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自主制作映画シナリオ(未製作)

グローブからグローブへ

作者: 嵯峨野 鷹也

・構成上の注意点

 低予算の自主制作向け。

 8ミリフィルムの場合で20万円以下。

 主人公はボクサー。

 最小限のロケで可能な構成に。

 30分程度


 以上の条件で書きました。








 <登場人物>

麦野隼人 アマチュアボクサー


原沢亨  プロボクサー、日本ランカー


天野法恵 麦野の彼女、元原沢とつきあって

     いた


コーチ  ジムのコーチ

デンゾー ジムのボクサー

ケーイチ ジムのボクサー

ヒロシ  ジムのボクサー


オーナー ジムのオーナー


マネージャ 原沢亨のマネージャー


ボクサーA

ボクサーB


(s1)公園

   昼下がりの公園。

   何人かの子供が走りまわっている。

   子供の一人(幼少時の隼人)、ふと木の

   枝に目を留める。

   枝にかかっている、古ぼけたボクシン

   ググローブ。

   子供、グローブに近づき、軽く小突く。

   揺れるグローブ。

   何度も拳で小突く子供。

   何度も揺れるグローブ。


(s2)暗闇

   揺れるグローブが、暗闇に揺れるサン

   ドバッグにO.L.。

   暗闇の中でサンドバッグを打っている、

   成長した隼人。件の古ぼけたグローブ

   を着けている。


(s3)オープニング

   クレジットとタイトル。


(s4)プロテスト会場、入り口

   案内板。


(s5)プロテスト会場、リング

   ボクサーA・B、リング上で激しい打

   ち合い。


(s6)プロテスト会場、片隅

   隼人、顔にタオルを当ててベンチに寝

   ている。

   横にスッと出されるスポーツドリンク。

   その手はコーチ。

   麦野、受け取ってストローをすする。

コーチ「ふぅ…惜しかったな、麦野…」

   隼人、無表情にドリンクをすすり続け

   る。

コーチ「お前が勝てない相手じゃなかった」

   隼人、視線だけコーチへ。

コーチ「前から言ってるけど…お前…ハング

 リーさがないんだ…優しすぎるんだよ」

   隼人、動かない。

コーチ「今日だってそうだ。あそこでラッ

 シュかければできたのに、わざわざ空振り

 して反撃させてやって…」

   隼人、ドリンクをベンチに置く。

コーチ「まあ、テストでKOされちゃ、今回

 はまず合格はムリだな。次回にがんばろ

 う。」

   隼人、うなずいて、タオルで顔を拭く。

コーチ「もうすぐケーイチの出番だ。俺、行っ

 てくる。お前はここで休んでろ。」

隼人「…はい。」

   コーチ、そそくさと立ち去る。

   隼人、リングへ目を。


(s7) s5と同じ

   ボクサーA・B、リング上で激しい打

   ち合い。AがBを追いつめている。


(s8) s6と同じ


   隼人、ため息をついて、ドリンクの方

   を向き手を伸ばす。手が空振り。

   ドリンクの方を見る。目をしばたかせ

   る。指で目をこする。

   ドリンクの方をじっと見ながら手を伸

   ばす。

   指に引っかかって倒れるドリンク。


(s9) 町中

   繁華街。

   ゲーセン、サ店、行き交う車や人…


(s10) サ店

   法恵と隼人のデート中

法恵「じゃあ…落ちちゃったんだ、プロテス

 ト」

隼人「ああ。」

法恵「そうだよね…はやちゃん、格闘技とか

 やるには優しすぎるんだと思うよ。」

隼人「ノリも…そう思う?」

   なんとなくうなずく法恵

隼人「ボクシング…やめようかなあ?」

法恵「(真顔)はやちゃん! 弱音吐かないっ

