夜の散歩を楽しむ吸血鬼のミラちゃんは餌付けされてる
「行ってきまーす!」
屋敷の中の両親に声を掛けてから、夜の散歩を楽しもうと星が瞬く夜空に飛び立つ。
私は吸血鬼のミラ。
と言っても散歩を楽しみつつ、美味しいものを食べさせてくれる彼の下に出かけているんだけどね。
私が彼と出会ったのは、マンションの高層階にある彼の部屋のベランダで獲物を物色していた時。
ベランダの柵に座り、眼下に見える街の中を歩く人族たちの中から美味しそうな奴を探していた。
部屋の中は真っ暗だったからまさか人がいるなんて思わないじゃない。
油断して街の中を眺めていたら突然ベランダのガラス戸が開けられた。
突然開けられたガラス戸にびっくりして私は柵から転がり落ちる。
下まで落ちなかったのは洗濯ロープに絡まって宙吊りになったから。
逃げようと藻掻けば藻掻く程ロープに絡まる。
部屋から出てきた男はそんな私を暫く眺めてから助けてくれた。
その男はモンスターハンターで私が属する魔族の天敵。
彼はベランダから不穏なモンスターの気配を感じて出て来たんだって。
なんで知ってるかって言うと、ロープを解き助けてくれたあと部屋の中に招かれ、ぶら下がっていた時にあっちこっちぶつけて傷ついた腕や脚の怪我の手当てしてくれた時に話してくれた。
「お前幾つだ?」
って聞かれたから、両手の指を広げて彼の前に突き出す。
「10歳か、見逃してやるからガキはサッサと帰れ」
「違ーう! 此れでも100歳よ」
「ケッ、お前ら長命な種族は10歳も100歳も変わらんだろ」
そうなんだよね、長命な種族は成体になるまで大体10年で1つ歳を取るから、10歳も100歳も同じなんだ。
まぁ成体になると殆ど歳を取らなくなるんだけどね。
見逃すって言われたから帰ろうとしたら私の鼻腔を甘い匂いが擽る。
鼻をピクピクさせて「此の甘い匂い何?」って聞いたら、彼が「俺の夜食の餡饅だ、1つくれてやるから食ったら帰れ」って言って、ビニール袋から甘い匂いが漂うものを1つ出して渡して来た。
食べたら凄ーく美味しいの、人族はこんな美味しいものを何時も食べてるんだなぁーって思い、それからはモンスターハンターの彼が迷惑がる事なんか知らん振りして入り浸っている。
美味しいものを食べさせてくれる対価はちゃんと払ってるよ。
魔族の中で吸血鬼と対立している狼族や悪魔族の情報を渡して、彼のモンスターハンターの仕事を助けているんだから。
さて今日は何を食べさせてくれるのかな? もう涎が止まらないよー。