなシャンデリアが頭上でキラキラと光っていた。



 流石お城……、正確に言えば洋風なお城だけど。



 我が自国・日本の城と言えば、それは徳川なんちゃらや豊臣なんちゃら、そして織田なんちゃらが活躍したような時代にそのお殿様が済むような場所として建てられた、言わば古風を極めたような畳敷きの部屋に木造建築で建立されたような城だ。



「うん……、ワタシはこういう洋風なお城の方が好きかな〜」



 改めてそんなことを思ってしまう。


 日本に生まれし大和魂を受け継いだ日本の人間なら、やはり古風な城を好きにならなければならないのだろうか、などと変なことを考えたりしてしまう。


 まぁ、なんでも良いや。



「さて、ここが王様の部屋だよ」


「…………ここが……」



 歩き続けて早5分、ようやく王様の部屋の前まで辿り着いたようだ。ワタシはただお父さんの後ろに付いてただけだからあれだけど。



 とりあえず第一の感想として、扉がデカイッ!



 ワタシを縦に4、5体ぐらい置いたら何とか扉の一番上に届くかなってぐらいに、この扉は普通の扉より大きかった。

 そして扉の両サイドには、これまた図体のデカイ鎧を着た兵士が二人、槍を片手に持ちながら立ち尽くしている。


 とまぁ、これで一つわかったことがある。



 さっきのシャンデリアといいこの扉といいそこの兵士といい、洋風なお城はとりあえずスケールが違うッ!



「リョーカさん」


 扉をただただ圧巻されながら見ていると、隣からお父さんがワタシを呼んだ。


 ワタシは「はい」と返事をすると、お父さんは話を始めた。



「いきなりこんな話をするのは変だけど、ウチのリョーカと友達になってくれてありがとう」



 お父さんは微笑みながらそう言って来た。


「いえいえ、ワタシの方こそっ。ワタシなんかを家にいさせてくれて、それだけでもありがたいのにリョーカみたいな友達が出来て…………、感謝したいのはむしろこっちの方ですよ」



 何でワタシこんなこと告白してるんだろう、"今言うことではない"のに。



「そうか、なら良かった。……これからもリョーカと仲良くしてやって下さい」



「えぇ、勿論ですとも」



 何だこの死亡フラグ的な物言い……。



 そしてワタシとお父さんは、二人して笑った。



 ーーーー冷たい視線を送る兵士になんて目もくれずに笑っていた。




「…………さて、そろそろ行こうか」




 ひとしきり笑い終わって、お父さんは切り替えるようにそう言う。


「あっ、それともう一つ」


 と、お父さんはそう言ってワタシに何かを握らせた。


「ん? ……お金?」


「そのうち必要になるだろうから、タイミング悪いけど今渡しておくね」


 は、はぁ……、とワタシは何とも言えない返事をしてすなおにそのお金を受け取る。

 正直、お金を貰うなんて忍びないのだが、お父さんのご好意を無下にも断ることは、ワタシには出来なかった。



「それじゃあ仕切り直して、行こうか」



 わざわざ仕切り直すなんて言わなくても良いと思うんですが、なんてツッコミは無しだ。


 それよりも今は目の前の部屋だ。


 この扉の向こうに、ワタシをこの世界へ連れてきた張本人がいるのだろうか。

 いや別に王様がその『転移魔術』っていうのを直々にやってるってわけじゃないかもだけど、こういうのって王様がやるもんだよね。


 まぁそれも、王様に会えばわかるだろう。



「それじゃあ、開けるよ?」



 お父さんは、王様の部屋への扉に手を掛けながらワタシに尋ねるように言う。


 ワタシは一つ頷くと、それに応えるようにお父さんも頷き、そしてゆっくりと扉を押し開ける。

 重苦しい感じが、見ているだけでよく伝わってくる。


 そして開かれるその扉。


 段々と、王様の部屋の中が見えてくる。



 扉がお父さんの力により一気に開かれると、そこには兵士が100人ほどズラッと真ん中の道を空けて両サイドに並んでいるのが見えた。


 やっぱりスケールが違うなぁ、何てことを考えながらお父さんが中へ歩き出すのがわかったから、ワタシも同じように中へと歩き出す。



「よくお越しになられましたね、燎香さん」



 部屋の一番奥、階段が何段かあってその上にある玉座からワタシの名前を呼ぶ声はした。


(玉座に座ってるってことは、……あの人が王様?)



「そしてゲンナイ、今日はよく来たね」



 王様は前王様の息子とのことでやはりまだ若いということが雰囲気で何と無くわかる。

 そしてその王様は、隣にいるお父さんに向かってそう言うと、爽やかに微笑んだ。



 …………ん? ゲンナイ?




