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MP SOULー魔力を授かりし者ー  作者: 鈴風
第1章 -友達-
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6話 「二人の枕投げ」

 

 のぼせた頭を押さえながらワタシは、リョーカと共に部屋へと戻るため廊下を歩いていた。

 今思い出すだけで、風呂場での一件はやはり恥ずかしいものだった。

 こんなセリフが簡単に言える状況、「今なら死ねるっ!」ってね。


「早く行こっ、リョーカちゃん!」


 まぁリョーカが一層元気になって、それだけで良かったと思えたり。




 そして部屋に着くとワタシはベッドになだれ込む。

 あー、気持ちいい。


「リョーカちゃん、リョーカちゃん」


 ベッドに顔をうずめているワタシを呼ぶ声が後ろから……。

 ワタシは気だるげに声のした方に顔を向ける。あー眠たい。


「えいっ!」


「ッ!!?」


 んあっ!? 何、今何が起こった!


 ワタシは思わず立ち上がる。

 というか何か顔に思いっきり当たったんだけど、割と痛くはなかったけど。

 逆に驚きとビビりの方が大きい。


 ん、足元に何か落ちた。

 ワタシは足元に落ちたそれを見つけ、拾い上げる。




 …………枕……。




 つまりなんだ、今ワタシの顔面にヒットしたのは枕なわけ……?

 ということは必然的にこれは…………、



「…………枕投げ」



 そういうことになる。


 でもいくらなんでも不意打ちはどうなんだろうか。

 所詮遊びでしか無いんだから、もうちょっと相手のことを考えて投げてくれてもいいんではなかろうか。

 いや、そうすると流石にヌルいのかな……?