 てこの前約束したでしょ?」

隼人「あ…そうか」

法恵「私が『ボクシングは辞めて』って言っ

 たとき、『これだけはやめたくない』って

 言ってたじゃない!」

隼人「う…うん。」

法恵「そんなはやちゃんが、簡単に辞めちゃっ

 たんじゃ、私の気持ちはどうなるの?」

隼人「そうか…そうだな。ノリに我慢させた

 分、結果を残さなきゃ」

法恵「そうよ、はやちゃん。」

   隼人、水のコップを掴もうとする。

   掴み損ねてコップが倒れる。

法恵「あっ…もう、ドジなんだから」

隼人「ご、ごめん」

   二人、ティシュやおしぼりでテーブル

   を拭く。

   ふと、時分の手を見る隼人。


(s11)病院、

   隼人、出てくる。


(s12)隼人、自室

   隼人、寝転がって手を見ている。

医者の声(回想)「ははぁ、がちゃ目ですな…」

隼人の声(回想)「というと…」

医者の声(回想)「視神経を動かす四つの筋肉

 のうち、一つが動かなくなってるんです。

 それで、ものが二つ縦に並んで見え、遠近

 感がつかめなくなるんです。顔面に激しい

 衝撃を受けるボクサーとかにたまにいます

 ね。」

隼人の声(回想)「僕も、そのボクサーなんで

 すが…」

   しばし沈黙

医者の声(回想)「…お気の毒ですが、もうや

 めた方がいいでしょう。相手のパンチや、

 当てたい目標が見えなくなったりしてませ

 んか?」

   沈黙。

   手を見ている隼人。

医者の声(回想)「相手のパンチや、当てたい

 目標が見えなくなったりしてませんか?」

   隼人、目をつぶって横になってしまう。


(s13)ジム

   隼人、やってくる。

   ジムではみんなが練習中。

コーチ「よう、来たか。しばらく休んでて、

 体の具合でも悪かったのか?」

隼人「ええ、まあ…あの…」


(s14)事務所

コーチ「目かぁ…そいつは…」

隼人「はい…」

コーチ「それで、どうするんだ?」

隼人「俺、辞めたくありません」

コーチ「でも、その目じゃプロにはなれない

 ぞ。」

隼人「…いいです、アマチュアで。ただ、ト

 レーニングだけ続けられれば。」

コーチ「自分のために…か。まあそういうや

 り方もあるけどな。でも、当分スパーリン

 グとかはできないんだろ?」

隼人「ええ…」

   コーチ、ため息。

コーチ「ま、気長にトレーニングするこった

 な。治療で治った例もあるし。」

隼人「そうですね…」

   突然、ケーイチが入って来る。

ケーイチ「コーチ、オーナーが呼んでます」


(s15) s13と同じ

オーナー「というわけで、今度の日本タイト

 ルの挑戦者が、明後日から試合までウチで

 練習することになった。スパーリングもど

 んどんやりたいってことだから、みんなど

 んどん胸をお借りするように」

一同「は~い」

オーナー「じゃ、そういうことで。」

  立ち去るオーナー。

コーナー「ライト級日本4位、原沢亨、か。」

ヒロシ「いやー、なんか強いらしいですよ。」

デンゾー「そりゃ、日本チャンピオンに挑む

 くらいだから強いでしょうよ。」

   ジッと聞いてる隼人。

ヒロシ「いや、そういう意味じゃなくって」

デンゾー「どういう意味」

ヒロシ「人を人と思わないんだよ。対戦相手

 を容赦なく徹底的に壊す、ファイター・タ

 イプの選手だって、原沢ってヤツは。」

デンゾー「げぇ…」

  ジッと聞いてる隼人。


(s16) 海の見える公園

   ベンチで抱き合ってる隼人と法恵。

   波の音が静かに聞えている。

隼人「あのさ…」

法恵「何?」

隼人「学生の頃、憶えてる?」

法恵「私たちが付き合いはじめる前?」

隼人「そう。…原沢ってヤツ、いたよな。」

法恵「もう! (離れる)前の彼の話をするな

