第三章 狂想曲 その2
宇佐美の声に反応して、臼持博士が月満と宇佐美の姿に気づいた。
「…誰だ?って、その格好は情報調査局か…」
「あまり、驚かれないのですね…」
(…こいつが、臼持博士ってやつか…。博士って言う割には、背が高くて意外とイケメンなんだな…)
「驚く?僕が?…ふん、危険を冒してこの時代にやってきているんだ。情報調査局の人間が僕の後を追って来るであろうことは、想定内だ!」
臼持博士は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
(そして性格が悪そうだ)
月満は、臼持博士を見て、そう思った。
「ところで、そこの小僧は誰だ?」
「こ…小僧!?」
月満は、高校生にもなって小僧呼ばわりされたことに若干腹が立った。
「俺は高校生だ!!小僧じゃねーよ!おっさん!」
月満は、小僧呼ばわりされた腹いせに、臼持博士をオッサン呼ばわりしたが…。
「…ムキになるところが十分小僧だ」
臼持博士は、オッサン呼ばわりされても、何も感じなかった。それを側から見ていた宇佐美は、とにかく臼持博士を止めなければという思いが強いせいか、気が焦っていた。
「彼は、この時代の協力者です!ある程度事情は説明しております!とにかく臼持博士!あなたを拘束します!!うさちゃん号!」
宇佐美は、この古墳内の広い空間に再びうさちゃん号を出そうとした。ところが…うさちゃん号はなぜか出てこない。
「え?…うさちゃん号が…!」
「ははは!僕が時空間移動することによって、情報調査局の人間が僕を捕まえに来るであろうことは想定内だ!ここらへん一帯に政府のコンピューターは出せないよう、事前に妨害を施した!」
「くっ!」(さすが臼持博士、一筋縄ではいかないか…)
宇佐美は自分の行動に冷静さを欠いたことを悔やんだ。
「言っておくが、政府の自動車型コンピューターを出せなかったこと自体、失敗したなんて思うなよ。僕が言うのもなんだが、なんでもかんでも機械に頼ろうとするのが…悪い!」
臼持博士は、月満と宇佐美に向かって、野球ボールくらいの大きさの玉を二つ投げた。そこから、細い糸のようなものが広がり、二人の身体を覆った。
「うわ!なんだこれ!気持ち悪い!」
「この糸のようなものは一体?」
月満と宇佐美は、臼持博士の投げた玉によって、身体の動きを制限された。
「ははははは!それは僕が蜘蛛を観察し、そして納豆を食べている時に思いついて開発したものだ!」
「そんなアホみたいなもんまで開発してるのかよ!このマッドは!」
「ふふふ、僕としては大いに褒め言葉だね」
「まさか、こんな糸に身動きが取れないなんて」
宇佐美は激しく悔しがっていた。