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再会と新世代 Ⅸ

 Drive Doll(ドライヴドール)が爆発する際の蒼白い特有の光がコックピットモニターに小さく映し出されていた。


「あの爆発……」――間に合わなかった


 リリアはコックピット内の高性能スコープを下げ、爆発のあった付近の状況を確認する。


 片腕が無いけど応戦できているのが1機、厳しそうなのが2機。

 テレテにも既に十数体の小型が取り付いている……まず救うべきは、母艦。


 一切速度は落とさず、両手でしっかりと対ENIM(エニム)ライフルを保持し構えた。

 同時に、発射ラグのある光子銃砲フォトンブラスターの収束を開始する。


 一歩間違えばテレテにも当たる。だが何もしなくてもあの戦艦ふねは、いずれ沈む。

 

 リリアは小さく息を吸い、そしてゆっくり吐くと呼吸を止め――操縦桿のトリガーを引いた。


 テレテに張り付き、牙を突き立てているENIM(エニム)を次々に撃ち抜いていく。

 光子口砲フォトンカノンを撃ち込もうとしていたのだろう 口内を光らせ、牙をむき出しにしたまま脱力し、でろん と剥がれ落ちる。


 恐らく内部では訓練生たちの悲鳴で満ちている。そう思うと、いつもクールな彼女でも操縦に少し焦りが見え手先が震える。


 「あと少し……我慢して」と震える自分の手とテレテの訓練生たちを鼓舞した。


 流石のリリアでも狙撃の角度や、個体差による鱗の厚さなどに阻まれ、大半を仕留めきれず戦艦から剥がす事しかできない。


 その所為なのか、どうしても手応えがない。


 脱力して漂っていたENIM(エニム)は藻掻くように暴れると、その後は何事もなかったかように勢いよく口を広げ、牙を向きながら一目散にリリアのトワソンへ向かう。


 向かって来てくれる方が好都合


 トワソンの性能も相まって安定感の増した肩部の光子銃砲フォトンブラスターが大きく開けた口の中心を綺麗に貫く。



 …………え?

 


 リリアは撃ち抜いた敵の姿に既視感を感じる。



「まさか……」と光子銃砲フォトンブラスターで風穴の開いた個体と訓練生が交戦しているENIM(エニム)を見比べる。

 

 リリアは訓練生を救うことを意識していた所為で直ぐに気づけていなかった。


「見間違いじゃない……」


 片腕を失いながらも懸命に戦っている機体が相手をしているのは、先程自分が撃ち抜いた中の1体と酷似していた。


 両顎が1段階突き出し、牙を剝き出しにした深海魚のような顔、全身が逆鱗に包まれ、魚類とも爬虫類とも言えない、細長く刺々しい松ぼっくりの様な謎の胴体。


「またNamed(ネームド)か?!」


 Named(ネームド)との遭遇率の高さに運の悪さを感じながらも、それにもまして今回は他愛もなく、それらを複数体倒せてしまっているのが余計に不気味だ。


 片腕を失ったDDで訓練生がまともに戦えている。ただの小型ENIM(エニム)と同等であればNamed(ネームド)だろうが光子口砲フォトンカノンにさえ注意すれば、そこまで脅威ではないだろう。


 隻腕のトワソンは上手く小型ENIM(エニム)の攻撃を避け、訓練用の近接武装で何度も叩きつけたであろう箇所に上手く振り抜き、側面から真っ二つに叩き斬る。


 絶命したであろうNamed(ネームド)と思わしきENIM(エニム)は宇宙空間に漂う。すると特徴的な逆鱗がポロポロと剥がれ落ち始めた。


 その様子を見たリリアは自分が光子銃砲フォトンブラスターで撃ち抜いた個体へ視線を戻す。


 鱗が……無い


LEFT ALERT(左方警戒)!!』『RIGHT(右方) ALERT(警戒)!!』


 左右のALERT(警戒)音がほぼ同時に鳴り響く


――挟まれた?!


 直進していたリリアは進行方向へ脚部を投げ出し、無理やり機体の軌道を変える。


 そのまま進んでいたら取り囲まれていたであろう場所を見るとおびただしい数のENIM(エニム)が魚群のように群がっている。


 いつの間にこんな数のENIM(エニム)が?――いや、あの形状は……鱗!?


 移動している間に鱗は急成長を続け、元々のサイズが大きい鱗から先ほどのNamed(ネームド)と思われる個体へと姿を変えた。




「天音艦長!Named(ネームド)です!個体映像を送ります!」


『――確認した!解析でき次第データを送る。2人が間も無く到着するハズだ!耐えてくれ!』


 想定以上のENIM(エニム)の出現数は、間違いなくこいつの仕業だ


 

 そうこうしている間にテレテの方向で2つの蒼白い爆発が起こる。

 

 

 マズい、向こうでも数が増えたのか……だけどこのままでは訓練艦まで、到底辿り着けない――





『リリアさん!援護します!』というアーシアの通信音声が聞こえた後、ミサイルの雨が鱗の群れに降り注ぐ。そしてリリアの目の前に愛機のヴィナミスが駆けつけた。


『また ねーむど?』ソフィアの通信音声は聞こえるが、移動速度の遅いイヴサ アセンドはまだ目視では確認できない。


 だが今回も2人の声を聞き、一呼吸し落ち着くことができた。


「――まだ詳細は確認中よ。ソフィアはテレテの方へ先行して」


『らじゃー』






 2人が来てくれたおかげでこれ以上の被害は何とかなるかもしれない。だけどこのNamed(ネームド)がこのまま増え続けたら……



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