 って言ったのはあなたよ!?」

隼人「あ、ご、ごめん。」

法恵「彼とは自然消滅して、今じゃもう何の

 関係も無いんだからね!」

隼人「ごめんてば。」

法恵「だいたい、なんでそうなの、あなたっ

 て人は? 自分で言ったことを自分で守ら

 ないなんて…」

隼人「ごめん。ちょっと気が…弱くなってる

 のかもしれない。」

法恵「…また、ボクシングやめたいなんて考

 えてるんじゃないでしょうね?」

隼人「えっ!(驚く) そんなことないよ…」

法恵「どうかしら? このごろ、はやちゃん、

 嘘つきだしね」

隼人「『嘘つき』はひでえなあ…」

法恵「だってそうじゃない…そうだ、『ジム

 に行く』とか言って、実は浮気したりして

 ないでしょうね?」

隼人「そんなわけないだろ?」

法恵「どうだか。明日から私もジムに行って

 みようかな?」

隼人「明日? 駄目だッ!」

法恵「…なによ、急に?」

隼人「(焦って)あっ、いや…」

法恵「なーんか隠してる」

隼人「隠してないよ。明日、ライト級日本4

 位の選手が来るんだ。」

法恵「えっ? 見てみたい、見てみたい!」

隼人「お客さんだから、失礼がないようにし

 なきゃならないだろ? 見学者は邪魔なん

 だ。」

法恵「私が邪魔なの?」

隼人「いや、一般論として、見学者は邪魔な

 んだ。」

法恵「ジムに『見学歓迎』って貼ってあるじゃ

 ない」

隼人「だから、明日は特別なんだよ。いいか、

 来るなよ?」

   なんだか納得できない顔の法恵。


(S17) S13と同じ

   練習中。

   隼人、縄跳びをしている。

ケーイチ「おっ、来たぞ。原沢亨だ。」

   原沢、マネージャを連れてやってくる。

   オーナー、迎えに出る。

オーナー「ようこそ、原沢さん。」

原沢「4~5日、世話になります。」

コーチ「こちらの方こそ、お願いします。」

   原沢たち、更衣室へ。

   横目で見ている隼人。


(S18) ジム、リング

   リングでスパーリング。

   ケーイチ、原沢に追いつめられていく。

   ゴングが鳴る。

   コーナーのケーイチ、滝のような汗で

   息が乱れている。

   原沢、ぜんぜん平気。


(S19) ジム、更衣室前

   入り口近くで、鉄アレイを上下させな

   がら、睨むように見ている隼人。

コーチの声「あれ? 久しぶり。」

法恵の声「どうもこんにちは」

   焦る隼人。

コーチの声「麦野ならそっちにいるよ」

法恵「へへへ…来ちゃった」

隼人「今日は来るなって言ったろ!」

法恵「そんなに怒らないでよ…」

   ゴングの音。


(s20) s18と同じ

   リング上。原沢、ヒロシを追いつめて

   る。


(s21) s19と同じ

   憮然とした表情で見ている隼人。

法恵「あの人が日本4位? さすがに強そう

 ね。」

隼人「え?」

   疑問顔で法恵を見る。

   法恵、特にどうという表情でもなく、

   リングを見ている。

   隼人、法恵とリングを見比べる。


(s22) s18と同じ

   ヒロシ、ノックダウン。

   コーナーへ下がる原沢。

   ヒロシ、立てない。

原沢「なんだなんだ、このジムにはこんな奴

 しかいないのか?」


(s23) ジムの床

   タオルを当てたりして寝転がってるボ

   クサー3~4人。


(s24) s19と同じ

   ムッとする隼人。


(s25) s18と同じ

原沢「そこにも一人いるじゃないか?」

コーチ「いや、あいつはちょっと…(耳打ち)」

原沢「(興味を無くしたように)なんだ、そうか。」

   リングを降りる原沢


(s26) s19と同じ

   ムッとする隼人。

法恵「はやちゃん、やらないの?」

隼人「ちょっと…体調がよくなくて。」

