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再会と新世代 Ⅲ

北暦290年 

ケプラー日時 12月10日 14:27

第2超巨大コロニー グリーゼ 宇宙連合軍 士官学校 第1模擬戦場 格納庫


 


 本日行われる模擬戦のために、3機の訓練用DDが格納庫にて起動シークエンスを開始していた。




――"Drive Doll(ドライヴドール) GFifP-OT055MC" 起動シークエンス開始――

 

 メインエンジン/コンタクト――

 

 AI D/起動――訓練モード感知。アイドリングモード 移行――

 

 メインモニター/オンライン――

 姿勢制御システム/オンライン――

 ウェポンシステム/レストリクションモード――


 登録戦艦情報なし―― 通信未接続




『へぇー!今の訓練機ってこんな感じなんだ!』


『私達の機体よりスペックが上……』


『こっくぴっとがひろい』


 彼女たちが驚くのは無理もない、イヴサ アセンドを除けばエクスィーもヴィナミスも彼女たちが俺の下へ配属される以前からある。言わばお下がり機体だ。

 

 3人とも士官学校は出ているが、リリアが5年前、アーシアは4年前、ソフィアに関しては2年前に出たばかりだが……1年、企業によっては半年で新型のDDを開発してしまう。



 特に訓練用の機体は各企業が実戦用に生産した最新機体のマイナーチェンジや型落ち機体などを再利用し、システムを訓練用に組み替えただけの物を使用するため、数十年前からロールアウトされているエクスィーやヴィナミスでは比較にならない程の性能差を感じるだろう。


 今搭乗してもらってる機体はオネアポリス社製のGFifP-OT055MC トアソンだ。


 G:グリーゼ士官学校採用

 Fif:第5世代ENIM(エニム)生体データ使用

 P:強化外骨格パワードスーツ

 

 O:オネアポリス社製

 T:訓練機

108:開発ナンバー

MC:Minor Change(修正型)


『オネアポリス社製……結構いい乗り心地』


『アスト艦長!アルキオネには新武装を積むんですし、私たちの機体もこれを期に新調しましょうよ!』


「あの3機は意外と愛着があるからなぁ」


『もぎせんで、かったらかってー』


 ガルシア司令官には色々提出するのが面倒だったから機体を増やさずにいたけど、一花司令になら意外と頼むだけで直ぐに調達してくれるかもしれない


「よし、わかった。だけどなお前たち、相手は訓練生だ。くれぐれも――」


『全力で叩き潰します』


 いつもクールなリリアは何処へ……?


 

 不意にサラ副艦長から連絡が入る。

『アスト艦長。士官学校側の準備が整いましたが、いかがでしょう?』


「3人とも、どうだ?」


『まだ細かい所まで見れてませんが、行けます』

『色々オートになってて楽ちんだね!』

『だいじょうぶ』


「よし、それでは全員降機してくれ、模擬戦前の挨拶へ向かう」


 さて、訓練生側はどんな奴らがいるのやら……




ケプラー日時 12月10日 14:59

グリーゼ 宇宙連合軍 士官学校 第1模擬戦場 待機室



 これから映像通信を行うディスプレイの前へ全員が映るように、パイロット3人を横一列に並ばせ待機していた。

 アストは腕時計で現在時刻を確認し「そろそろだな」と3人の前へ出ると、艦長帽を少し深めに被り直し、少し気合を入れた。


 15:00 丁度。 今回の模擬戦を企画したであろう教官とその後ろにはこちらと同じように横一列に並ぶ訓練生3名が映し出される。



『本日の模擬戦を了承していただきありがとうございます。教官のオスカー・テイラー准尉であります』


「こちらこそ、発足して間もない我々をお招きいただき、有難うございます。アルテミス級 5番艦 アルキオネ 艦長の天音アスト中佐です」


『天音中佐、ご紹介します。左から――』と丁寧に手で示しながら一人一人、名前をあげていく。


 マイケル・ワッツ

 

 エリオット・フェリックス・マッカートニー

 

 ヴェルル・デ=グロート


『この3名が、今回お相手させていただきます』


 アストが手で示された先の訓練生をしっかり見つめると、中央のエリオットはアストの顔を見て驚いた表情をし、目を背けた。


 正直、名前は丁寧に教えられても一発で覚えられない。俺から見れば――

 

 眼鏡をかけた知的な少年

 金髪の自称エースパイロット君

 銀髪の小柄な少女


 ――でしかない。

 

「了解した。訓練生諸君も周知の通り、宇宙連合軍 各艦隊はENIM(エニム)との戦いを日々強いられている。故に、こういった模擬戦はなかなか経験できることではないだろう。本日はお互い有意義な1日にしよう。よろしく頼む。」


『激励ありがとうございます。では、訓練用の警報を発令いたしますので、先鋒のパイロットからそれに対応した出撃準備をお願いいたします。それでは失礼致します。』


 ディスプレイが消え、アストは振り返る。


 そこにはそれぞれ時間に差はあれど数年間、戦場を共にした見慣れた顔が並び、彼女たちは真剣な表情でアストの顔を見上げている。


「模擬戦とはいえ、隊に所属している俺達にとってDD同士での戦闘経験は貴重だ。各員、気を引き――」

 


『ヴィジランスブルー発令。ヴィジランスブルー。パイロットは、搭乗機にて待機。繰り返す――』


 アストは出撃前の声掛けが警報に遮られたことに、「締まらないな……」と笑みを浮かべる。その言葉と表情は、真剣な表情の彼女たちを笑顔に変えた。



 そして最後に、先鋒へ「行ってこい!」と言葉で背中を押す。



「うん、いってくる」



 先鋒 ソフィア・フォン・シェーンベルグ 少尉は艦長の言葉を胸に、小さな背を伸ばし格納庫へ駆けた。

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