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茜染め

こんにちは、赤依です。

浜辺での告白から数時間後、渡の愛車での帰宅シーンから始まります。


それでは、後書きにて。


追記(2014年3月26日):1,400PVに到達しました。そろそろ着地点を決めるころかなぁ……なんて、考えてます。

 渡は困っていた。

 原動機が付いた乗り物に乗っている以上、交通事故を起こさないために注意深く運転することは何よりも優先される。現に、渡はこれまで危険を回避するために急加速などすることはあっても、危険運転や無理な運転は一切行わなかった。また、慣れない道路に最初は緊張し、少しの距離で身体が固くなってしまった。しかし、免許取得から数ヶ月経てば、身体は慣れて滑らかな運転で長距離を楽しむことが出来るようになった。

 それでも、渡は困っていた。

 愛馬に跨る間は、忘れてはいけない緊張感を常に持ち続けようとする渡は考える。だが、心と頭を掻き乱すモノの存在が、渡の身体を免許取得直後に戻すのであった。

 「(なんで……行きよりも密着してるの……)」

 真夏の狂ったような日差しは既に落ち着き、背にする海から潮風だけが強まった。行きとは違い、海の青より木々の青を視界に取り込み、明日香と渡は帰路についていた。渡は、浜辺での出来事は自宅へ帰ってから整理するつもりだったが、後ろの体温が思考を邪魔する。

 「(安全運転……安全運転……安全運転……)」

 渡の思考は道路標識によって埋め尽くされたが、どの標識も桃色で着色されていた。


 法律故に仕方ないが、ヘルメットの中の環境はお世辞にも良いとは言えない。明日香は渡がバイクのスタンドを降ろしたことを確認すると、まずはヘルメットを脱いだ。

 「ありがとう、渡。海、楽しかったよ。…………渡?」

 一向にヘルメットを脱ごうとしない渡に、明日香は後頭部から渡をノックした。すると、滝のように汗を噴き出させた渡がヘルメットを脱ぎだす。

 「……落石注意、横風注意、警笛鳴らせ――――」

 まるで南無阿弥陀仏を唱えるかのように、警戒標識や規制標識を呟いき続けた。告白した初日からデリカシーを欠いては、死んでも死にきれない。これは渡の精一杯の照れ隠しでもあった。

 「渡?」

 「な、なに!?」

 「そんなに驚かなくても……。降りてもいい?」

 「おう」

 「うん」

 「…………」

 「…………」

 「……どうした?」

 「お、降ろして……」

 明日香の顔が赤くなったことに渡は気づいた。自分が呑気にバイクに跨っていることを思い出すと、渡は弾かれたように車庫へ行き、明日香の車椅子を運び出した。

 「ごめん、うっかりしてた……」

 車椅子を展開してサイドブレーキ利かせ、明日香の片足を跨がせ、自力で乗り移れる体勢を整える。しかし、一分待って二分待っても、明日香がバイクから動く気配が見えない。

 「あれ? 車椅子が遠かった?」

 「ううん……。そういうわけじゃないんだけど」

 ゆっくりと、車椅子へ伸ばされると予想していた明日香の両腕は、渡に差し出された。


 「お願いしても……いいかな?」


 明日香の瞳が緋色に照る。その濡れた目に、渡の全てが釘付けになっていた。

 「ま……任せろ」

 「何笑ってるの……」

 「い、いや……」

 どうしても、渡は困っていた。初日からこんなに恥ずかしがっていては、心臓が持たないのではないのかと。割れ物を扱うように明日香を抱える腕は、重さとは別の理由で震えていた。

 「ありがとう。やっぱり痩せた方がいいのかな……」

 「違う違うっ!! 明日香は太ってない! 十分軽かったから!!」

 脊髄反射の速度で反論したが、渡の思考を見透かすには十分だった。

 「じゃぁ……何考えてたの?」

 「言えるわけないだろう……」

 視線を外して夕日を見る。明日香は少しだけ姿勢を正した。

 「渡、こっち向いて……しゃがんで」

 「おう……」

 華は無いが、セカンドキスは潮の香りがした。ファーストキスは、両者とも分からなかった。

 「よろしく、お願いします……。渡」

 「こちらこそ、頑張ります……。明日香」

 「何を?」

 「うるせー」

 渡は染まっていた。

 明日香という女性に、これほどまでに。

お読みいただき、ありがとうございます。

現実で彼女がいない私は、どうやっても追及できない渡と明日香のやりとり。今後の展開が読めません。(無責任)


では、次回まで。

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