 いやまぁ枕投げなんてしたことないからよくわかんないけどさ。



「あっ、いきなりごめんねリョーカちゃんっ!」



 ワタシが枕を見つめながら長考している姿を見て、どうやらリョーカが気にかけてくれたらしい。

 いやいや、お気になさらず。


「あぁ、大丈夫大丈夫っ! ……というかこれ、枕投げ的な?」


 すっかり友達という大義名分で打ち解けたワタシは、躊躇いなく事を告げる。



「う、うん。……ワタシ、どうしても一度枕投げしてみたかったんだぁ〜……」



 夢見る少女のような表情で、リョーカは何処かを見つめていた。


 そうか、友達がいないと言っていたしそういうことがしたいんだな、友達同士のふれあい的な事が。

 ワタシも友達はいなかったけど、特に何かしたいなんて願望は無いかな。


 というか、やっぱり友達としてリョーカが枕投げやりたいって言ってるんだから、やってあげるべきだよね。


 …………ワタシだって、少し興味が無いことは無いし……。



「……それじゃあさ、やる? 枕投げ」



 ワタシは少し小声になりながらも、リョーカに訊く。



「え、ホントっ!? リョーカちゃんやってくれるのっ!」



「うっ、うん。ワタシは良いよ、別に」



 リョーカがとても嬉しそうな顔をしている、良かった良かった。

 リョーカのこういう笑顔を見れるなら、何だか何でも出来そうな気さえする。恐るべきリョーカ……。


 ワタシは早速、ベッドの上にある枕を一個引っ掴んで両手で抱える。




 実のところを言うと、一度だけ枕投げはしたことがあった。


 あれは中学3年の修学旅行一日目の宿泊先でのことだ。

 今と同んなじ様に、同室だった誰かが誰かに投げた事がきっかけで、枕は引っ切り無しに部屋中を飛び交い始めた。

 正直ワタシは、そいつらとはそこまで親しくはなく、正直邪魔だと感じていた。

 だが、別にワタシは自ら友達を拒んでいるわけでは無い。

 ここで混ざって一緒に遊べば、自然に馴染んでいけるのではなかろうか、と考えた。

 そしてワタシは、自分の使っていた枕を手に、失礼の無い様に"割と本気"で投げた。


 うん、ヒットはしなかったものの、押入れの扉を突き破っていったね。


 そして、ワタシのその一撃が終止符となったように、枕投げは終わった……。




 ワタシにはこんな黒歴史があったのだ。

 もちろん、ワタシの黒歴史はこれだけでは無い。


 さて、再開だ。

 と言っても始まってすら無いが。



「行くよっ、リョーカちゃんっ!」



 リョーカがそう言って、枕を同時に二つ投げてきた。


 左肩辺りと右足辺りだ。

 だが、同時投げなだけあってかスピードは遅かった。

 というかこれじゃあ投げた意味が無い。



 そしてワタシは、右足辺りに飛んできた枕を蹴り返した。



「えっ、あわわわっ!」



 何だか可愛らしい声を上げて、リョーカは寸でのところでワタシの蹴った枕をかわした。

 おー、正直クリーンヒットしないだろうかと不安に思ってたんだけど、良かったぁ。


 ちなみに、もう一個の枕は普通に受けた。

 案の定痛くなかった。まぁ、枕投げっていうのはそれぐらいが適切なのかね。


「ちょっとリョーカちゃん、強すぎるよぉ〜。というか投げてないじゃんっ!」


 確かに、枕投げと言っているのに蹴ってしまった。面目ない。


「ごめんごめん、次はちゃんと投げるねっ!」


 ワタシはリョーカにそう謝ると、左肩に受けた枕を拾い上げ、二つ枕を持った状態になる。


 さて、何処に投げるか……。


 実際、リョーカの狙い所は良かった。

 対角線に狙いを定めれば、大抵はどっちかがヒットする。

 さっきので言えば、右足を上げてかわすと右足は宙に浮いてる状態だから左肩を避けることは出来ない。

 逆に左肩のほうをかわしても同様に、右足の方が避けられなくなる。


 それを踏まえて、ワタシはーーーー……、


「よし、行くぞーっ!」


 リョーカにそう宣言して、ワタシは"まず"右足辺りに投げる。


「甘いよリョーカちゃんっ!」


 リョーカはこれぐらいなら避けられるよっ! と言わんばかりに声を上げる。


 リョーカの方こそ、ちょっと甘いかな。


 そしてリョーカが、右足を引いて左側に体重が掛かったタイミングで、"次に"左肩の方に投げた。


「えっ!?」


 リョーカは左側に体重を掛けた直後に、丁度左肩に枕が来たものだから動けなくなる。



 そして、見事に両方ヒットした。



 そんなに強く投げてはいないから痛みは無いだろうが、何故かリョーカは固まっていた。



「………….凄い……」



 リョーカが驚きの声を上げ、その場に尻もちをついた。



「おいおい、大丈夫かリョーk」

「凄いよリョーカちゃんっ!!」



 尻もちをついてしまったリョーカを立ち上がらせようと、手を差し出したら逆に引っ張られて抱きしめられた。


 ホント、リョーカは抱きつくのに躊躇いが無いよな……。



「今の凄くカッコ良かったよっ! なんかね、ワタシがこっちに動こうとした時に丁度枕が飛んできたからね、どうしても避けられなかったんだよっ!」



 リョーカは身振り手振りでその時の状況を説明しながら、感動に目元をうるうるとさせていた。


 わざわざ泣くことなのか……?