法恵「ふ~ん…逃げるんだ。」

隼人「…具合が悪いって言ってるだろ?」

法恵「いいよ、そういうことにしとくから。」

隼人「信じろよ…」

   原沢がやってくる。

   なんとなくきらきらした目で見ている

   法恵。

   ムッとしている隼人。

原沢「あれ? 法恵じゃないか?」

法恵「えっ!?(びっくり)」

原沢「オレだよ。トオル。原沢亨だよ。」

法恵「えっ? 亨だったの!?」

原沢「はっはっは、そうだよ! ひさしぶり

 だなあ!」

   抱き着く原沢。

法恵「きゃあっ、もう、すぐそういうことす

 るんだから…」

原沢「いいじゃねえか、久しぶりなんだし。」

   ふたりを引き離すように入って来る隼

   人。

隼人「よう原沢、久しぶりだな。」

原沢「(不愉快そうに)だれ?」

法恵「憶えてない? 麦野隼人くん」

原沢「麦野? 麦野?」

  しばらく考えてる。

法恵「ほら、ボクシング部にいた…」

原沢「う~ん…そう言えばそんな奴いたよう

 な…すまんな、はっきり思い出せなくて」

隼人「いや…いいんだ。」

原沢「(法恵に)お前ら、つきあつてるわけ?」

法恵「えっ? あ…うん。(言いにくそうに)」

原沢「(ちょっと不愉快そうに)あ、そう。ふー

 ん…じゃ、また後で。」

   原沢、更衣室へ入っていく。

隼人「…ちょっとこっち来い」

   隼人、法恵の腕を引っ張る。

法恵「ちょっ…痛いじゃない!」


(s27) ジムの裏手

隼人「今日は来るなって言ったろ?」

法恵「前は、『いつでも練習見に来てくれ』っ

 て言ってたくせに…」

隼人「お前…まだあいつのこと好きなのか?」

法恵「バカ…何心配してんのよ、私が好きな

 のは、はやちゃんだけよ。」

隼人「…原沢のこと、どう思ってるんだ?」

法恵「ただの友達じゃない、もう。」

隼人「本当なのか?」

法恵「妬いてるの? 私ははやちゃんのもの

 だってば。」

   隼人、疑わしそうに見つめる。

法恵「信じてくれないんだ、わたしを?」

隼人「…わかった…信じるよ」

法恵「変な心配しなくっても大丈夫だよ、私

 の彼氏は、一生はやちゃんだけ!」

隼人「(力なく笑って)…信じるよ。」

   ゴングの音。


(s28) 試合会場、リング

   ゴングの音でつなぐ。

   次々と行われる試合。


(s29) 試合会場、廊下

   焚かれるフラッシュ。

   トロフィーを手にポーズを取る原沢。


(s30) 試合会場、控え室

   原沢、戻ってくる。

原沢「取材は後だ!」

   原沢、扉に鍵をかけて後ろを向く。

   タオルを持ってきた法恵がいる。

法恵「ここに置いておくね、原沢君。」

原沢「そんな他人行儀な…トオルでいいよ」

   原沢、ベンチに腰を下ろす。

法恵「ううん、もう、昔の私たちじゃないか

 ら…」

   法恵、立ち去ろうとする。

   原沢、その手を掴む。

法恵「あ…放して…」

原沢「なあ、法恵…もう駄目ならまあいいよ。

 でも、これだけは言わせてくれ。俺は、ま

 だお前のことが好きなんだ。」

法恵「やめて、原沢君…」

原沢「がんばってボクシングをやってればま

 た逢えると思ってた。その一念で日本チャ

 ンピオンまで登ったんだ」

法恵「放して…」

原沢「…いいよ…ちょっとの間だけでも…今

 だけでも、昔みたいに抱きしめさせてくれ

 …」

法恵「やだ、だめ…」

   原沢、強引に抱きしめてしまう。

   法恵、最初は抵抗しようとするが、次

   第にぐったり。

   やがて、唇を重ねてしまう二人。


(s31) 飲み屋

一同「かんぱーい!」

   ビールのジョッキがぶつかる。


(s32) 夜の道

   法恵と隼人、歩いている。

   隼人、ちょっと上機嫌。

隼人「原沢の奴、とうとうやったな! 日本

