3話 「この世界について」
更新止まっちゃってましたね、すいません
ワタシは思わず目を見開く。
それも当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
割りかしワタシの生きていた世界の方でも、ワタシの名前はわかりづらいと言われるような名前だ。
こんな名前が数個としてあるわけがない。
そんなワタシの名前と同んなじ名前の子が今目の前にいるのだ。
この状況で驚かない人にワタシは驚いてしまうだろう。
そして額に汗を滲ませながら、ワタシは同一姓名のお方である目前の女の子に視線を向けた。
身長はワタシより少し低いぐらいであろう160cm程度。
体重なんてのはわからないけど、どうせ胸の分重いに決まってる。 (皮肉を込めながら)
腰にまで伸びたワタシと同んなじ色をした髪は、手入れが少し行き届いていないのか枝毛やボサボサが気になる。
そんなワタシも手入れしているかというと何とも言えないが……。
顔も結構幼気の残る作りで、可愛らしい雰囲気を漂わせている。
さっきから垣間見える慌ただしさを見ていると、何だかドジっ子属性が付与されている子に思える。
その少女・リョーカ……ーー自分の名前呼んでるみたいだなーー……に、ワタシは少し興味を持ちベッドに座るように促した。
その指示に、少女は少し戸惑いながらも従ってベッドにポフッと座る。
うむ、愛らしい。
少女の隣にワタシも座る。
うむ、普通。
「えーと、…………リョーカ」
ワタシは恥ずかしながらも少女の名前を呼ぶ。「君」とかいう呼び方したら失礼だし。
そんな些細なことに、少女は何故か過剰反応。
驚きを包み隠さずに、顔を晴れ晴れとして喜びを表していた。
…………まさか、コミュ障バレた?
いやまぁ、あんな態度だったらバレてる可能性も結構あるけどさ。
「…………さっきまで恥ずかしそうにしていたのに…………名前呼んでくれた……」
小声で隣に座る少女は呟く。
……とりあえずコミュ障がバレているかはわかんないけど、気の小さい子みたいには見られてるっぽい。
「そーいえば、さっきワタシに『同一姓名』って仰いましたよね? ということはつまり……」
少女は思い出したかのようにそうワタシに言う。
うむ、その話がしたかったけどやっぱり話を進めてくのはワタシには荷が重いから、そういう察しの良さはありがたいです。
「うん、そう。ワタシは『瀬々良木燎香』って言って、あなたと同じ名前なの」
「それは…………」
んー、流石に引くかな? どうだろう?
引くとまではいかなくても驚いちゃうよね、珍しい名前だもの。
少し、引かれたりしないだろうかとワタシは心配しながら内心ビクついていた。
こんな親切な子に見放されるのは、コミュ障としては苦しいところがある。
こういう子は比較的誰にでも親切にしてくれるわけで。
そんな子にまで見放されるとかどんだけコミュ障だよって話になっちゃうから。
そんな風にして隣で目を伏せているワタシを見て、少女は口を開いた。
「名前が一緒なんて…………お仲間ですねっ!」
「…………?」
少女の言葉を聞いてワタシは思わず疑問符を頭に浮かべる。
いやまぁ、名前が一緒なのはそうなんだけど。
何が仲間なのかな?
というか、引かれるか少なくとも驚かれるものだと思ってたからこっちが驚きだ。
「お仲間ですよリョーカさん!」
「あー……、うん。そうだね」
ワタシは少女のハイテンションに淡白な返事しか返せなかった。
まぁ、彼女にはハイテンションな姿も似合ってるし悪い気はしないけどね。
むしろ和む、というか何というか……。
一応ワタシは現代日本からこんな異世界に飛ばされてきたわけだけど、こんな子がいてくれるだけでちょっと落ち着けるな。
といっても今まで特段慌てふためいたりしてたわけでもないけどさ。
「ところでリョーカさん」
「……?」
そんな私の中の落ち着きの原動力である少女に名前を呼ばれ、ワタシは少女に振り向く。
…………リョーカに燎香と呼ばれる……、変な感じだ。
「リョーカさんは、その…………この世界の人ですよね?」
おおぅ……。
こんな質問をされるということは、そう疑われているということですね。
んー。
この世界の人間であると嘘を通すか、それとも他所から来たと正直に言うか。
まぁ、こんな素直な子に嘘を吐くのは気が引けるし、そもそもワタシの命の恩人だ。そんなことは出来ない。
「…………いや、ワタシは違うよ。ここの人間じゃない…………はず」
極めて小さな確率だが、100%の確証があるわけでもないのでワタシは少し濁した。
きっぱり言い切ってもいいはずなんだけど、こういうとこもやっぱりコミュ障であるが故なのかな。
「あ、そうなんですか」
そう返事をした少女は、何だか表情が少し暗くなったかのよう。
悪いこと言っちゃったかな、ワタシ。
気を落とした少女を見て、ワタシまでも少し気が滅入ってしまう。
そんな様子を見てか、
「い、いえいえ良いんですよっ! そうですよね、だって服装とか珍しいですものね!」
少女は取り繕うかのようにそう言い、あははと笑っていた。
……………………。
カラ元気っていうのは、見てるこっちも悲しくなるもんだな。
そんなことを今更知ったワタシは、彼女のセリフから自分の服装が原因だったのだと知る。
