新たな部隊と舞台 Ⅲ´
「リノスより返答あり」
「アーシアは上手くやれたようだな」
「リノスから緊急入電。繋ぎます」
『第42……隊 20……ノス 艦長のマーシャル・トー……佐だ!アル……ネ 援護感謝する!』
この距離の通信にしてはノイズが酷いな
「こちら 完全独立部隊アサナトス、アルキオネ艦長の天音アスト中佐です」
『天音……長!今回のエニ……小型……では無い!何かがいる!戦……始時のデータを……る!警戒され……!』
「リノスから第42艦隊 戦闘データを受信、解析します。」
何かがいる?
アストは再び艦長席から待機している1人のDDパイロットへ通信を繋ぐ。
「第42艦隊との連携が取れた。戦闘データを解析後、出撃してくれ」
『いえっさー』
これは少々厄介な奴がいるな……
一方 リリア・ソコロフの駆るDD、ヴィナミスは肩部腰部に接続されたBUSTERギアの光子銃砲、背部追加武装のコンテナミサイル、両手で保持した大口径の対ENIMライフルで臨機応変に弾幕を形成し、ガラマスの援護を行っていた。
パニックになっているのか、応戦せず逃げ惑うDDの背後には数十体の小型ENIMが追従している。
「相手に背を向けていては、逃げることしかできない」
4門の光子銃砲から露出したタービンが唸りをあげ、火花を散らし電流が走るとエネルギーが収束していく。
リリアは長蛇の列を成している小型ENIMの先頭からやや後方に敢えて照準を合わせ、トリガーを引く。
一斉に解放された光子が一瞬だけヴィナミスの周囲を白く照らし、高出力のレーザービームが無数の小型ENIMを貫き、爆発と共に消滅させた。
小型ENIMの先頭集団は、追い回していたDDを無視して脅威と感じたヴィナミスへ進路を変える。
個体ごとに形状が異なった口をガパァと開き、光子口砲を放とうとする。
「撃ち合いね」
狙撃モードへ切り替え、両手で保持している巨大なライフルを構える。
そして口を開いたENIMから素早く狙い撃った。
光子口砲のエネルギーを溜める余地を与える事無く、次々と口を開いた個体から狙撃していく。
あれだけ列を成していた無数の小型ENIMは両手で数えられる程度まで撃墜した。
「はい、おしまい――アーシア。そっちはどう?」
リリアは通信を取りながら対ENIMライフルのタクティカルリロードを行う。
『伝達は完了したよ!今 引き離し……応戦……特に問……ないよー!』
「――通信不良?」 『REAR ALERT!!』
「――っ!?いつの間に私の背後を!?」
突然ヴィナミスの警告音が鳴り響く、滅多に背後を取られることが無いリリア・ソコロフは驚きを隠せなかった。慌てるも、彼女の巧みな姿勢制御で素早く警告音の示す方向へ体勢を立て直す。
するとヴィナミスのメインカメラは背後の"それ"を捉えた。
彼方で瞬く星々が突然歪み、何も居ない筈の空間に忽然と現れた。
その姿はまるで、スカラベの顔に寝そべった烏賊の様な胴体と数十本の触手が生えた異形な宇宙生物だった。
「データ解析完了。これは……艦長!」
「これは……見えない敵?やはりそうか……。ソフィア、先行した2機に照合データを転送することが困難な状況だ一度帰還させたい、踏ん張ってもらえるか?」
「だいじょうぶ。まかせて」
『左舷リニアカタパルト音声認識接続。発進どうぞ』
「りょうかい。イヴサ アセンド――ソフィア・フォン・シェーンベルグ でます」
ヴィナミスやエクスィーとは明らかに形状の違う黒い重装甲に包まれた機体が、アルキオネから勢いよく発艦するのであった。