 チャンピオンとは、たいした男だ!」

法恵「う、うん。」

隼人「明日、帰るのか…ノリも、昔の友達と

 逢えて楽しかった?」

法恵「うん…」

   二人の前にふらりと現われる影。

   原沢。

法恵「トオル…」

   びくっとする隼人。

原沢「法恵…そいつやめて、俺のところへ戻っ

 てこい。」

   怒る隼人。

隼人「原沢…てめえ、人の女とる気か!」

原沢「おう。お前が連れてるのを見てると、

 ムカムカするんだ!」

隼人「こいつは俺の女だ! やる気か!?」

法恵「やめて!」

   二人の視線が法恵へ。

法恵「私は、モノじゃない!」

隼人「俺のものって、自分で言ってたじゃな

 いか…」

法恵「モノじゃない!(泣き出す)」

原沢「わかった。法恵を苦しめたくはない。

 この話は、後日あらためてしよう。」

隼人「逃げるのか、てめえ!」

原沢「先に逃げたのはお前だ。」

   原沢、法恵に手をふって、背を向ける。

   法恵、泣き震えている。

   隼人、肩に手を置こうとする。

法恵「触らないで!」

   驚く隼人。

法恵「帰る。」

隼人「送るよ。」

法恵「送らなくていい。一人で帰る。」

隼人「遅いから送る。」

法恵「来ないで!」

   沈黙。

隼人「…わかったよ。ノリがそうしたいんな

 ら。じゃあ、ここで。」

   隼人、立ってる。

法恵「何やってるのよ?」

隼人「見送るくらい、いいだろ?」

   法恵、泣き顔で隼人を見ているが、意

   を決したように背を向ける。

   隼人、それをいつまでも見送っている。

   その目に浮かんでくる怒り。


(s33) s19と同じ

   オーナーやコーチがぺこぺこしてる。

   ケーイチやヒロシ、法恵もいる。

原沢「じゃ、お世話になりました。」

オーナー「また御出でください。」

原沢「ええ、そのうち…」

隼人の声「まてよ!」

   隼人、古ぼけたグローブをつけて出て

   来て、


(s34) s18と同じ

   リングに上がる。

隼人「このジムにはどんな奴しかいないとか

 言ってたなぁ。まだ一人残ってるぜ。試し

 ていかねえのか?」

マネージャ「馬鹿は相手にするな」

隼人「逃げるな、原沢!」

法恵「はやちゃん、馬鹿な真似はやめ…」

隼人「原沢! お前はウソつきか!?」

   ピクッと反応する原沢。

隼人「そうかい。確かめもしないでいい加減

 なこと言う奴か。そんな奴は、女に嘘言っ

 て口説くのもカンタンだろうな。」

法恵「はやちゃん!」

   原沢、上着を脱ぐ。

マネージャ「原沢、やめろ!」

原沢「うるせえ!」

   原沢、裸になってリングに上がる。

原沢「望み通り相手になってやる。とっとと

 ゴングならせ!」


   壮烈な叩き合い。

   相手の拳が見えない隼人は、相打ち覚

   悟で掴まえてラッシュをかけるしかな

   い。

   お互いにダウンを繰り返しながら、そ

   んな殴り合いが5Rまで続く。


   5Rめ。隼人のストレートがカウンター

   気味に原沢の顎へ入る。

   ダウンする原沢。

   しかし、原沢が立ち上がりきる前に、

   隼人のラツシュ。

コーチ「む、麦野っ!」

マネージャ「やめろぉーっ!」

ケーイチ「麦野さんっ、駄目だっ!」

法恵「やめてーっ!」

   容赦ない、鬼気迫る目付きの隼人。

   ダウンした原沢に馬乗りになってさら

   に殴り続ける隼人。

   リングへ跳び込んできた法恵、隼人に

   体当たり。

   隼人、尻餅を搗く。

   口や鼻から血を流している原沢。

   法恵、原沢に抱き着いて隼人を睨む。

法恵「ひどい! こんな人だったなんて、サ

 イテー!」

隼人「(つぶやくように)…嘘つきは、どっち

