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第二章 井中野古墳 その1

宇佐美が現代に到着するおよそ一時間以上前。ここは、埼玉県井中野駅周辺。


「ああ、引きこもりたい!(怒)」


一人だけイライラしている、黒いリュックを背負った白衣姿の男性が、駅の階段入口付近にある、大きな木を円形に囲むレンガのベンチに座っていた。


「まったく、なんでこの僕がこんな時空間移動なんて面倒なことをしなきゃいけないんだ、クソ!こんな百年前のクソ田舎の駅でバスを待つ羽目になるなんて。いや、百年前の乗り物自体には興味があるからいいんだが、我が引きこもりライフを充実させるには、どうしてもあのラプソディックパワーを手に入れなきゃならんし…」


このイライラしている白衣の男性は、宇佐美が追っている臼持 (うすもち)一太郎(いちたろう)博士である。彼は、自分の欲望と行動が矛盾していることに、イライラしていた。


「しかし、かれこれこの時代に来て一時間以上か。あの古井戸からこの井中野駅まで、歩いて結構かかったな…というか、すでに疲れた…」


博士は、「安定して暮らしていくには、研究者になれば引きこもれて稼げる」と考え、科学者になった人物だ。研究に没頭している間は良いが、博士の科学者としての職業は、なかなか引きこもれていない状態だった。


「安定した引きこもり生活を送るには、やはりラプソディックパワーを手に入れるしかないが…。さすがに時間移動はリスクが高かったな…」


博士は、その安定した引きこもり生活のためという執念によって、時間移動のリスクを犯してまで、この現代にやってきたのである。


「それに、ラプソディックパワーを手に入れるために開発した、このエネルギー吸収型ジェネレーターの実験もやってみないと…」


博士が開発した小型の特殊ジェネレーターは、ちょうど五百ミリリットルのペットボトル一本分ほどの大きさだ。


「このジェネレーターの出来に、我ながら惚れ惚れするね!とりあえず、情報調査局のやつが来る前に、なんとしてでも回収してやる!場所は確か…」


博士は、周辺に人がいないか確認し、立体映像が空間に映し出せるモノクルを着用した。そのモノクルは超小型のコンピューターで、空間立体映像は手のジェスチャーだけで動かすことができる。


「場所は、井中野古墳…ここから結構距離があるな…。よし、この時代のバスに乗って行くか。せっかく、ひいじいさんが残した、この時代の電子マネーを探し出したんだからな」


博士は、現代のバスに乗ることだけはひそかに楽しみにしていた。

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