 ワタシはさっき、リョーカの狙いが悪く無いと言った。

 だが、それは相手が常人である場合のみだろう。

 ワタシも至って常人だが、さっきのワタシみたいに蹴り返すやつだっているし、逆に左肩の方の枕をキャッチするやつだっているかもしれない。

 そうなると必然的にもう片方の枕を避けることは容易になる。


 だが逆に、さっきのワタシのように投げれば避けられることがない。




 ーーーーそう、別々に投げればいいのだ。




 体重を掛けた方に投げてやれば、それを避けようとするためにまた体重移動しようとする。

 だが、そこまで人は体重移動を早く行うことは出来ない。

 よって体が自然に固まってしまい、どうしても両方受ける結果になってしまうわけだ。


 何でこんなに詳しいかと言えば、単純に保健体育にだけは力を入れていたからだろうか。


 ワタシの取り柄なんて運動神経が周りよりちょっといいかな? ってことぐらいだからね。



「さて、もう疲れただろ? 寝ようか」



 ワタシはリョーカ自身を代弁するように言う。

 すると抱擁を解除したリョーカは、



「え、リョーカちゃんもうギブアップなの? まだまだだねぇ、リョーカちゃんは!」



 うん、このセリフには多少なりカチンと来たね。

 そこまで言うなら、"もうちょっと本気"でやってやるよ。


 まぁ、少し痛い程度だからそこまで気にすることじゃ無いけどさ。



「いいよ、続き……やろうか」


「…………なっ、何かリョーカちゃん顔が怖いよ……?」



 そんなもの気のせいだ。


 それよりも続きを始めようか、リョーカ……。


 そして、ワタシとリョーカの枕投げ大戦争が始まった。



 ◇◆◇◆◇



「はぁ……はぁ……」


 リョーカは呼吸を乱しながら、またも尻もちをついていた。


 あまりにもワタシが圧倒すぎたからだ。


 ワタシは結構枕投げのセンスがあるのかもしれない、いや枕投げにどんなセンスが必要なのか知らないけども。


「リョっ、リョーカちゃん……そろそろ時間も時間だから……寝ようか?」


 リョーカはもうギブアップなのか、寝る提案をしてきた。

 まぁ、ワタシも少し疲れてきたからなぁ。妥当な提案だね。


「うん、そうしようか」


 ワタシはそう返事をし、布団を敷き直した。


 一つ言っておくと、風呂に入る前から敷いていたワタシの寝る布団だが、枕投げ最初の一回以降はやるということが決まっていたので、ちゃんとどかしていました。


 敷き直したふとんにワタシは潜り込み、布団の気持ちよさにほんの少し悶えた。

 うん、ほんの少し。


「それじゃあリョーカちゃん、電気消すね」


「うん」


 カチッ。


 最近じゃあんまり聞かないような、紐を引いて電気を消すようなタイプのようだ。


 電気が消えると、一瞬で目前全てが闇に包まれる。

 明るかった部屋とは逆に、真っ暗になった部屋は先程までの明るげな雰囲気を全て飲み込んだように感じられた。


 何処からか、時計の針のようなチクタクチクタクという音が聞こえてくる。


 この音は昔から好きだった。


 時の流れを、聴覚で感じられるからだ。


 日常を見ている分には、確かに変わり映え無い毎日で本当に時間は過ぎているのかだなんて思ってしまうかもしれないが、街や人を見ていると確かに毎日服装は変わり身長や見た目も変わってくる。

 だから視覚では、比較的時の流れというものは感じられる。


 だが、耳ではあまり感じることは無い。


 だから、この時計の針の音は好きだ。


 ワタシがその針の音に身を委ねていると、


「リョーカちゃん、起きてる?」


 と小声で話す声が聞こえた。


「うん、起きてるよ」


 ワタシもリョーカ同様、小声で返事をする。

 あれだよ、静かなところではどうしても小さめに話したくなっちゃうんだよね。



「良かったね、お父さんとお母さんがリョーカちゃんをまだ泊めてて良いって言ってくれて」


「そうだね、ホント良かったよ」



◇◆◇◆◇



 風呂から上がり、ワタシとリョーカはご両親のまだいるリビングへと向かった。


 ワタシがまだ泊まっていてもいいか訊くためだ。


 部屋に入ると、リョーカは開口一番「リョーカちゃんをこれからも泊めててもいいかな?」と言った。

 あまりにも潔すぎて少し笑えた。


 お父さんは少し驚いて、お母さんと目配せ。

 まぁ、きっと何かあるんだろうね。


 そして、


「あぁ、いいよ。リョーカさん、これからもしばらくはウチにいるといい」


 と言ってもらえた。


 そして意気揚々とリョーカはハイテンション。

 その隙を見てか、お父さんは、


「…………明日朝5:30に起きなさい、城へはちょっと距離があるからね。それと、リョーカには気付かれないようにして欲しい。では、また明日…………」


 とワタシに耳打ちしてきた。


 ワタシは小さく頷くと、リョーカと共に部屋へと戻っていった。



◇◆◇◆◇



(明日は5時起きだからなぁ……、早めに寝ないとな)


「ワタシ、もう寝るね疲れたから。……おやすみ」


 ワタシはそうリョーカに告げて、寝に入った。



「うん。…………おやすみ、リョーカちゃん」
















 そしてワタシは、着いた国城で凄惨な光景を目の当たりにすることとなる。



友人に読みにくいと言われ、心を抉られたりしましたが更新は続けますよ


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