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序章 時空を穿つ者

ここは、今から百年後の未来の日本。東京都内にある国立科学研究所の保管室。時刻は深夜三時。そこに、白衣を着た一人の男性の姿があった。銀髪のベリーショートで長身、少し垂れ目の整った顔立ちに、細身の体型。年齢は三十五歳くらいだろうか。


「どこだ…あれはどこにあるんだ……」


博士の名前は、臼持(うすもち) 一太郎。この科学研究所に所属する優秀な科学者だ。彼は保管室で、ある装置を探していた。


「危険は承知だが…あれさえあれば…あ、あった!」


臼持博士が探していたのは、厳重な防犯装置で保管された装置だった。同じものが合計三つ保管されている。


「これだ…かつて僕のひいじいさんが開発した、使い切りの装置…これを手に入れるためだけに、一年以上も計画を練った。防犯装置を無効にするための装置も作ったんだ…絶対に成功させる…!」


カチャ…ピピピ…ピンポーン!


「よしっ!セキュリティ解除!さすが僕だ!」


臼持博士はセキュリティを解除し、厳重に保管されていた使い切りの装置を手に入れた。


「…しかし、この装置は使い切りとはいえ本当にすごいな…両手で持てる大きさだし、重量もそれほどない。開発記録も設計図も残されておらず、分解したり解明しようとすると自爆してしまう。この世にたった三つしか残っていない貴重な装置ではあるが…まあいい!ありがたく使わせてもらう!」


その装置は円形をしており、両端には持ち手のようなものがある。両端を引っ張ると、円形の装置はさらに広がる構造だ。


「よし、第一関門突破だ!さっさとここをずらかるか」


数時間後


場所は変わり、政府機関の情報調査局、調査課。調査課課長と若き女性調査員がいた。女性は顔を青ざめ、慌てて上司である課長に報告をしている。


「申し訳ありません!亀柳(かめやなぎ)局長!臼持一太郎博士が、セキュリティを破り、あの装置を奪って逃走しました!」


亀柳局長と呼ばれる中年の男性は、頭を抱えた。


宇佐美(うさみ)くん!博士の行方は掴んでいるのかね!」


宇佐美と呼ばれる若い女性は、亀柳局長に報告する。


「はい、他の調査員が臼持博士の行方を調べています。分かったことが二つあります。一つは、狂真性(きょうしんせい)光動力(こうどうりょく)が出現していること。もう一つはその影響で、現在、埼玉県井中野市(いなかのし)に時空間の歪みを検知したことです!」


亀柳局長は宇佐美の報告を聞くと、見る見るうちに顔が青ざめていった。


「なんだと!ではやはり、博士があの使い切り装置を奪ったのは…!」


「はい!おそらくこの二つが狙いかと!」


亀柳局長は、慌てた口調で宇佐美に指示を出した。


「宇佐美くん!急いで井中野市に行き、臼持博士をなんとしてでも止めるんだ!でないと、日本が…いや、世界がまた危険に陥る!」


「わかりました!」


「だが、準備は怠るなよ!なにせ事が事だけに、準備は万全にしていけ!」


「了解です!すでに万全に整えています!では、行ってまいります!」


宇佐美は準備したものを持ち、他の男性調査員と共に調査局専用の飛行機に乗り、埼玉県井中野市を目指して出発した。


飛行機を操縦している男性調査員が宇佐美に話しかけた。


「宇佐美さん、時空間の歪みが発生する場所に行くのは初めてです。本当にそんなものが存在するのですか?」


宇佐美が男性調査員の問いに答える。


「ええ、狂真性光動力が出現しているとなると、どこかで歪みが発生しやすいのです。しかも、臼持博士が持ち出したあの使い捨て装置…国が厳重に保管し、使用禁止にしたものを、まさか奪うなんて…いえ、あの博士ならやりかねないのでしょうか…」


調査局を飛び立ってから約三十分後、目的地である埼玉県井中野市にある時空の歪みを検知した場所に到着した。上空から現場を見て、宇佐美と調査員は驚く。


「宇佐美さん!あれは…!」


現場は手入れのされていない土地で、古い井戸のようなものがある。そこから青白い光が薄っすらと漏れていた。


「とにかく、降りて現場を調べましょう!」


宇佐美と男性調査員は、近くに飛行機を着陸させ、青白く光る古井戸を調べた。

その古井戸には、臼持博士が持ち出した円形の装置が、井戸の縁に設置されており、すでに作動していた。


「宇佐美さん…!かなりまずい状況ですね、これは!」


「…この空間の歪み…間違いない!」


円形装置が設置されている古井戸は、すでに水がなく、ただの深い穴だった。しかし、その穴の中の空間は、渦を巻くように歪んでいるのが目に見えた。


「急いで、亀柳局長に報告を!私は、臼持博士を追って、この空間の中に入ります!」


宇佐美の言葉に、男性調査員は慌てて言った。


「宇佐美さん!危険です!中はどこに繋がっているか分かりません!」


「ええ、ですから常に状況を、うさちゃん号を介して送れるようにしておきます!この装置が作動中は、物質であろうと電波であろうと、常に繋がっていますから!」


宇佐美は、身につけている大きなペンダントを男性調査員に見せた。


「それは!うさちゃん号の!…わかりました!常に電波を傍受しておきます!どうかお気をつけて!」


「ありがとう!では、行ってまいります!」

宇佐美は、装置が設置された古井戸の空間の中に入っていった。


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