 だ?」

   はっ、として視線をそらす法恵。

   隼人、リングを飛び降りる。


(s35) s19と同じ

隼人「コーチ…お世話になりました。今日で

 練習をやめて、目の治療をします。」

   うなずくコーチ。

コーチ「(苦しげにつぶやく)治って…またボ

 クシングに戻る奴も…たまにいるんだ。」

   ニコッと笑ってうなずく隼人。

   まだリングで抱きしめあってる原沢と

   法恵を一瞥すると、隼人、ジムの外へ

   出ていく。


(s36) 橋

   川に架かってる橋。

   隼人、走ってくる。手には、古ぼけた

   グローブ。

   隼人、橋の上からグローブを捨てよう

   とする。

   が、思いとどまる。


(s37) s1と同じ

   木。

   枝にぶら下げられた、古ぼけたグロー

   ブ。

   隼人、さっきとは違うトレーニングウェ

   ア。

   隼人、軽くそれを小突く。

   揺れるグローブ。

隼人「運がよかったら、また会おうな。」

   隼人、もう一度小突く。

   揺れるグローブ。

   隼人、背を向けて走り去っていく。

   走りながらシャドーをしている。

   いつまでも揺れているグローブ。


   エンドマーク

              <終>


<撮影割り振り例>


どこかの児童公園など(ゲリラ) s1、s36

景色のいい公園(ゲリラ) s16

ボクシングジム(要交渉) s2、s13、s15、s17~26、s33~s35

公共体育館(要交渉) s4、s6、s8、s29、s30

マンションなどのキッチン s31

ビデオ等から流用 s5、s7、s28

繁華街の路上(ゲリラ) s9

サ店かファーストフードなど(要交渉) s10

病院の前(ゲリラ) s11 

誰かのアパート s12

どこかの事務所(要交渉) s14

マンションや民家などの裏手(自分ちの裏など) s27

誰かの家の前の路地(ゲリラ) s32

橋(ゲリラ) s35



<詳細解説>

s1 公園

s2 ジム サンドバッグの後ろは黒の模造紙を下げ、500W電灯でサンドバッグや隼人を照らす。

s3 

s4 案内板 ポスター程度の物を自作。公共体育館に見えるような適当な場所で撮影。

s5 実際のテスト、またはアマチュアの試合を撮影して使用。

s6 公共体育館や屋内のベンチ、更衣室などで撮影。バックに、s5で録音した音を小さく流す。

s7 s5と同じ。必ずしもシナリオ通りでなくてもOK。

s8 s6と同じ。

s9 近場の繁華街。

s10 サ店などに頼んで撮影させてもらう。

s11 眼科病院、または総合病院の前で撮影。歩くだけだからゲリラで撮ってしまう。

s12 誰かのアパートなど。

s13 s2と同じ。

s14 誰かの会社か、学校の職員室などで撮影させてもらう。無理なら、公共施設の会議室などの隅を使用し、壁際で撮影して狭く見せる。それも無理なら更衣室に変更。

s15 s2と同じ

s16 公園。景色のいいところなら、海以外でもOK。

s17~26 s2と同じ。

s27 どこかの建物の裏手。

s28 実際の試合場。(…違法だが非常手段として、実際の試合のビデオの一部を流用するという手もある)

s29 公共体育館の廊下、だめなら後ろがコンクリ打ちっぱなしのところならどこでもOK。

s30 公共体育館の更衣室など。

s31 普通の台所でも、後ろの壁にお品書きを貼ってジョッキがぶつかるところだけ撮影すればOK。

s32 誰かの家の前の路地などで撮影(ライトの電源を引っ張る都合から)

s33~s35 s2と同じ。

s36 適当な、川の見えるところ。

s36 s1と同じ。


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