 それって、ーーーーワタシの父さんの名前じゃん。




 え、何マジで? じゃあリョーカだけじゃなくてお父さんの名前も何かワタシの家族の名前と同じなわけ? いやいやそれは幾ら何でもあり得ないでしょ!



 なんて風にワタシは混乱していると、王様は話を続けた。



「まぁ、とりあえずゲンナイにはーーーー……」



 その時の王様の声は、全くの別物だったような気がした。


 何というか、声が違った。




 ふとお父さんの後ろの方に目を向けると、先ほどの兵士が槍を両手に持ち構えている。


 何故こんなところで槍を構えるのだろうか。ワタシにはわからない。






「ーーーー死んでもらう」






 そして気付いた時には、お父さんの胸元からその兵士の槍が突き抜けていた。




 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。



 口から、胸から、ワタシは血を垂れ流すお父さんが崩れ落ちる姿を見た。




 理解不能、茫然自失、意味不明な状態が続く。




 胸を突き刺されれば当然人は死ぬ。


 そして今お父さんはワタシの目の前で胸を突き刺されて、出血吐血をして倒れた。


 ということは死んだということなのだろうか……?


 あのお父さんが? 食事中にやたらテンション高かったあの元気なお父さんが、死んだ?




 馬鹿言うな、そんなわけないだろ。




「う……っ、ぅう…………」




 そんなわけない。




「……っぐあ……っ、…………ぁあ……ぁあ…………」




 ーーーーなら何故、ワタシは泣いているのだろうか?




 ーーーー死んでいないというのなら、この涙は誰のためのものだろう?





 そしてワタシは、泣き叫んだ。



 正確には泣いているのか叫んでいるのかよく分からない。



 ただ叫んでいただけかもしれないし、逆にただ泣いているだけかもしれない。



 でも、それでも誰かのために感情を全て(さら)け出す。




 こんな事は初めてだった。






 泣きじゃくるワタシは、扉の前にいたもう一人の兵士にいとも簡単に取り押さえられる。



 地面に思いっきりあごを打ち付けてしまった。



 当然痛かったし余計に涙が溢れた。



 でも、お父さんの味わった痛みの方が余程辛くてキツイものだろう。



 今もまだ、お父さんはワタシの隣で呻いている。



 それを聞くだけでも、相当痛くて辛くてキツい事は分かっていた。



 だが身動き出来ないワタシには何一つ出来ることは無かった。




 ワタシの顔に影が差し、上を見上げるとそこには殺すように指示を出した男が立っていた。



「ゲンナイを助けたいか?」



 ゲンナイ、と聞いてワタシの父さんが殺されたかのように感じてより一層怒りが募る。



「聞こえてないのか? ゲンナイを助けたいか、と言ったんだ」



 ワタシはあごを靴のつま先で無理矢理上げられる。


 何も抵抗出来ない。



「……お父さん……を、助け…………られるの……か?」



 ワタシは絶え絶えに言葉を紡いだ。



「あぁ、助けられるね。そもそもまだ死んではいない、殺してないんだからな」



 ワタシが威嚇的な目で見ていると、そいつは鼻で(わら)うと話を続けた。



「この世界には、『魔法』という概念が存在する。だが、その魔法を直接使ってはならない」



 いきなりこんな話をし出した理由が、ワタシには分からなかった。



 そしてお父さんのために、ワタシは男の話を聞く。




「だがそれだと『魔法』という超常的な現象を放置するのも些か不本意だとも思っていた。だから世界は"武器にその魔法を宿すことによって"魔法の使用を許可した」




 ワタシは曖昧な記憶の中、しっかりと話だけは聞いていた。



「しかし、そんなもの造っている中ある"欠陥品"が生まれてしまったーーーー…………」






「ーーーーそれが<自発魔力発源式(じはつまりょくはつげんしき)(けん)>だ」






 …………自発魔力発源式……?



「自発魔力発源式の剣は、その剣から直接魔力を生むことの出来る代物だ。だがその剣は欠陥品だった。

 通常の<魔力代替式(まりょくだいたいしき)武器(ぶき)>は使用者の魔力を武器に送り込んで、それを動力源として使う。しかし<自発魔力発源式の剣>は、自ら魔力を生成しそれを動力源として稼働する。

 だがこの剣は使用者と相性が悪いのが殆どで、大体の人間は剣の"多すぎる魔力に飲み込まれる"。つまり死ぬんだ。」



 死ぬ、という単語にワタシは思わず反応してしまう。



「まぁそろそろ分かったと思うが、私はキミにその<自発魔力発源式の剣>の回収を頼みたい」



「お前……そんな事を頼むために、…………わざわざ殺したんじゃっ、ないんだろうな…………」



「さっきも言ったように、まだゲンナイは死んでいない。それに刺したのはそんなことのためじゃない」



 そして目の前の王は、次の言葉を小声で言った。




「…………だが、キミがもし全ての剣を無事に回収しきることが出来れば、傷を治してやらんこともない、そもそも今は『魔法』で傷を塞いでいる。どうせならこの交渉に使いたいからな…………」



「お……っ前……ッ!!」



「さぁ早く答えを言うんだ、答え次第ではこのまま傷を塞いでおいてやる」



 くそ…………ッ!


