*回答
「あ」
風呂から上がったデイトリアと目が合う。ただでさえ風呂上がりというものは大抵の美人ならそそるものである、勇介はその色気に一瞬ドキリとした。
しかも寝間着の上はただ羽織っただけの姿で出てくるものだから、こっちが驚いてしまう。
もちろんエルミの言葉の後というのもあるけれど、女の人だったって本当なんだろうか?
「デイ、ちょっと言っておきたいことがあるの」
「なんだ」
「前の魔王の腹心だった四人、知ってる?」
「四魔将と呼ばれていた者たちか」
静かに応えるデイトリアとは逆に、エルミの表情は暗い。
「奴らが動き出すかもしれないの」
「いずれは動くと思っていたが、早々に動き出すとはな」
「おそらく、あなたの力を評価してのことだと思うの。戦ったのでしょう?」
「雑魚ばかりに来こられても仕方がないのでね」
デイは時々すごいことを言うなと勇介は唖然とした。それだけ強いのか、長続きするのが面倒なのか。
きっと後者だなと勇介は心の中で結論づけた。デイトリアは変な所で面倒がるクセがあった。
「それを言いに来たの、それじゃ」
それだけ言って出て行くエルミに勇介は残念な表情を浮かべた。
ああ、もっと話したかったな。せっかく来てくれたのに……。そんな事は意に介さず、デイトリアは冷蔵庫から冷えたお茶をコップに注いで一気に喉に流し込む。
「どうした」
複雑な表情でじっと見つめる勇介に眉を寄せる。
「あのさ」
「なんだ」
お茶を再度コップに注ぎ傾けた。
「デイって昔、女だったの?」
「っ!?」
唐突な問いかけに思わずお茶を吹き出した。口元を乱暴に手の甲で拭いながら勇介を見やる。
「……エルミか」
「うん」
眉間のしわは深く刻まれ、コップをもう一つ取り出してお茶を注ぎ勇介をソファに促した。
「あえて言う事でもないと思っていたのだが、それは間違いではない」
立ち上がり、キッチンへコーヒーを煎れに向かう。
「あ、そうなんだ」
勇介は少し拍子抜けしていた。
怒られるんじゃないかと内心ビクついていたというのにしれっと答えられ、上品な動きのデイトリアをリビングから眺める。
なんかドキドキして損したと安心して胸をなで下ろした。
しかしふと、
「ん? 四魔将?」
二人の会話を思い出し眉を寄せた。