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SCHUTZENGEL ~守護天使~  作者: 河野 る宇
◆第三章~静かなる攻撃
12/37

*疑問

 ──デイトリアは勇介を護る事に専念するため、仕事を辞めて自分のマンションも引き払った。

 時折エルミが様子見とデイトリアに魔物たちの動きを伝えに訪れる。

 三人がソファーに座り語り合う。問題は深刻だろうに、勇介を和ませるようとしているのか二人は明るいやりとりをする。

 勇介はこのひとときが好きだった。

 無理な事だと解っていても、このままずっとこうしていられたらいいのにと思う。いつか、彼らは自分を護るために壮絶な戦いを繰り広げるのだろう。

 それをただ見て、護られるだけでいいのだろうか。

「俺は何もできないのか?」

「どうしたの? ユウ」

 ぼそりとつぶやいた勇介にエルミは首をかしげた。

「俺は、ただ二人に護られてるだけでいいのかな。俺にも出来ることはないのか。気休めでもいいから、自分を少しでも護る方法が欲しい」

「ユウ、でもあなたには……」

「ならばこれはどうかね」

 差し出された右手を見つめていると、手のひらから小さな光が発せられ、その光が消えると同時にペンダントが現われた。

 表には三つ首の獣が彫り込まれ、裏には天秤があしらわれている金のメダルだった。

「それを通じて私と会話する事が可能だ」

「へええ」

「紋章を渡すの? でもそれは──」

<通信以外の効力は無い>

 エルミの頭に直接デイトリアの声が響く。精神感応テレパシーというものだ。

『紋章』──それは彼らが持つ『象徴』である。

 それぞれが持つ『称号』により、効力と紋章の模様はさまざまだ。この紋章は本人が形作る事によってのみ効力が付与される。

 例え本物から型を作り、まったく同じ物を作ったとしてもそれはただの飾りにすぎない。

「これって魔よけとかにならないの?」

「生憎だが通信だけだ」

「そか。でもありがとう」

 やや残念そうにしながらも、何もないよりはいいやと快く受け取った。



 話し合いも終わりエルミは立ち上がる。

「それじゃあ、また」

「頼む」

「気をつけて」

 彼女を玄関まで見送ったあと、二人はソファに腰掛けた。

 落ち着いた勇介は、見れば見るほどすばらしい細工だなとペンダントを眺める。素材は金ではないようだが、自分が知っている金属でもなさそうだ。重厚感はあるのに重たくはない、不思議な手触りをしている。

「気になるのか」

「見事だと思って」

「そうか」

 立ち上がったデイトリアに風呂に入るんだなと確認し、コーヒーを飲むためにキッチンに足を向ける。

 しばらくして風呂からあがってきたデイトリアの姿は思った通り、上は羽織っているだけだった。その姿にエルミの言葉を再び思い出す。

「あのさ」

「なんだ」

「性別が無いって本当なの?」

「……エルミか」

「うん」

 余計な事をよくも言ったなと眉を寄せる。

「そうだ、私には性別は無い」

「でも、どう見ても男じゃないか」

「男性と同じ構造というだけで、厳密には性別としては成り立たっていない」

 外見が同じでも生物学に見れば異なるのだそうな。

「解るような解らないような」

 眉間にしわを寄せて唸る。

「悩む程の事ではない。風呂に入って寝ろ」

「そうするよ。これつけて入っても大丈夫かい?」

 詳しく聞いても余計解りそうになかったので素直に従う事にした。

「問題はない」

「解った」

 その背中を見送り、険しい表情で勇介の入れたアイスコーヒーを傾ける。

「エルミ、どういう事だ」

 デイトリアはずっと疑問を感じていた。

 何故わざわざ自分に助けを求め、話す必要の無いことばかりを勇介に伝えているのか。

 彼女には大勢の仲間がいる。その中で何故、自分でなければならなかったのか──エルミの意思をデイトリアは計りかねていた。

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