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再会と新世代 Ⅳ




――"Drive Doll(ドライヴドール) GFifP-OT055MC" 起動シークエンス開始――

 

 メインエンジン/コンタクト――

 

 AI D/起動――訓練モード及び。アイドリングモード 移行――

 

 メインモニター/オンライン――

 姿勢制御システム/オンライン――

 ウェポンシステム/レストリクションモード――


Training(トレーニング)ギア タイプC――コネクション正常


 登録戦艦情報なし―― 通信未接続


 グリーゼ 士官学校 第1模擬戦場 通信室との接続を申請――通信接続



「おーるくりあ」



『訓練機 トアソン6番機 起動を確認。リニアカタパルトへ固定します。ランダムな出撃位置へカタパルトを移動開始。模擬戦の制限時間は攻撃が確認されてから10分間です――――移動完了、リニアカタパルト音声認識接続。発進どうぞ』


「りょうかい。――ソフィア・フォン・シェーンベルグでます」


 



 ほぼ同時に、2機のトアソンが射出される。外のまぶしさに目が慣れると、視界には砂漠と、そこから突出した無数の岩場が広がっていた。

 

 衛星などでの戦闘を想定しているのか、模擬戦場には微弱な重力操作がされているため、機体は徐々に落下していく。


「よいしょ」


 ソフィアは突出している岩が盾になるように丁寧に着地する。


『ALERT《警戒》!!』 

「ん?……ヴィジランスブルーなのに、うってくるんだ?」


 着地して早々、大量の疑似ミサイルが適当な場所へばら撒かれていた。どうやらこちらの位置をあぶり出したいようだ。 


 攻撃されたことにより制限時間の10分タイマーが作動する。


 ソフィアはため息をして状況分析をした。

 

 ミサイル、つまり相手はB装備。ミサイルの発射された弾道方向――


Training(トレーニング)ギアのC装備、多機能コンテナを外し地面へ固定した。数ある武器の中から最も威力のあるライフルを取り出すとコンテナに固定し、立膝で構えた。


「このへんかな?」


 あいては、くんれんせい。こっちのばしょもヒントね


 おおよそ割り出した位置へ照準がズレない程度の間隔でトリガーを5回連続して引いた。射撃の反動でその周囲に砂埃が波打つ。




「ミサイルに反応しない……?」


 まぐれでも当たってくれればよかったけど……流石に実戦を知ってる人には、あんまり意味はないか。


 マイケル・ワッツは着地時にズレた眼鏡を掛け直し、打ち切った背中のミサイルコンテナのパージを行う。


 機体から切り離されたミサイルコンテナが岩陰から少しはみ出ると、突然撃ち抜かれ吹き飛ぶ。


 「――え?」


 着弾から遅れて『ALERT《警戒》!!』警報音が鳴り響くと、立て続けに目の前の岩が徐々に砕け散っていく。


 嘘だ!?あのミサイルだけで僕の位置を割り出されたの!?


 マイケルは銃撃音と警報音に驚愕し判断が鈍る。自分の隠れている位置へ5発も撃ち込まれたので完全に位置がバレていると思い「くそーっ!!」と、慌てて盾にならなくなった岩場からスラスターを吹かし飛びだす。


 

「てっき、かくにん」



 えーすぱいろっとじゃなかったな――とソフィアは思いつつ、微弱な重力下で無防備に浮く相手のトアソンを狙い撃った。


「――あれ?」完全に捉えていた筈の1発は脚を掠め、体勢を崩したただけだった。


 これ、ちょうしわるい?


 さっきも初弾だけ岩じゃない変な物に当たっていたことを思い出す。


 故障している可能性があるライフルを躊躇なく捨て、コンテナ内から小型小銃を取り出し、地面に固定していたコンテナを持ち上げシールドの代わりとして装備、カウンターが飛んでこないうちに滑走での移動を開始した。


 トアソンはイヴサ アセンドより うごきが かるくて、はやいなー




 直撃じゃなくて助かった……この距離で掠めるような正確な射撃――僕の得意な遠距離戦なら、と思っていたけど向こうも得意分野なのか……ん?見つけた!


