第三章 狂想曲 その1
月満 真之助と宇佐美 未来は、井中野古墳公園へ到着した。
「ここが…井中野古墳…」
宇佐美は珍しそうに辺りを見渡した。
「すごい…こんなに緑が多いなんて…。このお花も初めて見ました。綺麗。それに、なんて爽やかな空気なんでしょう」
宇佐美は、井中野古墳公園の自然に感動していた。月満は、宇佐美に井中野古墳のことを簡単に説明する。
「ここは公園として整備されてて、あの小高い丘が井中野古墳だよ。ほら、あそこが入り口になってて、中を見学できるんだ。隣の施設は博物館。まあ、この時間帯はもう見学時間終了だけど」
「なるほど。しかし、見学時間が終わっているのは好都合ですね…」
(はぁ…こんな夕方の時間帯に古墳に入るなんて…)
月満は、かなり緊張してきた。
「早速、古墳のほうに行ってみましょう!」
「ああ…」
宇佐美は周りに人がいないか確認し、うさちゃん号をペンダントに収納した。月満と宇佐美は、小高い丘の井中野古墳入口へと向かっていった。
「さあ、ここが古墳の入口だよ」
古墳の入口は、すでに鎖で閉まっていた。
「…軽く鎖のみで封鎖しているだけなんですね…。でも、周りは防犯カメラが設置されている…。あ!」
宇佐美は、何かに気がついた。
「どうした?」
「周りの防犯カメラ、作動していません」
「え?」
「ペンダントの状態でも、うさちゃん号は常に周辺をサーチしてくれているのですが、うさちゃん号によると、この防犯カメラは、すでに臼持 一太郎博士によって停止されているようです」
「まじかよ…」
「とはいえ、それならそれで好都合。早速、古墳の中に入りましょう!」
「…ああ…」
月満と宇佐美は、封鎖されている鎖をくぐり、井中野古墳へと入っていった。宇佐美はうさちゃん号のペンダントから、ライトを照らす。
「へぇ、そのペンダント、ライトにもなるんだ」
「ええ。まあ、博士に見つからないように、少し光は抑えていますが」
月満と宇佐美は、博士に見つからないように小声で会話した。
「私、古墳の中を見るのは初めてなのですが、結構入り組んだ洞窟のようになっているのですね」
「そうだな。でも、見学用に整備されているから、こうやって矢印の方向に進めばいいだけだけど…」
「あ!」
宇佐美は何か珍しいものを見たようだ。
「!なんだよ!!おど、おど、脅かすなよ!」
「これ、ハニワですよね!うわぁ!なんかかわいいハニワですねぇ」
「そんな呑気なこと言ってる場合かよ!なんとかって博士を追いかけるんだろうが!」
「すみません!あまりにも珍しいものばかりなものでつい!」
「ちなみに、ここの古墳内にあるハニワはレプリカで、本物は隣の博物館にあるんだ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、地元じゃ貴重なものだからな。でもまあ、ここの古墳にあるハニワは人気で、地元のゆるキャラになってるくらいなんだよ。グッズも売ってるし…」
「え?グッズ?このハニワのグッズが売っているのですか?」
「うん、道の駅とかに売ってる。割と人気」
「いいなぁ…。欲しい…」
「え?マジで?」
月満は、このハニワのグッズを欲しがる宇佐美の思考が理解できなかった。二人は洞窟のようになっている古墳の中を歩き進める。途中には古墳に関する資料や解説、数々の器物のレプリカなども、ところどころに展示されていた。そして、月満はあるハニワのレプリカを手に取ってみた。
「あ!勝手に手にとってはいけませんよ!怒られてしまいます!」
「無料とはいえ、すでに見学時間外にこの古墳に入ってること自体、すでに怒られものだけどな。それより…」
「それより?」
「うん…このハニワ…、これだけなんか、首元に宝石のようなものが付いてるんだが…」
月満が手に取ったハニワは、およそ十センチほどの小さなハニワだった。
「あ、ダメですよ!いくらなんでも、宝石欲しさにハニワを盗んじゃ!」
「そんなことしないよ。ただ…これもレプリカ…だよな?」
「調べてみましょう」
宇佐美は、ペンダントを通して、うさちゃん号に調べさせた。すると、ペンダントから空間立体映像が映し出される。
「ペンダントに収納していても、そのうさちゃん号とやらは機能するんだな」
「ええ。私も、このうさちゃん号には助けられています…っと、分かりました!これは確かに宝石ですが、使われているのは人工の宝石のようです」
「人工の?まあ、レプリカだからな」
「ちなみに、そのハニワはレプリカというより、数量限定のお土産品のようです」
「土産物?じゃあ、誰か落としたのか?」
月満と宇佐美がハニワについて話していると…。
ガタガタガタ
「!」
月満と宇佐美は、急な音に驚いて辺りを警戒した。そして、さらにひそひそと小声で会話をする。
「今の音は…」
「ああ、この奥は、かなり広い場所になってるはずだ…。油断するなよ」
(と、言いつつ、俺はかなりビビってるけど…)
月満と宇佐美は慎重に進み、やがて古墳の最奥にある広い場所にたどり着いた。そこには、臼持博士の姿があった。
「あれは…!臼持博士!」