 どうすればいい、どうすればお父さんを助けられる!


 お父さんは絶対に死なせないッ!


 悲しむ人がいるんだ! リョーカやお母さんが悲しむ!


 当然ワタシだって……ッ!




 だから…………、絶対助けるッ!!




「……………………わかった……」



「ん? よく聞こえないなぁ、もっとはっきり答えてくれないt」

「だからッ! やってやるって言ってんだろうがこの人で無しがぁぁぁぁぁーーッ!! あぁやってやるよ、ワタシがそれをこなせばお父さんを殺さないでいてくれるんだろッ!? なら全然安いねッ!

 ワタシの命の恩人なんだよあの家族の人たちはぁッ!! だから絶対ワタシが助けるッ! 家族誰一人欠けさせはしないッ!!」



 思いの限りをそいつにぶち込んでやった。




 上等だよ、何でもやってやるよこの家族のためなら…………、たとえ命に代えてもなッ!!




「はっ、いい返事だ! なら早速今日からだ、まだまだ今日は長いから幾らでも回収は出来る!」



 王がそんな事を言う。


 ワタシは(ひる)んでいた、ワタシを押さえつけていた兵士を振り払って立ち上がった。




「はっ、いいよやってやるよ! だけどな、約束破ったその時はお前ぶっ潰すからなぁ!!」








 こうしてワタシは、勢いのせいと家族のために<自発魔力発源式>と呼ばれる剣の回収をすることになった。



 □■□■□



 ワタシはお父さんのことが心配だったが、剣の回収の旅に出るために支度を済ませて来いと王に言われ、仕方なしにあの家へと戻った。




「…………そういえば、リョーカやお母さんはお父さんの事知らないんだよね…………くそ…………ッ!」




 ワタシは怒りの衝動に駆られて、だがそれをあまり表には出したくないから家まで走った。

 あいつには近くに竜車を待機させてあるから、それで家まで戻れと言われていたがそんな事を知るか。



 さっきまでのことが夢なのなら、このまま夢から走り抜けたい。こんな現実は無くなればいい。


 だがあごに残る痛みも、お父さんの姿を見た記憶も見た時痛みも全て鮮明に残っている。



 幾ら走ってもそれらが払拭されることは無かった。



 そして案の定、距離的に徒歩で7、8時間も掛かると言われていた道のりを走りきる事は不可能で、仕方なしに近くにあった竜車乗り場で竜車に乗った。




 ……………………だからワタシは、お父さんを助けられなかったんだ……。




 ワタシはスカートのポケットに入れておいた、お父さんから貰ったお金を取り出す。




「もしかしたら、お父さんは自分が殺されそうになることが分かっていたのかも知れない……」


 ワタシは込み上げてくるその涙を、必死で堪えた。






 やがて初めに来た竜車乗り場に着いて、そこでワタシはお金を払って降りた。


 そして家へと歩く。




 …………どうすればいいんだろうか。


 リョーカやお母さんには、伝えなきゃならないんだろうか。


「いや、それはやめよう。……でも、お母さんには聞かれたら、ちゃんと答えよう」


 リョーカに、そんな酷な事は伝えられない。




 やがてワタシは家へと着いた。


 ワタシは玄関の扉を開け、中に入る。


「…………荒れてる……?」


 何故か、玄関にあった靴箱や花瓶が地面に散らばっていた。


「流石に家にいてこれに気付かないわけがない、花瓶が割れてるんだ。音でリョーカかお母さんのどっちかが確実に気付くはずだ」



 何かがおかしいと、ワタシの胸中に不安が渦巻いていた。



「……とりあえずお母さんに会おう」



 ワタシは、お母さんがいるであろうリビングに向かった。
















 だがお母さんはリビングで、腹部に刺さった包丁を自分で握ったまま、目を虚ろにして死んでいた。


実は、今日でこの1章終わるもんだと思ってて今日までで毎日更新は終わろうとしてたんですが、何と予想外のオーバー


ということで明日も更新しま〜す!


そして一つ誤表示の訂正


6話の一番最後のところで

「こんなところ、こなければよかった……」

みたいなセリフがありましたね


そのセリフ今回の話で入るはずだったのに入りませんでした〜!


ということで6話修正しておきます


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