 もうこちらの着地予定地点の方向へ移動してる!?なんて判断速度だ……


 僕のB装備で近接戦闘は無理だ……移動中のあの機体を――「止めさえすれば」


 空中で姿勢を整え、落下しつつ大型ライフルでソフィアの進行先を何度も狙撃する。


 

「けっこうじょうず」


 滑走しつつランダムな回避行動で止まることなく相手の行先まで移動を続け、小型小銃の射程圏内と判断したソフィアは何発か応戦する。





 ハンドガン?!ライフルは捨てたのか――それなら僕に分がある!


 マイケルは確実に当てるために操縦席の高性能スコープを下ろし、覗くと相手の詳細が確認できた。


「多機能コンテナ、C装備だったのか」


 高性能スコープを覗くパイロットに連動してトアソンは空中で最も安定する射撃姿勢をオートで制御する。落下が止まり空中でピタッと静止した。





 相手が狙撃体勢をとったと判断したソフィアは回避行動を止め、空中の相手を視界の右側に捉え続けながら直進する。




 ただ直進するだけのまとにトアソンの偏差射撃アシスト機能が遺憾なく発揮され、空中での狙撃体勢が整ったマイケルは「捉えた!」とトリガーを引く、そのタイミングも機能も完璧だった。


 しかし高性能スコープから突然、相手が消え、狙っていた機体の遥か先に着弾する。


「――ッ!?」 急いで覗いていた高性能スコープを退かす。機体の姿は無く、大きな土埃が立ち込めていた。


「あそこで減速したのか?!」




「すなおで わかりやすい」

 

 ソフィアのトアソンは腰を落とし、踵から両脚を突き立て、砂漠の地面を抉りながら減速し、再び武装コンテナを地面へ突き立て、壁にしながらソフィアは中から複数の武装を取り出す。

 

「りろーどして、これと、これ」 


 その間、ガゴン!ガゴン!とコンテナに相手の攻撃が何度も命中する。



「C装備の多機能コンテナがこんなに厄介だなんて」とマイケルは、接近されまいと立ち止まった相手を撃ち抜くことに必死だった。




()()()()かな」


 ソフィアはコンテナの陰から素早く飛び出すと同時に何かを相手に向かって投げた。

 

 球状の投擲物は自分と相手の丁度中央あたりで爆発すると、互いの姿が見えなくなる程度の煙幕が広がる。スモークグレネードだ。


 ソフィアは迷うことなく滑走状態から飛び上がり、小型小銃を保持した左腕を相手へ向けながら、フルスロットルで煙幕の奥を目指す。

 滑走では余裕のあったトワソンのメインスラスターが急激な加速に唸りを上げる。

 



 煙の何処から仕掛けてくるかわからない……お、落ち着け!


 マイケルの視線は相手を見つけようと右往左往する。銃口も左、下、右、とブレて定まらない。


 くっ、発射にタイムラグがあって嫌いだけど!


「まだこれがある!」


 肩部腰部にマウントされたBUSTER(バスター)ギアの光子銃砲(フォトンブラスター)を模した訓練用の実弾装備、4門を煙幕の四方へ向ける。

 

 発射まで擬似的にタービンが回転し始める。

 

 『|FRONT ALERT《前方警戒》!!』 「うわぁ!――くる!!」


 

 マイケルは考える間もなくトリガーを引き、煙幕の四隅に一斉発射するも、どこからも敵機は来ない。

 


 

 煙幕の中央からトアソンのメインカメラが輝き、小型小銃を撃ちながら高速で飛び出してくる。


 密度の高い煙が機体を撫でる様に線を引いていた。

 

 「うわぁぁぁぁぁあ!!」


 マイケルは叫びながらも、急いで真正面の敵に大型ライフルの銃口を向け、トリガーを引く。


 カシャン


 ――ッ!?弾切れ……?!


 

「りろーどしてなかったの ()()()()


 そのままの勢いで左手の小型小銃の銃口をマイケルが搭乗しているコックピットへ押し付け、右手に持っていたコンバットナイフを相手の右肩と胴体の隙間へ正確に突き刺した。


 スロットル全開で押されるマイケルのトアソンは轢かれたかの様にくの字になり、ソフィアの操作でそのまま押され続けると地面に叩きつけられ、背部を削られながら停止した。

 


 衝撃でパイロットが気絶しているのか、機体は微動だにしない。


 マイケルのトアソンはAI Dがパイロットの状態を感知し、模擬戦場の通信室へ状況を自動送信する。

 勝敗が決したと判断され、終了のサイレンが鳴り、同時にソフィアのコックピット内タイマーが停止した。


 

 Time Left ――3’34”49

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