第三章 狂想曲 その5
宇佐美は、再びうさちゃん号をペンダントに戻し、月満は、光束具で拘束された臼持博士を引っ張りながら、古墳を出て、再びうさちゃん号を呼び出し、うっすらと青白く光る古井戸のほうへと戻ってきた。
「はぁ…やっと終わったなぁ…。なんだか、どっと疲れたよ…」
「本当に、ご協力ありがとうございました。おかげで、ラプソディックパワーの回収を阻止することができました」
「…フンっ!」
「…しかし…」
月満は、少し考え込んでいた。
「どうかしましたか?」
「いや…俺もなんとなく考えさせられたよ。戦争と気候変動は決して別問題ではないこととか、地球に生物がいなくなってしまうこととか…」
「はい…。そしてそれは決して遠い未来の出来事というわけではありません。自分一人の力ではどうにもならないという考えが大半だと思います。しかし、歴史は変わります。昔は当たり前だったものが、当たり前ではなくなっていることも多いです。例えば飛行機では喫煙できたことも、今ではそれが世界中で禁止になりました。かつての奴隷制度もそうです。一人一人の声が大きな波となって動かしていくんです。どうか忘れないでください。決して他人事ではないことを…」
「…分かった」
「はん、どうだかな…」
「…この人、ほんっとひねくれてると言うか、変な人だな」
「でも、一応優秀な人なんですよ…一応…」
「一応は余計だ!」
「月満さん、本当にご協力、ありがとうございました」
宇佐美が、月満にお礼を言うと、臼持博士がびっくりしたような顔をして、月満に尋ねる。
「…月…満?月満だと?お前、もしかして月満 真之助?」
「なんであんたが人のフルネームを知ってるんだよ」
「そうです。この方は月満 真之助さんです」
「???」
(そういえば、この宇佐美さんも、最初俺の名前を聞いて、なんか驚いてたよな?なんでだ???)
すると、臼持博士は…。
「お前~!!僕のひいじいさんだったのかよ!」
「はぁ~!???」
「申し訳ありません!貴方様のお名前を聞いた時、まさかとは思いましたが、実は、臼持博士の、ひいおじい様なのです!」
「嘘だろ!!なんで俺がひいじいさんだって分かるんだよ!だいたい苗字が違うじゃないか!」
「間違いない!お前は僕のひいじいさんだ。しかも、とんでもないもんを…!」
臼持博士が、何かを言いいかけたとき、宇佐美が突然咳払いをし始めた。
「ごほん!ごほん!ごほん!」
臼持博士は、何かを察したように、言いかけたことを言うのをやめた。
「どうしたの?風邪?」
「いえ、ちょっと喉が…。失礼しました」
「しかし、信じらんねぇ…。この性格悪そうなマッド博士が俺の子孫…」
月満は最後の最後に、衝撃的な事実を知ってショックを受けた。
「喜べ!僕という優秀な科学者が将来子孫になるのだからな」
「…全く喜べねぇ…」
「まあ、とにかく、月満さん、本当に色々とお世話になりました」
宇佐美は深々とお辞儀をした。そして、月満になにかを手渡した。
「…これは?」
「この時代のお金も、電子マネーも持ち合わせてはいませんが、この宝石を差し上げます。この時代の相場で5万円くらいで売れるはずです」
「…いいよ、こんな綺麗な宝石、あんたがアクセサリーとして使いなよ」
月満は、宝石を見て戸惑った。
「いいえ、これは元々お礼として持っていたものです。それに、自分で言うのもなんですが、こんな変な事件に巻き込んでしまったことと、月満さんが冷静に対処していただいたおかげで、臼持博士を拘束することができたのです。どうかそれはお納めください」
「…分かった。じゃあありがたく受け取るよ」
「僕の先祖とは言え、小僧のくせに、宝石を受け取るとは生意気な…」
「そういうあんたも、機械には頼りすぎないことだな。結局は、機械に頼ろうとして失敗してるし」
「なんだと!?」
「ふふふ。では月満さん、どうかお元気で。それと月満さんのスマホはすでに動かせるようになっております」
「ああ、そっか忘れてた。うん、そっちも元気でね」
「はい。では失礼します」
宇佐美と臼持博士は、井戸の光とともに未来へと帰っていった。そして、月満はその後、受け取った宝石は売らずに、宇佐美との大切な約束を思い出すために大切にとっておいたのである。
戦争と気候変動は決して別問題ではなく、地球全体の生命に関わる問題であるということを忘れないために…。
終章へと続く