確かに……、学校の制服だけどもこういう世界だと珍しい扱いされやすいもんね。
彼女の服装も、正直言って綺麗なものではない。
何と言うか、布を切って少し加工しましたぐらいの簡易なもののような、そんな感じがする。
この世界だとそういうのは当たり前なのかもしれないが。
と、ワタシは訊いておきたいこと思い出して彼女に訊く。
「えっとさ」
「はい?」
彼女はワタシに名前を呼ばれると、無垢な表情でこちらを向く。
無垢な表情でこちらを向く…………、しょうもないな。
こちらを向いた彼女のその表情は、それこそ今まで通りのものに戻っていたが、それもカラ元気によるものなのかもしれない。
あー、そんなこと考えてても話が進まない。
とりあえず話を進めることにする。
彼女だってあまり気を遣われたくないだろうし。
「この世界についてなんだけど、ワタシさっき来たばっかりだからよくわからないんだよね」
「なるほど、そういうことですか。この世界についての説明ですね、わかりました!」
「…………よろしく」
一人で納得してくれた彼女に、ワタシは苦笑いで頼んだ。
「ワタシの知ってる限りの話しか出来ませんけどご了承を。……この世界は大陸が6つに分かれていまして、その各大陸にはその大陸を治める王がいましてですねーー」
「いや、別にそこまで規模の大きい話はいいんだけど……」
「あ、ごめんなさい!」
「……いやいいんだけどね」
まさか世界規模の話が始まるとは思わなかった。
ワタシ的にはこの街の人口とか聞ければよかったんだけど……。
「一応聞いていて欲しいですし、このまま続けますね」
「うん」
続けるんだね、別に構いはしないけどさ。気になりはするし。
「それで、大陸を治める王がいまして。そんな王様に治められている大陸の一つにこの街はあります」
そりゃそうでしょうね、じゃなきゃここはどこだということになる。
まぁ無粋なツッコミは控えて、ワタシは説明に耳を傾けていることにする。
「その大陸というのが、<テルミナシオ大陸>です」
「……やたらかっこいい名前だね」
そんな感想を小声で呟いてみる。
そして話は続く。
「この<テルミナシオ大陸>の他に、<ローラム大陸><レリンズ大陸><ディフィチリモア大陸><コラプシー大陸><ブリックス大陸>て言う5つの大陸があります」
…………わかりづらい大陸名だな。
「この大陸<テルミナシオ大陸>の現王様は、アルスライン・オルティナートというお方です。前王様の息子にあたる人ですね」
前の王様の息子が現王様か……。
こういう場合は、息子を王の座に座らせるためにどんな姑息な手でも使ってきたわ、みたいな展開もあったのかもしれない。
「ちなみにこの王様の家では、代々息子に王様の座を受け継がせるというしきたりがあるみたいですね」
うん、そんな展開はなかったみたいだ。
「そして、そんな王様のおかげでこの国もこの街も平穏に暮らせているわけですね」
「まぁそうだよね。王が不安定だったら国だって不安定になっちゃうだろうし」
「そうですね。そんな王様がいるこの大陸ですが、国が5つほどあります」
あ、この展開は。
「いや、国の名前は連ねなくていいからね」
さっきの大陸の時同様に、ずらずらと名前が並べられていくのだろう。
だが、正直言ってそこまでそんなことに興味はないからワタシは止めに入った。
「そうですか……残念です」
少女は少し悲しそうだったが、すまない。
長々と聞いてると、頭がおかしくなってしまうから……ッ!
というか、彼女は何か村人A的な雰囲気を纏ってるね。
説明役に徹してる感が凄いね。
説明出来なくて残念とか言うのは、もはや村人Aの中でも優秀な方だね多分。
そんなワタシの心トークをよそに、少女は話を再開する。
「それで、この国<シークサイス王国>の中にこの街も含まれています。ちなみにシークサイス王国の王様がこの大陸の王様も兼ねてたりします」
なるほど。
じゃあ大陸王のアルスラインなんちゃらがこの国も管理していると。
とりあえずはわかってきた。
この世界は6つの大陸に分かれていて、その大陸の一つの<テルミナシオ大陸>の中にワタシたちはいて、その大陸の中の国の<シークサイス王国>の括りの中にワタシたちのいる街も入ってると。
恐らく、国の統制は大陸王が一任してるのかもね、多分だけど。
まぁこのシークサイス王国は関係ないよね、大陸王が国王なんだから。
「オーケー、とりあえずは大体わかったよ。ありがとう」
「おーけー……? はい、どういたしまして! ワタシは説明大好きですから!」
説明役村人発言キターッ!
なんてどうでもよし。
ワタシの中では、彼女はもはやそこら辺の村人とは違うということになっている。
まだ対面して1時間も経ってないけど、彼女は何か違うということを何と無くだが感じている。
不思議な感覚だ。
「あのー、リョーカさん」
「ん?」
ワタシはすっかりリョーカに心開いていた。
リョーカの話し方や声は癒される。
「今晩は、ウチに泊まりますか?」
「……………………へ?」
思わずワタシは間抜けな返事をする。
ワタシはまだ、ちゃんとは心開けていない部分もあるみたい。
この作品は、割と無計画な状態で始めたとこ多いのでなかなか難しいです
いえ、ちゃんと最後は考えてありますよ